セブン・セブン・77

毎度毎度な内容の当ブログも6周年を通過して今回から7年目です。で、いま「7」を代表する鉄道車両といえばN700AにE7/W7系、そして……



九州各地に走る「D&S (デザイン&ストーリー) 列車」の頂点に立つ超豪華列車として、2013年10月にデビューしたJR九州「ななつ星in九州」。九州の七県と七つの魅力をめぐる日本初の「本格的クルーズトレイン」は世間の注目を集め、非常に高額なツアー金額にもかかわらず申込みが殺到、高倍率抽選のプラチナチケットになっている。
その旅の魅力はあちこちで紹介されている――それでもほんの一部なのだろう――けれど、ここでは「車両」の趣味的見地から「ななつ星」を見ることにする。特徴としてまず挙がるのは、ひさびさの新造客車であることと、約半世紀ぶりに「イ」が復活したことだ。「イ」はイロハのイ、旧一等・一等寝台車である。旧一等車は1960年に廃止、一等寝台「イネ」は一足先の1955年に二等寝台へ吸収されていた。
国内鉄道の旅客車は創生期から戦後まで三等級制だったが、国鉄では1960年の等級改正で旧一等を廃止して、旧二・三等がそれぞれ1・2等に繰り上げられた。なので新1等がイ、2等はロに改称すべきところ、すでに多数の車両が在籍していたことから形式変更は見送られ、1970年のモノクラス化でも変更されていない。新規に数字だけの形式を起こした新幹線(0系)で10位の1を1等車、2~3を2等車としたのが唯一の反映といえる。なお新幹線グリーン車よりさらに上級のシートとサービスを提供し「新幹線のファーストクラス」とも称されるグランクラスも、制度上はグリーン車である。
「イ」は空欄のまま民営化を迎え、その後登場した(当時で言う)豪華列車の〔カシオペア〕や〔トワイライト〕、「夢空間」のスイートもロネとして登録されているが、今回「ななつ星」の各部屋はそれらよりさらに上質な個室として「イネ」を復活させるに至ったわけだ。

DF200-7000

DF200-7000

  • 鹿児島本線 原田←天拝山 2013-10
  • D7100, AF Nikkor 50mm F1.4D, ISO160

車両の塗装はJR東日本のE655系「和(なごみ)」にも似た深い赤紫で、見る角度や光線状態により表情を変える。ロゴやエンブレムにカメラを向けると鏡のように撮影者側が写り込むほどだ。塗装保護と目隠しを兼ねた黒フィルムラップで本線に姿を現し、報道公開まで黒装束で試運転を重ねたことも話題になった。エンブレムや装飾の星、腰の金帯は貼り付けによる立体的表現である。
客車と同時に登場した専用牽引機は、途中の非電化区間を考慮してディーゼル機関車のDF200-7000となった。DE10の重連かプッシュプルだろうと思っていたので新型機関車投入は意外だったが、大柄な箱形車体が屋根の深い客車を牽引する姿は存在感抜群。なおツアーの途中で折り返し小運転を行う場合は、編成反対側に黒色のDE10が連結される。
同機は北海道で活躍中の「RED BEAR」DF200を旅客牽引向けにリファインしたもので、JR貨物で同形の増備は終了しているのでこれがDF200のラストナンバーになろうか。寸法は同じだが、塗装や装飾で受ける印象はガラリと変わるものだ。

マイ77-7001

マイ77-7001

  • 鹿児島本線 原田←天拝山 2013-10
  • D7100, AF Nikkor 50mm F1.4D, ISO160

7両の77形客車は、車号が機関車の7000から続く7001~7007に振られている。国鉄時代の70番系列は戦災復旧車と呼ばれる簡素な造りの車両を指していたが、JR化後もかろうじて残っていた高崎の救援車スエ78が2007年に廃車となってからは空き番となり、今回正反対の車両に抜擢(?) された。
1号車マイ77-7001はラウンジカー「ブルームーン」となっており、昼はラウンジ、夜はバーとして乗客の語らいの場を提供する。床下にはディーゼル発電エンジンを搭載し、自重42.5以上47.5t未満 (換算4.5両) の「マ」を形式名に冠している。かつての一等車も「マ」級ぞろいで、乗り心地を最重視して三軸ボギー台車を履くのが通例だった (形式番号下一ケタが8または9、1953年までは7も)。815・817系由来のアルミ合金車体に787系の台車を履く最新鋭客車は、しかし調度品と発電機でずしり重くなっている。

マシフ77-7002

マシフ77-7002

  • 長崎本線 肥前山口→肥前白石 2013-10
  • D7100, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO160

つづく2号車マシフ77はダイニングカー「ジュピター」、2013年中に2両も増備された食堂車のうち1両で、もう1両はTOHOKU EMOTIONのキクシ110。フは緩急車でブレーキ弁を備えるが、この列車には車掌室がない (簡易車掌台のみ)。こちらも発電エンジンを備え、2両で編成全体の電源をまかなうことになる。
3~6号車が1両3室の「スイート」で、レイアウトはブルトレ客車でおなじみの側廊下式であるが、両側の車窓を眺められるようにと1両おきに廊下を海側・山側と振り分けているのが特徴 (写真のマイネは個室側, マイネフは通路側)。ちなみに3泊4日コースでは経路中の折り返しで博多の出発と到着で編成が逆転しており、1泊2日コースの運転後小倉経由で所属基地の大分車両センターに回送して向きを戻している。

マイネ77-7006

マイネ77-7006

  • 鹿児島本線 原田←天拝山 2013-10
  • D7100, AF Nikkor 50mm F1.4D, ISO160

これらの車両も重量記号「マ」なわけだが、主要諸元表から読み取ると3~6号車に容量2355~2830L(リットル), 7号車は3020Lの清水タンクを装備する(同容量の汚水タンクも持つ)ことも関係していそうだ。これだけ貯めるのは各室に備わるシャワーや洗面所等へ供給するためだが、つまり水だけで3tくらい車重が増えているわけである。いっぽう1・2号車の清水タンクは容量360Lと655Lで、国鉄サシ481のタンク1000L×4(清水・汚水)から見ると圧倒的に少ないようだけれど、多くの客を回転させるエル特急の食堂車とは水の使い方も違っていて不思議ではない。
そして7号車マイネフ77は「デラックススイート」で、1両2部屋というのはこれまでで最も少ない。ただしエキストラベッド使用を加味して寝台数は3×2の6となる。車端の部屋は1号車と同じガラスを使った展望部屋で、流れゆく景色を独占できるとあって列車内でも最高の競争率が続いている。

マイネフ77-7007

マイネフ77-7007

  • 久大本線 田主丸←筑後吉井 2013-10
  • D7100, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO160

週末に運転される1泊2日コースを、外から追いかけてみた。まず原田(はるだ) は間違いの無いところと出足を期待し、それは一定の成果を収めることになったけれど、その後がどうも続かない。とくに1・2・7号車の両側面を狙おうとしたものの、なかなか思い通りに行かないから、編成写真とか風景写真など考えていたところでも、結局は車両主体に振ることになってしまった。
コースも最終盤となる久大本線をゆく列車を大分道経由で追い、筑後平野の水田脇に降り立つ。ここで撮ったらもう追いつけない、ラストチャンスである。緊張のなかDF200を先頭に7000~7007と編成美を整えた列車は、傾いた日差しを赤紫の車体に写して走り去っていった。


「ななつ星」は定期検査のため1日から14日まで運休中、15日から運行再開予定。

この記事へのコメント

teru
2014年07月25日 08:53
こんにちは、車両面からみた圧巻の記事拝見しました(^_^)。
改めてイやマ、そして7に水・・・安全運行、そして営業的にも成功するといいですね(^_^)そしていつかは関東にも(⌒-⌒; 。
2014年07月30日 23:30
teruさん こんばんは。

知る人ぞ知る「或る列車」の現代版といえる「ななつ星」、いまだ高い人気を集めているようですね。残念ながら関東には来られそうにない、というより九州にあってこその列車でもありますが、これに刺激を受けてかJR東と西も相次ぎクルーズトレインを発表、イメージも具体化してきました。どれもそう簡単に乗れる列車じゃない気がしますが(苦笑)、せめてその姿はきちんととらえてみたいものであります。

……と、その「或る列車」もJR九州が復元(?)なんて話も出てきているようですが、はてさてどんな形になるのでしょうか。