みどりの風

今回の会津地区訪問で最も撮りたかったのは「ばす」とC57 180なので、それらを軸に移動スケジュールを立てていた。喜多方~会津若松間で会津若松ゆき〔ばんえつ―〕、そこから会津鉄道「お座トロ」を撮って喜多方に向かい、ふたたび〔ばんえつ―〕(新潟ゆき) という構え。
旅には携行版の小型時刻表を持って行く。最近はケータイで全国の駅時刻表を調べられるから、貨物を狙うのでない限りこれで十分だ。その本文前方にある黄色い臨時列車のページを何の気なしにめくっていると、なんとこの日は只見線でトロッコ列車「風っこ」が走っているではないか! こういう見落としが起きてしまうのは致し方ない所でもあるが、知った以上は撮りたくなってきた。

只見線は会津若松から上越線の小出 (新潟県) までを結ぶローカル路線。福島県側は只見川の流れに沿い、緑に覆われた静かな水面を何度も渡る。乗るにも撮るにも見どころが多く、魅力あふれるローカル線のひとつだ。越後山脈を越える只見~大白川間の「六十里越」が最大の難所で、全通は1971年と比較的最近のことになる。
過疎地を走る鉄道の輸送量はきわめて少なく、同線も特定地方交通線の指定を受け廃止されてもおかしくなかった。しかし只見付近、とくに六十里越は現在も並行国道が冬季通行止めとなるほどの豪雪地帯。このため代替交通不備として指定から除外され、JR線として現在も生きながらえている。
時刻表とカーナビ地図を見比べ、会津柳津 (やないづ) 近くなら間に合いそうだと考え山道をショートカット。柳津は学生時代に訪れたことがあり、そのとき線路のある場所も憶えていた。が、実際に着いてみるとどうも近すぎたり、線路が高すぎたり……通過時刻が迫ってくる中で車を往復させてみたが、やはりぶっつけ本番では厳しいか。しかたなく次の目的地へと頭を切り換えたそのとき、右手に適度な距離感! すぐに道路わきに車を停め、会津柳津を出発する列車を狙った。

キハ48 547-キハ48 1541

キハ48 547-キハ48 1541

  • 只見線 会津坂本←会津柳津 2010-8
  • D700, AF Nikkor 50mm F1.4D, ISO200

正式名称「びゅうコースター風っこ」は、キハ40系気動車を改造したJR東日本唯一のトロッコ車両。国鉄~JR初期の団体向け「ジョイフルトレイン (JT)」は、12系客車とキハ58系列が多数を占めてきたが、JT自体の縮小と車両老朽化によってその勢力は衰え、かわって同系や485系電車を種車にし、個人で気軽に乗れるJT・ご当地列車が増えてきた。
前頭部こそキハ40系のイメージを保っているが、側面の窓はすべて取り払われ、大きな開口部が設けられた。さらに座席下部までガラス張りのシースルーという超ワイドビュー。「風っこ」の名にふさわしく、緑を基調にした明るい塗装が爽快感を演出する。種車が寒冷地用の500番台で空気ばね台車を履いており、トロッコとしては破格の乗り心地といえる。
仙台のすこし北にある小牛田(こごた) を所属基地とする「風っこ」だが、毎週のように各地のローカル路線に出向いている。その範囲は東北地域だけでなく信州の小海線、関東では烏山線や久留里線、青梅線でも運転実績がある。最近では上越国境の清水トンネルとループ線を機関車牽引で走った。時期も夏だけにとどまらず、冬場は開口部にガラスを入れストーブも焚けるという。それでもやはり、同車が一番似合うのは緑の中だろう。

柳津には福満虚空蔵尊 (ふくまん・こくぞうそん) と称される円蔵寺が、只見川のすぐ近くに建っている。民芸品の赤ベコは、この建立時に人々が難儀していた時にどこからともなくあらわれた赤い牛が材木の運搬を手伝い、無事完成させた……という伝承によるものだ。

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