超快速! スノーラビット

「特急列車と行き違いいたします……」
モーター音も高らかに単線トンネルの闇をひた走った直江津ゆき普通電車がスピードを落とし、複線になったところで脇にそれ停止した。北越急行ほくほく線の薬師峠信号場。前方遠くには外の明かりが漏れている。
後方で緑を灯す信号機にもうひとつ緑が加わると、前方には三つのヘッドライト。と、車内の気圧が一気に高まった。強烈な耳ツンと不気味な風切り音がピークに達した次の瞬間、窓の外を681系が高速で駆け抜けていった。
こうした普通電車と〔はくたか〕の離合が、ほくほく線では毎日頻繁に行われている。

HK100-6ーHK100-4 北越急行

HK100-6ーHK100-4

  • 北越急行 くびき→犀潟 2014-11
  • D810, AF-S NIKKOR 70-200mm F4G ED VR, ISO400

3月13日、北陸新幹線の金沢開業により、1997年以来東京~北陸のメインルートに君臨してきた在来線最速の特急〔はくたか〕は、その名前を新幹線に託して使命を終える。160km/h運転を支えるGG現示(高速進行) 信号や縦6灯の中継信号、135km/hという速度制限標識(制限!) も、まもなく見納めになるだろう。
特急が消えた後のほくほく線新ダイヤは、普通列車がスピードアップされる。もともと走りの良い車両で交換待ちが減れば、所要時間が全体的に短くなるのは当然のこと。そして越後湯沢~直江津間に1往復設定されるのが、「超快速」列車だ。従来も線内の快速列車は存在したが、途中停車を十日町のみと特急なみに絞った列車として、さらに上位の区分が与えられた。鉄道としては最初のはずだが、路線バスでは熊本と天草地区を結ぶ九州産交バスの速達便に、この種別が採用されている (1998年に廃止され2010年に復活)。
列車名は公募で〔スノーラビット〕に決まった。北越急行所有の681・683系につけられた愛称「SRE: スノーラビットエクスプレス」が受け継がれる。

JR西日本車と共通仕様の特急車に対し、普通列車に使用されるHK100形は同線オリジナル。両運転台車を基本的に2両連結して運転している。特急の運行を邪魔しないことと、単線トンネル内の空気抵抗に打ち勝つ必然性から、380kW/両の高出力で加減速度3.0km/h/s・最高速110km/hという、地方鉄道としては異例の高性能車だ。トンネル離合などでの安全面から窓は全固定である。
一般車はロング+ボックスのセミクロスシートで、イベント対応などに使用される4両 (8, 9, 101, 102) は転換クロスシート車両「ゆめぞら」。天井投影式のプロジェクターを装備しており、長大トンネルの中で映像と音楽を流すイベントが行われる。それ以外の普通列車にもイベントなしで使用されるので乗り得といえる。「ゆめぞら」のカラーリングはご覧の通り特急車に準じたもので、設備的にも超快速にこれら4両が充当されるのだろう。

HK100-102-HK100-101 北越急行

HK100-102-HK100-101

  • 北越急行 犀潟→くびき 2014-11
  • D810, AF-S NIKKOR 70-200mm F4G ED VR, ISO400

人家もまばらな山の中にあるモグラ駅、美佐島(みさしま)。同駅の特急通過は動画サイトなどでもよく知られるところになったが、自動放送に「絶対にホームに出ないでください」と言われるまでもなく、待合室の先は分厚い扉で完全に封鎖されていて、普通電車が到着し運転士がリモコン操作をしないとホームに出ることができない。しかもそのとき外へ通じる階段との扉はロックされるから、電車到着までに待合室に入っていないと乗り遅れるので注意が必要だ。特急通過はなくなるけれど、快速と超快速は残るので、この厳重な設備は引き続き活用される。

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