スワローとタキシード

縮小傾向が止まらない首都圏のJR近距離特急にあって比較的高い需要を残しているのが、朝夕の「通勤ライナー」的な特急列車だ。特急列車の回送を活用し、上野→大宮で座席整理券方式(定員制) で運転開始した〔ホームライナー〕を正式に特急へ戻したもので、首都圏に限らず各地のライナーに共通の流れといえる。特急格上げイコール値上げと受け取れそうだけれど、JR東日本のライナー券は\510、自由席特急料金(B特急料金) 50kmまで\510だから、ライナーで走っていた区間に限れば値段は変わらない。ただし自由席だから着席の保証はなくなっている。

高崎・両毛線の〔あかぎ〕は1982年の特急化以来、エル特急→新特急→特急と変わりつつも朝夕運転の通勤特急だった。平日は普通車全車自由席だったが、着席需要にこたえて2013年11月から普通車指定席が導入された。2014年3月改正ではこれを拡充、区間運転の〔ホームライナー鴻巣〕を吸収し全車指定席の特急〔スワローあかぎ〕に統一した。宇都宮線(東北本線) にも〔ホームライナー古河〕が運転されていたがこちらも全廃され、元祖〔ホームライナー〕系統はその歴史を終えた。
同列車の特徴は新着席サービスとして導入された「スワローサービス」である。同列車専用の「スワローあかぎ料金券」が停車駅などで発売され、携帯電話やスマートフォンから予約・購入できる「えきねっとチケットレスサービス」も実施 (〔あかぎ〕指定席導入時に開始された)。料金券は座席無指定のまま空席に着席することも可能となっている。土休日はひきつづき〔あかぎ〕の名前で運転し (本数は少ない)、指定席の販売も他列車と同等である。列車名のスワローは「座ろう」と、かつての国鉄のシンボル・ツバメ(swallow)に掛けたものだ。

クハ651-1003

クハ651-1003

  • 上越線 渋川←八木原 2014-4
  • D7100, AF-S NIKKOR 70-200mm F4G ED VR, ISO160

〔(スワロー)あかぎ〕と吾妻線の特急〔草津〕は、同時に車両も185系から651系に置き換えられている (新宿発着1往復のみ185系)。常磐線で1989年にデビューした651系は前改正でE657系に置き換えられて定期運用を失い、処遇が注目されていた (現在E657系が指定席発売確認システム改造を行っているため、一時的に〔フレッシュひたち〕1往復に復帰している)。大宮総合セ東大宮センターに転属した車両は直流専用車となり、窓下にオレンジの帯を追加し1000番台の車号が与えられた。185系も登場時の転換クロスシートは交換されていて「特急形」の面目は保たれていたが、シートピッチの拡大と固定窓による静粛度向上、グリーン車の横3列化という点でグレードアップということにななる。
交直流電車である651系は、近郊形211系電車に交流機器を追加したような構成である。これは転用改造でもまったく変えられておらず、モハ650屋上の高圧回路も配線を外しただけでそのまま残っている。パンタグラフはシングルアームになった。

モハ650-1103

モハ650-1103

  • 上越線 渋川←八木原 2014-4
  • D7100, AF-S NIKKOR 70-200mm F4G ED VR, ISO160

高崎線の普通列車は昼間でも結構混んでいるから、グリーン券や特急料金はより確実な着席の手段としての価値はある (湘南新宿ラインではグリーン車の満席もめずらしくないが)。熊谷付近で撮影したある日、赤レンガ駅舎の深谷まで足を延ばしてから〔草津2号〕指定席に乗ってみた。
ひさびさの651系であるが、デッキに足を踏み入れたときなんとも微妙な雰囲気を感じた。ややくたびれた感のある内装パネルに、無造作に貼られたプレートにステッカー、そこに書かれる丸ゴシック体の文字、それは国鉄時代の車両によく見られたものだった。「タキシードボディのすごいヤツ」というキャッチフレーズで鮮烈にデビューした同系が、いま振り返るとこんなだったのかと。485系や185系で感じたそこはかとない懐かしさを、平成生まれの車両に感じるというのも時代の流れなのだろうか。ともあれ、空いている指定席で背もたれを倒してくつろげるのは優等列車ならでは。買っておいた軽食を食べ終えたころワゴンが回ってきた。観光特急である〔草津〕には、まだ車販サービスが残っていたのだ。
〔草津〕は熊谷を出ると大宮まで無停車となる。途中の主要駅には新幹線開業後、急行列車の格上げを「新特急」という新区分まで使って停車継続させていたのだが、新宿直通のほうがずっと需要のある現在、「特急停車駅」の看板もすでに必要なくなっているようだ。朝夕の〔(スワロー)あかぎ〕はひきつづき停車する。

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