ハチロクとロクハチ

「ハチロク」……といったら、鉄道的には蒸気機関車58654号機の形式8620、クルマ的にはトヨタ自動車が富士重工と共同開発したスポーツカー(86/BRZ) と、その礎とされるモデル(AE86) だろうが、コンピュータ的にはインテル8086プロセッサも連想されるところ。「はちまるはちろく? ナニソレ!?」と頭に疑問符をつけたあなたの目の前にあるパソコンにも、ハチロクは入っているのです (タブレットの場合は違うことがあります)。「インテル入ってる。」なWindowsパソコン、そして現在のiMacやMacBookの中には、1978年に誕生した16bit CPUの血を綿々と受け継ぐ「x86アーキテクチャのCPU (中央処理装置; インテル製または他社互換品)」が搭載されているのだ。

国鉄時代の南武線は首都圏国電の転属車、つまり「お下がり」によって運転されてきた。これは同線に限った話でもなく、標準化された103系や113系は「○○線輸送改善」の名目で製造されても実際は主要幹線向けに配置し、玉突きで中古車両をその○○線へ転属させることが常であった。南武線では他線と直通しない独立路線という事情もあってか、転属車がもとのラインカラーのまま営業につくことも少なくなかったという。
保守の問題や路線イメージを損ねるという沿線の声もあり、JR東日本では山手線へ投入された205系を周辺路線にも直接投入することとし、まず横浜線に山手線の続番で増備された。201系でいったん小さくなった乗降扉の窓が再び大きくなり、これが山手線用とそれ以外を区別する大きな特徴である。

クハ205-86

クハ205-86

  • 南武線 府中本町→南多摩 2013-5
  • D700, AF Nikkor 28-80mm F3.5-5.6D, ISO250

横浜線に続き南武線にも205系が投入、1989年から営業を開始した。クハ205-86 (ここで出てきた!) 以下6連はそのトップバッターで、南武線にとって1944年の国有化以来初という新人配属であった。黄色のラインカラーを生かし、オレンジと茶色(ぶどう色) を添えた「新・南武カラー」が誕生、三色帯は各駅玄関の駅名票にも使われている。横浜線仕様は山手線用とおなじくATC装置 (京浜東北線乗り入れ・回送のため) を運転台後部などに設置したが、南武線はATSのため機器が少なく、運転室仕切壁の窓が大型化されている。

パソコン向けのCPUで当時のハチロクと双璧をなしていたのが「ロクハチ(K)」、モトローラの68000プロセッサ (MPU)だった。アップルMacの源流、初代マッキントッシュ (Macintosh)が採用したことでも知られるが、シェアではIBM PC(とその互換機)、国内ではPC-9800シリーズなどが採用したx86勢力に太刀打ちできなかった。Macも新アーキテクチャのPowerPCプロセッサへと移行、さらに2005年にはインテル x86 へ乗り換えられてしまう。現在68000は工業用途 (マイクロコントローラ) に細々と使用される程度の、もう忘れ去られそうな存在だが、シャープがこの68000を使い1980年後半に放った X68000 というパソコン (パーソナル・ワークステーションと称した) は、いまなお熱心なファンからの支持を受けている。
ハチロクを出すんだったらロクハチにも触れないと。で、205-68はどこだっけ……と考え出してまもなく気づいた。「ココ(南武) にいるじゃないか、68!」

クハ208-68

クハ208-68

  • 南武線 府中本町→南多摩 2013-5
  • D700, AF Nikkor 28-80mm F3.5-5.6D, ISO320

南武205系の増備は16編成で終了した。1993年に205系1編成が転出する代替は量産が立ち上がった209系となり、川崎重工製のクハ209-13以下6連 (ナハ1) が投入されて同線初のVVVFインバータ制御車になった。1997年には輸送力増強で東急車輌製クハ209-68以下6連 (ナハ32) が加わったが新製配置はそれきりで、まだ15編成残っていた103系の置き換えはまたも山手線からのお下がりで転入してきた205系、一部はサハ205を先頭車化したクハ205/204-1200番台まで使って2004年末にようやく完了した。
2009~2010年度には京浜東北線から3編成が機器更新して投入(2200番台)されたが、ドアエンジンの方式が違う ナハ1編成の廃車、仙石線向けに再改造する205系1200番台の代替もあって、全体では1編成増だった。これほどまでに多種の仕様が南武線に在籍する (した) のは単なる偶然でもなさそうだが、その所属先名称がいまではめずらしくなった中原「電車区」(運転士が所属しない区所は「車両センター」と改称している) というのも興味深いところ。

このところ新製車が過半数割れ状態だった南武線に、先日驚きの発表が。もはや103系の製造数をもうかがう勢力のE233系が2014年度から投入される。裾絞り拡幅車体に、LED照明を採用する新標準型。17年ぶりの新車配置で、本線 (川崎~立川) ではついに新製車統一を果たすことになる。
205系と209系をあわせた編成数は35、これから新製されるE233系も35編成なので、209系も最終的には追い出されるわけだ。ナハ32編成はいまだ機器更新を受けておらず、結果として現役最後の0番台ということになっているが、それを含めた209系の今後も注目される。

この記事へのコメント

2013年11月05日 00:50
転属配置替えが目まぐるしわね

(@_@)

205時代も終わったのかしら?

武蔵野線に乗ると錆び汁車体のまま運用されてて

停まるときの減速にはガガガ♪ガゴンガゴンって‥皆さん体がフラつくほど制動調整おかしいし‥
(`ヘ´)直さないのかしら?
2013年11月15日 23:35
~NORINKO~ さん こんばんは。

E233系の浸食がすすむ首都圏通勤路線ですが、武蔵野線はVVVF(5000番台)改造で車体更新相当になっているだけに割を食ったといいますか、むずかしい立場ですね。ただ従来車とくらべ加速のスムーズさは明らかに違うので、たまーに0番台に当たると「あぁ…ちょっとハズレ」的な感想を持つのも事実で(苦笑)
外国への譲渡もありますが、211系ふくめ廃車が続々発生している現状、ひとつの時代が終わることを実感することになりそうです。