影落ち

秋の日はつるべ落とし…とはよく言ったもので、秋分をはさむ時期は日の入りが毎日1分半のペースで早まり、夕方以降の列車撮影は急速に難しくなってくる。いっぽう車両写真はというと、夏の間は伸び放題の雑草に隠れるとか (しかし今年は意外にも邪魔が少なかった)、陽炎の影響も受けやすいのでシーズンオフ、ここにきてようやく足回りがすっきりするころだ。日照の角度もあからさまに低くなり、床下機器のディテールを描写しやすくなる一方で、遠くから影が落ちてくることも考えなければならなくなる。

クモハ223-5

クモハ223-5


阪和電気鉄道として戦前に開業した歴史を持つ阪和線は沿線開発がすっかり済み、日根野あたりまで住宅が建てこんでなかなか抜ける場所がない。それでも鳳(おおとり)駅近くで撮れそうな場所があったので 紀州鉄道の帰りに寄ってみた。281系〔はるか〕や283系〔オーシャンアロー〕が颯爽と通過する一方で、ここはいまでも103系が現役バリバリの路線なのだ。
太陽は右後ろ方向にあった。その光線が画面には入っていない架線柱を通して、向こう側に位置する下り線の列車に影をつくる。上り線架線の影も大きく落ちているし、これではちょっと厳しいかな……本数は多いので天王寺ゆきに専念することにした。

クモハ223-3<

クモハ223-3

  • 阪和線 津久野ー鳳 2009-9
  • D700, AF-S VR-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G, ISO200

JR西日本「アーバンネットワーク」の中核に位置する223系電車は、もともと1994年に開港した関西空港への普通列車アクセス〔関空快速〕向けに設計された車両だった。221系の発展型で、ステンレス車体としては大きな窓、最近では採用例の少なくなった戸袋窓を設置(0番台)し、車内は明るい。貼り付けられた帯が網点でグラデーションを形成していることも見逃せないポイントだ。客室は空港に向かう旅客がスーツケースなどを持ち込むことを考慮して、1-2配置の横3列転換クロスシートになっているのが特徴で、それゆえ特に2500番台は着席定員が少ないという欠点も抱えている。
この車両にはもうひとつ特徴が「あった」。1996年にJR灘波 (OCAT=大阪シティエアターミナル) からの国際線旅客手荷物輸送を開始し、クモハ223-100番台の客室前1/3を仕切って業務用室を設けた。国鉄時代に荷物輸送が全廃されていた関係からか「クモハニ」とはならず、車体構造はそのままにドア窓と戸袋窓を板でふさいだだけで、実験目的だったように思われる。一回だけその車両に乗ったことがあるけれど、窓があっても覗けないというのは異様な雰囲気だった。
手荷物輸送はOCAT利用不振のためわずか2年で廃止され、当該部は一般客室に復帰。現在は〔関空快速〕のJR灘波乗り入れ自体が行われていないし、併結する和歌山発着〔紀州路快速〕のほうが利用率が高いのが現状だ。〔はるか〕も京都から同様のサービスを行っていたがこちらも廃止、外板に大きなJRマークのある荷物スペースだけが残されている。

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