色の記憶・音の記憶

正調・国鉄特急色を身にまとう電車は、もう残り少なくなった。特急として定期的に走るのは〔雷鳥〕―ついに683系への全面置き換えが決まった―、それに準じたもと485系の〔北近畿〕などだけ。それらと並んで奇跡的に生き残り、電車特急50年の歴史を今に伝えるボンネット形の先頭車、クハ489。かつて「碓氷のシェルパ」EF63と峠を越えた車両は、上野~金沢間(長岡経由)を走る夜行急行〔能登〕で最後の活躍を見せている。いちど派手な「白山色」になってからの国鉄色復活という意味でも、奇跡的な車両だ。
昨年年明け早々にこの車両が欲しくなったが、冬場に早朝着の〔能登〕なんて撮れるわけもなく、年末年始〔ふるさと雷鳥〕はちょっと無理……となれば団体臨時列車などを狙うしかない。「舞浜臨」として武蔵野線にやってくる機会も多いけれど、いろいろあって北陸地区で撮影することにした。大阪近辺の中学校が実施するスキー合宿の行き帰りには、京都所〔雷鳥〕編成と並んで金沢所の489系がよく使われている。

画像

クハ489-2

  • 北陸本線 丸岡←春江 2008-1
  • D200, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D
  • ISO100, 1/100, f5.6
  • RF2009-01-010

大きく鼻をつき出す前頭のボンネットは単なる飾りではなく、中には電動発電機(MG)と空気圧縮機(CP)が収められていた。(クハ151→181と初期のクハ481の場合)このクハ489ではMGは床下(左側台車の横)で、CPだけボンネット内に残る。
電車は架線から電気を取り入れている。なのに何故発電機が? これは室内の照明・空調をはじめとする交流電源を得るためのもので、モーターで発電機を回している。交直流電車の場合だと交流→直流→交流という段階を経ているわけで、保守や効率の面から、最近は静止形インバータ(SIV)という電子回路で交流を作る装置に代わりつつある。いっぽうCPでは、ブレーキ・ドアエンジン・空気ばねなどの圧縮空気を作っている。これらもふつうは電動車に置かれるが、長大編成単位でそういった機器を分散配置するのも国鉄特急ならではのスタイルだった。

そんな国鉄型の電車に乗ると、走行のモーター以外にも実にいろんな音が聞こえる。MGはブーンという低い連続音。CPは思い出したようにズンガラガラとけたたましく響く。もうひとつ、電動車に乗るとブォーという音が床下から響くが、これは抵抗器を冷却するブロワー。
最新鋭の電車ではMGも抵抗ブロワーもなく、CPにしてもずいぶん静かになった。ひきかえ鈍重な音たちもまた、国鉄色とともに次第に記憶の世界に埋もれていくように思われる。

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