雷鳥の詩

富山を起点に立山と宇奈月温泉へ伸びる富山地方鉄道は、戦時中に県下の私設鉄軌道・バス会社を合併して設立されたもので、現在もなお中小私鉄有数の路線規模を持つ。昨年末の富山都心線開業で一時期下回っていた営業キロ100kmを回復したが、これはいくつかの大手私鉄を凌ぎ、京成電鉄 (約102km) とほぼ同じ総延長。立山黒部アルペンルートや黒部のトロッコ電車 (黒部峡谷鉄道) へのアクセスとして重要な鉄道路線でもある。

市内電車の環状線をひとまわりして、富山駅近くで車を借りる。魚津へ向かう途中、地鉄線が撮れそうと目をつけた線路近くで幹線国道を降りた。水田区画を斜めに単線が貫き、予想通り好都合な場所だった。空き場所に停車して、それでは…と手元の携帯電話で最寄り駅の時刻表を開いたら、すぐに電車が通過しそう! あわてて車を飛び出して適当な場所で構えると、右からもと西武5000系の16010系が、なつかしい「レッドアロー」塗装のまま通過していった。
さらに調べると上り電車の通過も近いので、そのまま上り電車を待つ。やがて左から、こちらは生え抜きの14760系が接近してきた。

モハ14762 富山地方鉄道

モハ14762

  • 富山地方鉄道本線 西加積→中加積 2009-12
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

中小私鉄で5ケタの形式は珍しいが、上3ケタがモーターの馬力 (PS) を示すもので、立山・宇奈月付近に急勾配を抱える同社ならではの命名法といえる。すこしこじんまりした車体で2扉転換クロスシート、いかにも地方のローカル特急電車という雰囲気だ。専用というわけではなく、16010系も含め電車は特急・普通の区別なく運用されている。
標準塗装はアイボリーとグレーの塗り分け、窓下の赤いラインがアクセント。これはもちろん立山連峰に棲息する国の特別天然記念物、ライチョウをイメージしたものだ。京阪から10030系―もと3000系導入後、黄色と緑の新塗装に順次移行しつつある。

富山駅構内では交流電化の北陸本線と直流電化の地鉄本線が、交直デッドセクションを介してつながっている。かつて多くの私鉄では貨物輸送を行っており、貨車継走の必要性から国私鉄間の短絡・わたり線も珍しくなかったけれど、同駅では旅客列車の直通も行うのが特徴だった。国鉄475系電車急行〔立山〕、名鉄8000系気動車〔北アルプス〕が立山まで乗り入れていたこともある。
急行の廃止とともに一時途絶えていた直通は、民営化後キハ65「シュプール&リゾート」、のちに485系〔スーパー雷鳥・立山〕〔―宇奈月〕で再開。同系列いちばんの異端児といえる低床先頭車、クモハ485-200を含む3両編成での立山・宇奈月温泉乗り入れだった。その後681系電車に変わって、1999年まで乗り入れが行われていた。とくに宇奈月ゆきの走る地鉄本線は滑川~魚津間で北陸本線と並行し、JR本線走行のように見える乗り入れ列車……という不思議な光景もあった。いまでは想像に任せるしかない。

クハ681-201

クハ681-201

  • 北陸本線 春江→丸岡 2008-5
  • D200, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO100

〔サンダーバード〕681系のカラーリングは、ライトグレーの地に窓周りがダークグレーというもので、アクセント色の違いを除くと似たイメージにも見える。同系は1992年に先行製作車が〔雷鳥〕の臨時列車として足慣らし、1995年に〔スーパー雷鳥(サンダーバード)〕という長い列車名でデビューした。マルス泣かせのためか車両愛称が定着したのか、1997年に副称が正式名に昇格した。
「サンダーバード」という名前は「雷」と「鳥」をそれぞれ英語にあて、米先住民族の信仰するthunder birdを由来としたという。たしかに同車についた「THUNDERBIRD」のシンボルマークにある鳥は、ライチョウには見えない。ただ、ライチョウは雷の鳴るような悪天候時にも活動することからその名がついた…とも。

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