国鉄からのおくりもの

国鉄が1986年度予算で新製した車両の多くは北海道・四国・九州地区に配置された。これは厳しい経営が予想され、また老朽・陳腐化した車両を多く抱える北海道・四国・九州地区新会社(現JR北海道・四国・九州)の経営基盤を確実にするためとされた。
具体的には、北海道へ気動車キハ183系500番台・キハ54、四国へ121系電車と気動車キハ185系・キハ54・キハ32、九州へキハ31(415系1500番台もその意味合いが大きい)。いずれもそれまでの「広域転配」を前提とした全国共通の設計から脱却して地域の実態に見合った姿になり、技術的に停滞しきっていた気動車には新機軸を投入して面目を一新した。

国鉄から三島会社への置き土産ともいえるこれらの車両群だが、やはり根は国鉄車両。実際には三社とも従来車との互換を捨ててより性能の高い車両を次々と投入したため、いまではどうも中途半端な存在になっている。スタイルも正調「国鉄形」とは違うから、ファンにもあまり省みられていない節がある。
余談だが、特急車には長年親しまれた前頭の特急マークもJNRマークもはじめからついておらず、私はこのイラストをはじめて見た時に、民営化が近いことを強く感じたものだった。

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キハ54 7

  • 予讃線 鳥ノ木→伊予横田 2008-9
  • D200, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D
  • ISO200, 1/160, f5.6

この中でキハ54形は四国と北海道向けに製造された車両だが、両者は21m級ステンレス車体でエンジン2基搭載という以外に共通項がほとんどない。

まずは四国向け基本番台(0番台)。路線バスのようなガラス張りの折戸が目につくが、それもそのはず、これはまさにバスのドアを流用したもの。自動ドアの開閉装置も路線バス用だし、ほかにも冷房機(機関直結式)、暖房(温風ヒーター)、換気装置など、自動車用汎用部品の積極的な採用が目につく。
助士席側乗務員扉は設置しているが、デッキも車掌台の仕切りもなく開放的だ。客室はロングシート(個別バケット式)で、見ての通りトイレ無し。種別表示窓は「ワンマン」サイン(これまたバス用)の掲出準備ができる構造になっていて、JR化後には運賃箱はじめワンマン運転用設備が設置された。要するに、車体が国鉄サイズの「大型レールバス」なのだ。キハ31・32はさらに小型で簡易な構造で、よりレールバスに近い。

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キハ54 505

  • 函館本線 深川→納内 2008-5
  • D200, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D
  • ISO200, 1/200, f5.6

一方の500番台は、見るからに酷寒地の北海道向けとわかる重装備だ。小型の窓は北海道標準の二重窓で、当然のことながら引戸の出入口・デッキと客室は仕切られ、トイレもついている。屋上、箱型の押込式通風器は鉄道車両ならではの装置だ。
セミクロスシートの座席は0番台と同じ個別バケットタイプ。ただ薄っぺらくて座り心地はあんまり良くなかった気が……。527~529の3両は急行仕様として、廃車した新幹線0系車両の転換クロスシートを備え、2000年まで急行〔礼文〕に使用された。他の一般形も、現在クロスシート部は転換クロスか向き固定のリクライニングシートに取り替えられている。
台車・変速機は0番台とも廃車発生品を使用したが、のちに乗り心地向上のためボルスタレス台車になった。また警笛をタイフォンからホイッスルに取りかえた車両があるが、これはエゾシカとの衝突事故が絶えないため予防として設置されたもので、釧網本線や花咲線(根室本線)では冬季にピーピー鳴らしながら原野を走る光景がよく見られる。

側面はこれほど違うのに、正面から見たときのデザイン相違(キハ31も含む)はとても少なく、500番台にスカートとスノープラウが目に付く程度だ。性能および制御は前述のとおり国鉄形車両に準じ、単行のほかキハ40系との併結もめずらしくない。

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