EDO MURASAKI EXPRESS

東京スカイツリーのオープンからまもなく1年。展望台と足下の東京ソラマチをあわせたスカイツリータウンは、すっかり東京の新名所として定着した感がある。本来の(?)目的である電波塔機能についても、東京タワーからの地上デジタル放送送信移管に向けた試験放送を実施中。地デジ整備がかなり遅かった自宅だが、スカイツリーの受信に問題はなさそうだ。

そのスカイツリーの足もとを行くのが東武スカイツリーライン(伊勢崎線)。東武鉄道は民鉄では近畿日本鉄道に次ぐ路線網を関東一円に広げ、日光線では日光・鬼怒川への観光輸送を長く担っている。そんな同社を代表する列車が、日光・鬼怒川線特急〔けごん〕〔きぬ〕用100系電車「スペーシア (SPACIA)」だ。
同系は有料特急用として最初にデビューしたVVVFインバータ制御車となった。粘着・加速性能の高さや電力回生ブレーキの効力、保守の容易さを見込んで通勤形を中心に導入がはじまっていた交流モーターのインバータ制御だが、それらの要求が低い特急形ではJR・私鉄とも直流モーターの抵抗制御がまだ主流だった。信頼の置ける技術だし、インバータから発生する独特の変調音が耳障りだという理由もあったかもしれない。しかし同系の登場以降、電車制御の潮流はVVVFへ一気に向かうことになった。定加速度・定速制御などの高い能力は特急向けでも十分メリットがあると認められたのだろう。とくに高速化と軽量化を要求される新幹線で、VVVFの採用は必須だった。

モハ108-6 東武

モハ108-6

  • 東武日光線 新古河←栗橋 2013-5
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

形式は浅草方からモハ100-1~6の順で、6両全車を電動車として高速走行と日光線の勾配区間対応の両立が図られている。台車の軸距が2,300mmと長め (現代の在来線電車は2,100mm前後、新幹線が2,500mm) に取られているのも、高速域での走行安定性を重視したものといえる。
100系はそれまでの主役、1700・1720系DRC車をさらにグレードアップした車両として1990年に華々しく登場し、翌年には第34回鉄道友の会ブルーリボン賞を獲得した。現時点で同社唯一の受賞車で、かつての特急車5700系も同年エバーグリーン賞に選定されている。

モハ107-1 東武

モハ107-1

  • 東武日光線 新古河→栗橋 2013-5
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

浅草方先頭車のモハ100-1にはコンパートメント (4人個室) 6室を配置、ほかは普通車。普通車といってもシートピッチは1,100mm、フットレストも備えるハイバックシートだ。先代DRCから座席は国鉄グリーン車なみの仕様だった。現在は終了しているがサービスカウンターでは客室乗務員 (スチュワーデス→アテンダント) が英語で対応し、DRC当時から車内放送に英語も添えられるなど、国際観光地・日光へ向かう列車に恥じないサービスを誇っていた。山手線から外れた立地の浅草ターミナルも、行楽地として著名だから不利はなかったのだろう。以前は北千住も通過し (のちに上りのみ停車)、浅草の次は下今市、列車によっては東武日光までノンストップで走破していた。
そんな東武特急も時勢の変化から途中停車駅を増やし、2006年には栗橋から東北本線(宇都宮線) に乗り入れを開始。新宿~日光・鬼怒川温泉間でJR東日本の253系と〔日光〕〔きぬがわ〕 (東武車は「スペーシア」を冠する) として相互直通運転を行っている。コンパートメントはJR線ではグリーン車の扱いとし、逆に253系のグリーン車は普通席となり個室も業務用室に置き換わった。

モハ107-4 東武

モハ107-4

  • 東北本線 東大宮←蓮田 2013-5
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO250

東京スカイツリーの開業に向けて東武では2012年3月に最寄り駅の業平橋(なりひらばし) を「とうきょうスカイツリー」に改称。同年秋から100系について客室内装のリニューアルが行われ、あわせて外装が3種類の新塗装となった。新塗装はスカイツリーの基本ライトアップカラーである「雅」と「粋」、そして日光鬼怒川線の優等列車イメージで旧塗装でも使われた「サニーコーラルオレンジ」。アクセントとして東武の新しいロゴタイプカラー「フューチャーブルー」が旧塗装の赤(パープルルビーレッド) に代わり添えられている。
スカイツリーの「雅」は江戸紫、「粋」は水色である。スペーシアの新塗装もこれにならっており、この二色はメタリックカラーだ。「江戸むらさき特急」となった雅の評判はかなり分かれるようだが、実際に走っているところを見ると悪くないんじゃないかなと思う。しかしメタリック塗装は、写真にすると光線との絡みで見え方がずいぶん異なるようだ。

モハ106-4 東武

モハ106-4

  • 東武日光線 新古河→栗橋 2013-5
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

モハ100-3の半室はビュッフェで、サービスカウンター・車内販売基地を兼ねる。DRC時代は2ヶ所にあって、シートサービスも行われた。窓のない扉は業務用で旅客の乗り降りはできないため、一種の0扉車といえる (純粋な無扉車は伊勢崎線〔りょうもう〕にある)。
100系の先頭車が「モハ」であることからわかる通り、東武は制御電動車 (JRでいうクモ) と中間電動車 (モ) の称号を区別していない。私鉄全体でもこちらが多数派で、そもそも国鉄でも1959年以前の車両称号規程改訂まで両者の区分はされていなかった。

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