田窓:ウィンドウズ

富士急行の看板列車である2000系「フジサン特急」。奇想天外なデザインで知られる車両のうち1編成が、11月末に種車「パノラマエクスプレス・アルプス(PEA)」塗装になった。これは同社が小田急電鉄から2013年に引退した〔あさぎり〕20000形RSE1編成を譲り受け、新特急車として来夏デビューさせるのに伴い、2000系の1編成が2月に引退することを受けてのリバイバルである。
カウントダウンではあるものの、撮る機会のなかったカラーの復活。撮影場所では展望車(もとクロ165)が右向きになるのが引っかかるが、ともあれ機会を失う前に記録しておくことにした。快晴の朝、信州色115系から大月で乗りかえ富士急線へ。三つ峠付近では富士山をバックに、展望車をカメラ側に向けて走る姿がおさめられる。
残存する1編成は2月まで定期検査に入るようで、一部の〔フジサン特急〕が一般車両で運転されることが明らかにされている。該当列車のスジで河口湖方面からあらわれたのは、なんと4扉の通勤電車! というかこれ、さっき普通列車として乗ってきた車両……

クハ6051 富士急行

クハ6051

  • 富士急行 寿→三つ峠 2013-12
  • D7100, AF Nikkor 50mm F1.4D, ISO160

国鉄で電車の省エネ化に取り組んだ201系・203系電車は、電機子チョッパ制御の半導体装置が高コストという課題があった。その後首都圏の輸送改善や103系置き換え用の新車増備に迫られ、同時期に開発が進められていた新型近郊電車(211系となる)のステンレス車体やボルスタレス台車、界磁添加励磁制御などの技術を通勤形に落とし込んだ車両を開発、205系として山手線に投入した。界磁添加励磁制御は抵抗制御の一種だが電力回生ブレーキが使用可能で、ステンレス車体による軽量化および塗装省略、新開発の軽量ボルスタレス台車などによって、コストを抑えつつ201系に勝る省エネ化が達成された。
1985年に投入された先行4編成は、201・203系と同構造の上下二段ユニット窓で落成した。最近のWindowsマークに似た形は国電101系以来だが、両脇の戸袋窓がないことで「田」の字形をいっそう印象づける。この窓は第一次増備で早くも変更された。先行車1本を担当した東急車輛で、製造を視察していた責任者が隣の一段下降窓車体を見て、腐食への配慮が不要なステンレス車体なら下降窓で問題なく、外観もすっきりするということで採用された経緯がある。
国鉄車両で下降窓を使用した例としては「日光形」157系電車、10系客車のB寝台(通路側)、急行形のグリーン車などがあった。この構造は雨水などが窓下辺から構体に入ることが避けられず、外板や構体の腐食を招く問題がつきまとった。前二者は早々に線路から消え、後者も延命使用車を中心に二段ユニット窓へ換装されることになった。もっとも、私鉄で鋼製車下降窓を採用した車両が極端に寿命か短かったというわけでもなく、結局のところ、構造にみあった設計や保守ができたかどうかが問題だったともいえる。国鉄末期に製造された117系100番台は、鋼製にもかかわらず下降窓である。

クモハ6501 富士急行

クモハ6501

  • 富士急行 寿→三つ峠 2013-12
  • D7100, AF Nikkor 50mm F1.4D, ISO160

軽快な姿となって量産開始した205系は国鉄~JR東日本の主要な路線に投入され、JR初期の首都圏通勤輸送を支えてきた。E231系投入により山手線から撤退した205系は周辺路線へ転属していったのだが、先行車4編成はそろって京葉線へ移籍。そこでもE233系投入により撤退となったが、一部が富士急行へ譲渡され改造 (JR東日本トランスポーテックが改造担当)、6000系となって2012年フジキューの日(2月29日) から運転開始した。
6000系は3両編成、クモハ6000・6500はモハ205に廃車クハの運転台を取り付けた。デザインは「富士登山電車」や下吉田・富士山駅などを手掛けた水戸岡鋭治氏の手になり、床を全面木張りとし (このため床が少しかさ上げされている)、つり革の輪を木製に取りかえ、座席モケットをさまざまな柄に交換した、「日本一ゆたかな通勤電車」とするインテリアだ。貫通路に下がる「のれん」も隠れたポイント。

帰路はPEA車両の〔フジサン特急〕に乗ってみた。途中で離合した代走特急はまたも6000系、一段窓(量産車仕様)の6500形だった。首都圏、いや日本を代表する通勤路線で忙しく働いていた車両からずいぶん変わった雰囲気だが、といってオールロングシートの車両が有料特急の代わりをつとめていいものだろうか (転換クロスシート車もいるのに)……と複雑な心境にもなった。なお代走特急については、特急料金がおとな100円減額、全車自由席となっている。

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