MとSと

「こんどの○番線の電車は、□時□分発、各駅停車△△ゆきです」
「こんどの○番線の列車は、□時□分発、普通△△ゆきです」

JR東日本、首都圏の駅で聞かれる自動放送の案内。前者は国電由来の運転区間で4ドアの通勤形車両が使われる路線、後者は近郊形とよばれる3ドアの車両が主に使われる路線でのものになる。E231・E233系が増殖して通勤路線と近郊路線の違いがほとんどなくなっている中で、この自動放送と電光掲示「電車/列車がきます」はいまだに旧来の区別が残されている。

画像

クハE217-43

  • 総武本線 佐倉←物井 2009-10
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

青とクリーム帯で走る横須賀線は「電車」と案内されるが、事実電車運転は1930年から運転され、近郊路線のはしりといえる。ロングシートとボックスシートを組み合わせた「セミクロスシート」を備える3扉の電車が「近郊形」とされ、国鉄の新性能電車では系列十位を"1"と規定した。先代の113系は近郊形電車の代表であり、E217系は近郊形でありながら初の4扉車として注目された。ほかの「電車」と異なり「普通」と呼ばれるのは、東京~横浜間で停まらない(ホームそのものがない)駅があるからだろう。
ステンレス車の多くは地色との対比から鋼製車より明るめの色にするのが通例となっている。E217系はめずらしく同色調の帯としていたが、機器更新の際に藍に近い青15号から明るめの青に変更されている(上は更新前、下は更新後) 旧帯はどういうわけか青のかすれた車両をよく見かけたものだが、新帯では見なくなった気がする。

画像

サロE217-34

  • 総武本線 佐倉←物井 2009-10
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

路線としての横須賀線は大船~久里浜間だが、系統としては大船から東海道線へ乗り入れている。以前は線路も東海道線と共用し、東京駅では湘南電車とならんで発着していたが、輸送力増強のため「SM分離」という線増事業が行われた。ここで"S"は横須賀線電車につく列車番号の記号、"M"は東海道線の記号のことをいう(一般的な電車列車の記号でもある)。
線増は東海道貨物線を活用して行われ、品川~鶴見は東海道本線の支線の一つ「品鶴線」を、鶴見から大船までは本線に腹付の貨物線を転用した。いっぽう貨物列車には鶴見から東戸塚付近まで横浜羽沢を経由するバイパス路線が建設されている。東京~品川間は地下線となり、錦糸町からおなじく地下で入ってきた総武本線と接続して相互直通しているが、貨物線の移転が遅れたため暫定で総武線が品川まで乗り入れていた(1976年~)。一時的によく見られた「品川」ゆきの表示は、常磐線の車両でふたたびおなじみの姿となっている。

1980年に「列車」から分離して「電車」だけが来るようになった横須賀線の各駅だが、2001年湘南新宿ラインの運転開始で状況が変わった。接続する東海道・宇都宮・高崎線にあわせてか、湘南新宿ラインは横須賀線直通もふくめ「列車」と案内されるため、横須賀線電車との共用区間では案内が混在している。
武蔵小杉などのホームに立つと、横須賀線に対し「電車」と呼ぶ箇所すべてが湘南新宿ラインで「列車」に置き換わっていて、まじめに聞くほどおかしく思えてくるところだ。それで車内に入れば、湘南新宿ラインも「電車」であったりするのだが。湘南新宿ラインの定期列車に電車以外の車両があてられたことは、これまで一度もないはずだ。

画像

クハE233-3522

  • 東北本線 蓮田←東大宮 2014-6
  • D7100, AF-S NIKKOR 70-200mm F4G ED VR, ISO160

「列車」扱いのまま残る東海道線も2015年改正で大きく変わった。上野東京ラインを通過する列車の記号は、特急列車と常磐線乗り入れが"M"になるほかは"E"である。Eはそれまで湘南新宿ラインの北行が使っていた記号で、南行は"Y"、上下を示す1の位はどちらも"0"という特殊な付番になっていた。今改正で湘南新宿ラインは両方向"Y"になり、南行きを奇数とするようになっている。
宇都宮・高崎線方面からは上野折り返し(地上ホーム)が若干残っているものの、東海道線からの普通列車はほとんどが上野へ直通するようになったため、"東京"ゆきと"M"の記号を目にする機会はかなり減っている。私自身も東京縦断するときのルートは上野東京ラインにシフト、それまで北方面から帰るのに利用していた湘南新宿ラインをまったく使わなくなってしまった。

この記事へのコメント

teru
2015年07月09日 07:24
こんにちは、充実の記事、楽しく拝見しました(^_^)。
電車と列車の使い分け、しっかり残っているんですね(^_^)。

E217系もしっかりベテランになってきましたが、まだまだ置き換えの話はあまり聞こえてきませんね。
2015年07月18日 23:09
teruさん こんばんは。

いまだに細かい部分で列車と電車の使い分けは残っていると言いましょうか、たとえば中央快速線の駅だと特快なら「電車が通過します」なのに、「列車が通過します」で来るのは〔あずさ〕であるとか、わかる人にはわかる面白さかもしれません。
JR東日本で近郊形をはっきり名乗る最後の系列になったE217系、通勤形の209系500番台とほぼ同位置にいる車両ですが、自動放送対応をすませ機器更新も済みましたから、しばらくはスカ線の伝統を受け継ぐのでしょう。ことによると房総ローカルの209系より長く残ったりするかも…。