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<<   作成日時 : 2014/10/14 00:00   >>

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10月14日は鉄道の日。「陸蒸気」の汽笛からはじまった日本の鉄道はやがて電車と気動車が主流となり、都市近郊のみならず長距離輸送を動力分散型でまかなう世界的にも珍しい国である。その頂点に立つ新幹線は、10月1日に開業50周年を迎えた。いっぽうで蒸気機関車の復活運転も各地で行われ人気を博しているが、近年で牽引すべき客車がほとんどなくなっているという課題がある。
釜石線でこの春から復活運行がはじまったC58 239〔SL銀河〕では、牽引される車両を気動車つまり動力車とした。これは急勾配区間で力行することで補機の代わりとするものだ。連結器の互換性があることから客車列車のうしろに気動車をぶら下げて回送するといったことは国鉄時代にはよく行われたし、特殊な装置で電車と併結して動力協調運転(総括制御)する例もあった。しかし蒸機と気動車の動力協調ははじめてのケースといえる。

〔SL銀河〕の名は、宮沢賢治の代表作として知られる「銀河鉄道の夜」から取ったものであり、当の釜石線の愛称「銀河ドリームライン釜石線」も同じ由来だ。花巻〜釜石の各駅および山田線の釜石〜浪板海岸間(休止中) にはエスペラントの副名称がつけられているが、今般のSL復活に合わせて釜石線の駅名票が新デザインに切り替えられた。
列車は土曜日に往路(花巻→釜石)を運転、日曜あるいは月祝日に復路が運転される。いずれも昼間の走行であるから、ポスターに載っているような満天の銀河下を走る写真 (釜石線の代表的な撮影スポットでもある宮守橋梁)にはならないけれど、11月末の今季運転終了後にナイトクルーズ企画が行われる。

「旅客車」はJR北海道から購入した「PDC」ことキハ141・143系である。「レッドトレイン」こと50系客車グループのうち、北海道向けに製造された51形(オハフ51)にディーゼルエンジンなど動力機器を装備して気動車化したもので、もともとは客車なのだった。郡山総合車両センターで改造、2014年1月に落成しC58とおなじく盛岡車両センターへ配属された。

銀河鉄道の夜


漁に出たきり戻らない父と病床に臥す母のため、学校に通いながら働きに出て生計をつなぐジョバンニは、クラスメートと遊ぶ暇もなく浮いた存在であった。(父は密漁で捕まっているのだと)からかう周囲の中、カムパネルラだけはさびしい笑いを浮かべるのだった。
銀河についての授業があったその夜は「ケンタウル祭」銀河のお祭りで、子供たちが烏瓜(からすうり)の灯りを川に流しに行く。そこでも仲間に加われず、丘の上でジョバンニはひとり星空を見上げ銀河のかなたに思いを馳せていた。そのとき突然「銀河ステーション」という声とともに目の前が真っ白になって……


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キハ143-701


列車は深い藍色から水色へと移り変わる8段のグラデーションで夜空を表現し、金色で東北のゆたかな自然と星空を表現する。作中カムパネルラが持っていた銀河鉄道の地図もモデルであろう。
星座イラストは打ち抜き型を車体に貼り付けてあり、陽光を受けて輝きを見せる。4つの星座は「銀河鉄道の夜」ストーリーの中核となり、銀河(天の川) 周辺に見える星座である。釜石方4号車は はくちょう座。夏の夜空高くに見ることができる、代表的な夏の星だ。

いつの間にか銀河鉄道に乗っていたジョバンニは、目の前にカムパネルラが座っていることに気づく。彼は同級生のザネリはじめ他のみんなは走ったけれど追いつかなかったと語った。列車は銀河に沿って、北十字(はくちょう座異名)から南十字星へまっすぐに走っていく。
白鳥の停車場で二人はプリオシン海岸へ行き、発掘作業を見学する。戻った二人は不思議な鳥捕りの人と相席になる。売り物を分けてもらったがそれはお菓子としか思えなかった。


キハ143-701はもとキハ143-155←オハフ51 27。編成内で唯一ボルスタレス空気ばね台車を履いており、450ps出力機関から1台車を2軸駆動している。窓がなく星座の描かれた部分は、宮沢賢治ギャラリーとSLギャラリー、ショップおよび車椅子対応トイレとなっている。
SL牽引中PDCの運転台ではブレーキハンドルが抜かれ、上り勾配で必要に応じPDC側のノッチを投入する。逆に連続下り勾配では機関車のブレーキを使いすぎると動輪のタイヤが緩むおそれがあるので、機関車のブレーキは緩めてPDCのブレーキだけで降りてゆくという、従来の客車と同じ方式が取られている。

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キサハ144-701


3号車の星座は わし座。α星アルタイルは はくちょう座のデネブ、こと座のベガを結んで「夏の大三角」を形成し、またこと座ベガとアルタイルはおなじみ七夕の星である。
客車の動力車改造は国鉄時代にもキハ40(先代)という旧型客車改造車(!)があったが、重量のかさむ車体に非力なエンジンで成功しなかった。それよりは軽量な50系の車体と出力の増えたエンジンによって、実用的な車両となった。
JR西日本でも同グループのオハ50を種車にしたキハ33形が登場したが、運転台取付のためドア移設などを要し、改造は2両にとどまっている。北海道のPDCは種車をすべてオハフ51形とした。オハフ50・51は両端に車掌室とトイレを持っており (逆にオハ50・51はどちらもない)、これを運転室に充てることで改造の手間を省いた。運転台のないキサハも同じくオハフを種車としている。

列車では検札が行われた。切符を買った覚えのないジョバンニが何でもいいからとポケットから出した一枚の紙が、幻想四次元を自由に旅行できる切符であることが判明する。鷲の停車場を出ると鳥捕りの人はいつの間にか消えて、かわりに幼い姉弟と家庭教師が乗ってきた。
3人が乗った客船が、突然氷山に衝突して沈没したのだという。船体は大きく損壊し、限られた救命艇には子供たちしか乗せられない。混乱の中、家庭教師も一度は子供を助けようと救命艇に向かうが、そこで目にした運命の別離を前に、いっしょに主のみもとへ向かうのが本当の幸せではないかと感じ、子供たちの手を取り海中へ沈むことを決心した。


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キサハ144-702


2号車の星座は いて座。いて座そのものは物語に直接登場していないが、「銀河の祭り」がいて座のモデルであるケンタウロスの祭で、そのほかごく初期の稿には「鉄砲の上がる方角」として いて座の名が出てくる。
種車はキサハ144-101←キサハ144-151←オハフ51 33で3度の改番を経た車両である。当初キサハでは唯一トイレを残した151として改造され、のちに撤去された。

妖しく光るさそり座の赤い火が車窓に見え、少女はさそり座の話をはじめる。砂漠の中、毒針で獲物を捕るさそりは逆に敵から襲われ逃げる途中で井戸に落ちてしまう。そのとき自分の業の深さにはじめて気づき、みなのほんとうの幸せになるならと神にその身を差し出すと誓った。
南十字星(みなみじゅうじ座)、天上が近づいてきた。降りたくないという弟に、神のみもとに行くのですからと諭す家庭教師。ジョバンニたちはほんとうのたったひとりの神さま、ほんとうのさいわいとは何かを語り合った。


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キハ142-701


花巻方1号車は さそり座。日本では夏の夜空の地平近くに見える、赤い星(アンタレス)を持つ星座である。窓のない部分は、月と星のミュージアム およびプラネタリウムが設置されている。
こちらの動力は320ps出力のエンジン2基で、各台車の1軸ずつを駆動する。エンジンはJR東日本仕様に交換された。気筒ブロックが水色に塗られているのが特徴である。学園都市線電化後のPDCは、キハ143形のみが室蘭本線へ転属した以外は多数が海外譲渡・解体となっており、キハ141形は廃形式となった。キサハ144もいちど廃形式となり、〔SL銀河〕の2両が登録されて形式復活した。

PDCは勾配区間での動力補助のほかにも役目があって、それは東北本線・盛岡〜花巻間の回送でC58「を」牽引することである。盛岡から釜石線方向は花巻でのスイッチバックとなり、転車台は盛岡と釜石のみ整備されているため、同区間では編成後部に逆向きC58を連結して回送される。SL逆向き輸送は速度制限があり、花巻空港駅で長時間停車するので、一日片道運転の列車だが回送も含めれば回数は稼げる。

南十字に到着した列車から、子供たちを含むほとんどの乗客が降りて行った。「ほんとうのしあわせ」を探しに行こうと誓った二人を乗せた列車は、石炭袋と呼ばれる暗黒星雲へ進路を取る。
そこにお母さんがいると話すカムパネルラ。しかしジョバンニには見えず、なんとも言えずさびしい気がした。もう一度カムパネルラにいっしょに行こうと言ったジョバンニが振り返ると……


撮影: 東北本線 石鳥谷←花巻空港 2014-3, D7100, AF-S NIKKOR 70-200mm F4G ED VR, ISO200
出典: ちくま文庫「宮沢賢治全集 7」ISBN4-480-02008-X, 1985, 筑摩書房

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