開店! おぃしい広島

2011年10月、「うどん県」という衝撃的な広告で世間の注目を集めた香川県。ことでんも「ぞぞー」と応援しているが、これに対抗して(?) 翌年3月、「おしい! 広島県」という一見自虐とも取れるキャッチフレーズでアピールをはじめたのが広島県だ。一部の名勝を除くとなかなか知られていない広島の隠れた名産・魅力をアピールする狙いだが、「おしいはおいしいの一歩手前」という意味も込められているという。
それが功を奏したかどうか、2013年夏季のデスティネーションキャンペーン(DC)は広島である。「せとうち広島・宝しま」をコンセプト、「行かなきゃおしい! 広島県」をサブコピーに据えて、県内全域で展開されている。協賛のJRグループでは「サロンカーなにわ」「トワイライトエクスプレス」の団臨(呉線乗り入れ)を筆頭に各種イベント列車も設定され、31日からなつかしの急行〔ちどり〕が復活運転を行う (キハ48 2両)。DCをアピールするラッピング車は広島車両所の115系L-12編成(4両編成)が選ばれ、「まんぷく宝しま号」として7月から運用を開始、広島東洋カープ応援の「カープ電車」L-13編成につづくフルラッピング車となった。ちなみにL編成は体質改善車30N/40Nの転換クロスシート車である。

「宝しま号」ラッピング最大の特徴は、広島県の名物を扱うお店をトリックアート風に描いたデザインである。乗降扉は店舗の入口と重なり、なじみの店、あるいは人気店に入るように乗車できる。また窓もそれぞれの店の雰囲気を反映し、外から見ると乗客もラッピングの一部分として構成されているのが楽しい。黄一色化が進む「おしい! 広島支社」にあって、秀逸の一本といえよう。DC期間中だけというのが実に「おしい!」
そのDCも後半にさしかかったところで、ようやくL-12の撮影に行けた。線路脇の雑草が伸びてくるのはこの時期致し方ないが、影響の少ない場所をなんとか探し通過を待つ。所定より少し遅れて現れた白い電車が通過するとにわか雨になった。

クハ115-2008

クハ115-2008


撮影順番と逆になるが、「宝しま号」を広島方から順番に見ていこう。号車札は付いていないが、便宜的に下関方を1号車とする。
下関方1号車は、広島の食としてまず思い浮かぶお好み焼き。大阪と覇権を競うところだが、実際には広島県内のお好み焼き屋は全国一の数を誇るそうだ。「広島焼き」とも呼ばれる、やきそば または うどんをはさんだ重ね焼きが当地の定番だ。入口脇にはビールサーバーの容器にキャベツの詰まった野菜かご、看板犬までいる。外にも待ち行列用の椅子が並んでいるが、もちろん座れません。

モハ114-2006

モハ114-2006


2号車はおしゃれな喫茶店、あるいはケーキ店? いずれにしてもスイーツのお店だ。この春には県内で「ひろしま菓子博2013」が開催された。入口脇に「広島レモンのスイーツあります!!」という看板がある。あまり知られていないが(というか私も知らなかった)、広島は日本一のレモン産地であり、新名物として発信をはじめている。その一方で「もみじまんじゅうあります!!」ともあるのは、さすが広島というべきか。

モハ115-2006

モハ115-2006


3号車はラーメン。いまや全国区といえる尾道ラーメン、それに汁なし担々麺に呉冷麺と3軒が並んでいる。脇に置いてある岡持とビールケースはラーメン屋らしく、また尾道の店ではネコが客を招いているようだ。「ようこそ広島県へ」ののぼりは、実際に店の脇や道路に立てられていてもおかしくない。

クハ115-2104

クハ115-2104

  • 山陽本線 中庄→庭瀬 2013-8
  • D7100, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO250

岡山方4号車は酒蔵。灘・伏見と並ぶ日本三大酒どころである西条(東広島市) がモデルだ。なまこ壁には仕込みと同時に杉玉が下げられるが、すっかり枯れた色になっているので新酒ができあがった頃か。山陽新幹線の東広島駅舎は酒蔵をイメージした造りになっていて、中に大きな杉玉がつり下げられている。現在橋上駅舎化工事の進む山陽本線の西条駅も、以前構内で杉玉を見た記憶がある。店の前に積まれる酒樽は「宝島(タカラシマ)」、このDCにあわせて仕込まれたもののようだ。

ところで当編成を含む広島区のL編成は21運用だそうで、運用範囲は山陽本線(岡山~岩国)を中心に呉線・可部線となる。「宝しま号」の充当列車は公式には発表されず、いろんな目撃情報や「流れ」をもとに予測するしかない。広島に投宿した私はお好み焼きを食べたあと、各所情報から運用を調べにかかった。するとその日は糸崎に滞泊のもよう、それはいい。だが翌早朝には岡山方面への上り列車となり、その後も昼間は岡山~三原の往復ばかりではないか。岡山に泊まれば楽に撮影できたはずなのに……
しかたなしに広島からわざわざ普通列車で倉敷方面へ向かう。しかも午後には広島地区へ戻るため新幹線で折り返さざるを得ず……なんとも非合理的なことで、そういう意味では「おしい!」撮影であった。なお「おしい! 広島県」は2013年7月いっぱいで終了、8月からは「やっぱり、おしい! 広島県」が始まっている。

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