シェルパはもみじ色

広島駅から普通電車で東へ約20分、瀬野(せの) に着くころにはあたりの山腹も線路際まで迫ってくる。その斜面を切り拓いた住宅地「瀬野みどり坂」へは、ロープウェイと懸垂モノレールを合体させた交通システム「スカイレールサービス」が結んでいるが、その起点 みどり口駅など駅の北口は、1986年まで存在した瀬野機関区の跡地に位置する。
ここから八本松(はちほんまつ) までの山陽本線は大山峠―通称「セノハチ」を越える。急カーブも介在する連続22‰勾配区間は同線最大の難所で、その克服のため上り列車には後押しの補助機関車 (補機) を必要としていた。旅客列車は181系・165系電車およびEF60 500番台の投入以降補機不要となったが、貨物列車は現在でも上り列車最後部に補機を連結し、本務機と後補機が息を合わせて峠を登ってゆく。

瀬野区は山陽鉄道による敷設当初からセノハチ補機の拠点として整備され、戦後蒸機時代はD52など、電化後はEF59 (EF53・EF56改造) がその任務についていた。1977年からEF61形200番台が加わったが、これはEF60のうち増備車と機構の違う初期型を改修・改番してセノハチ補機へ転用したものだった。EF59と置き換える予定が試運転で重連の不具合が判明したため、同形は1,000t以下の列車へ単機で充当することとし (改造も途中で打ち切られた)、1,000t超の列車はEF59×2の使用が継続された。
しかしEF59の老朽化は一層深刻化しており、これを単機で置き換えるための機関車として1982年に登場したのがEF67形である。国鉄直流電機として最後の新規形式だが、当時の事情からまたも改造でまかなわれ、3両が瀬野区と広島機関区(3のみ) へ配置された。国鉄末期に同区が広島区と統合されて1・2も広島区へ移籍、機関区廃止後の補機連結は東広島貨物駅(→広島貨物ターミナル) となっている。

EF67 1

EF67 1

  • 山陽本線 西条←八本松 2013-5
  • D7100, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO400

重い貨物列車を後方から支える後補機にとって、粘着性能つまり簡単に空転したりしないことは非常に大切である。EF67形もEF60改造で駆動系は種車流用だが、連続制御で粘着性能が高い電機子チョッパ制御を採用、6つのモーターを並列回路で駆動する。帰路 (下り) の単機あるいは重単にて回送時、中間台車を電力回生ブレーキ専用とするのも同形だけが持つ特徴だ。
連解結作業の便を図り、神戸方には外部デッキと貫通扉が設けられた。門司方が非貫通のままで、前後の顔つきがまるきり違うのも電機としては珍しい。列車によっては勾配を登りきった八本松駅付近で列車本体と補機の連結を外す「走行解放」が行われていたため、EF59,EF61 200にも装備した自動解結装置を踏襲する。これは運転台の操作で解放てこを押し上げ、自動連結器のナックル錠を外す機構である。
そういった特殊装備もさながら、なによりインパクトを与えるのがその色だろう。国鉄の塗色規定では新性能直流電機は青15号を標準とするが、EF67は異例の朱色 (赤10号) という目立つ姿になった。この色は広島県の県花モミジから取られたものである。

EF67 101

EF67 101

  • 山陽本線 西条→八本松 2013-5
  • D7100, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO400

EF67は所定通り1,000t超列車のEF59仕業を置き換え、EF61 200とともにJR貨物へ承継。EF61の経年代替として1990年からEF65形0番台の改造で100番台が5両増備された。
すでに走行解放する列車が限られていたため、100番台では自動解結装置と貫通扉の追設を省略した。0番台が限定して充当された走行解放仕業も2002年に全廃され、以降貨物列車は西条駅に停車して補機を切り離す。大型緩衝器を備える連結器のぶんだけ神戸方が少し長いのと、窓上のひさし・パンタグラフそして塗色を除けば種車と外見の相違は少ない。当初0番台と同じ朱一色だったが、2003年からの更新工事を機に現行の塗装となり、後部標識灯の形状が変わった。

ここにきて0番台も老朽化が進んだため、置き換える形で「押し太郎」ことEF210-300番台が3両投入された。2013年春以降0番台の稼働機は1号機のみ、100番台または (牽引仕業にもついている) EF210の予備的な扱いとなっている。先日には吹田まで車輪削正に赴き、それ以来仕業につく日も増えているようだが、今般ダイヤ改正での扱いが注目されるところだ。

この記事へのコメント

teru
2014年03月17日 06:22
今日は、ご無沙汰しています。
改めてロクナナの中身を知りました。
改造車かつ限定された使い方で、なかなか興味を持てませんでした。しかし、現地に行くと、魅力のある車なんでしょうね(^_^)
2014年03月21日 23:53
teruさん こんばんは。

EF67は走行場所が限られているため、ただでさえ撮影しにくい(というか東京から遠い)のに、それでわざわざ側面狙いというのもなんとも物好きな話であり、とはいえ線路際からの撮影も一応してはおります(苦笑) やはり特殊な用途にむけたスペシャリストの魅力が、形態や塗装からも感じ取れます。
セノハチで後押し力行中が撮れればいいのですが、立地上そこでのアングル確保は無理なので、仕業終盤でのカットとなりました。ひと仕事終えた雰囲気でしょうか。