外濠春色

お堀端に「スーパーあずさ」が帰ってきた。〔スーパーあずさ〕は現在E257系で運転する〔あずさ〕の速達版として、専用車E351系で新宿~松本間を運転する。一時中断していた東京乗り入れだが、2013年3月改正で〔スーパーあずさ10号〕がふたたび東京まで顔を出すようになった。2008年から〔中央ライナー〕の下り1本がE351系になったので車両自体の乗り入れは復活していたが、夜間帯の運転では走行撮影は無理だった。

3月下旬に早くもソメイヨシノが満開を迎えた外堀通りに出向き、まずは編成が入るように構えてみる。待つことしばし、ライトグレーにラベンダー色を乗せた卵形の車両が市ヶ谷方からゆっくりと近づいてきた。構図の関係で後追いになるため最後尾の愛称表示器が気になったが、さいわい「スーパーあずさ」の愛称が出ていた。651系もそうだったが、最後尾は後部標識灯として使用するため、高速では尾灯の赤色のみ表示されるのだ。

クハE350-4

クハE350-4

  • 中央本線 飯田橋→市ヶ谷 2013-3
  • D700, AF-S VR-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G, ISO250

列車は折り返し回送で新宿へ戻る。東京駅の中央快速線ホームは、1面2線を快速・特快が1~2分で折り返す過密駅であるため、優等列車の折り返し整備は不可能だ。ほとんどが整理券制の通勤ライナーにあって〔中央ライナー〕〔青梅ライナー〕が指定席制なのも、東京での乗車時間を短縮する目的があるという。
以前も触れたが中央本線では前後の抜けが良い場所が少なく、都心部でこれほど距離を取って撮影できるこの区間は穴場的存在である。もっとも手前には堀端の桜が連なっていて、その枝と架線柱の双方がうまく開いている場所を探す必要があるわけだが。

E351系はJR東日本唯一の振子車両。JR東日本では最近の新形式車両名に"E"を冠しているが、初採用は同系だった。JR四国・2000系で実用化した制御つき自然振子方式を採用、曲線通過速度を向上することで山岳線走行ながら表定速度90km/hの大台に乗せている。新宿~高尾間のダイヤ過密による並行ダイヤがなければ、もっと高くなるのだろう。
8両基本+4両付属の編成は分割部を貫通形とし、両端は651系のデザインを継いで大型LED式愛称表示器を備える。分割できるのは基本編成を大糸線へ直通させるためだったが、2010年3月改正で全列車松本止まりとなったため、営業列車は常に12両で運転される。

クハE351-1102

クハE351-1102

  • 中央本線 酒折→石和温泉 2011-10
  • D700, AF-S VR-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G, ISO250

1000番台はマイナーチェンジ車のように見えて、じつは1993年に登場した先行製造車2編成である。量産車――といっても3編成の増備で終わってしまったが――の落成後に一部改造のうえ1000番台に改番された。振子車にしては大仰な屋上空調機器がよく目立つ。
電化区間の曲線ではレールが連続的にカーブするのに対し架線柱の間で張られる架線は当然直線、なので集電装置と架線の位置が左右に揺れる。(直線区間でもスライダーの偏摩耗を防ぐため意図的にジグザグに張られる箇所はある) 振子車では車体がさらに大きく振れるため、そのままだとスライダーの許容範囲を外れてしまう可能性がある。381系を導入した中央西線、紀勢本線と伯備線では架線の左右動を制限しており (さらに山陰・福知山線では振子機能を停止)、2000系はパンタがないので問題ない。だが中央東線では電化が先行しているため、台車から垂直に立ち上げた架台の上にパンタグラフを載せ、車体が傾いてもパンタは非振子車の位置にあるようにした。

モハE351-8

モハE351-8

  • 中央本線 酒折←石和温泉 2011-10
  • D700, AF-S VR-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G, ISO250

車体下部が大きく絞られるのが振子車の特色であるが、とくに狭小トンネルのため車両限界の厳しい中央本線を走ることもあってE351系のボディは車体上部も大きく絞られている。座席に座ると側窓があきらかに内傾しているのがわかり、サイズ以上に窮屈な印象を与えている感は否めない。
JR東海の超伝導リニア建設を視野に入れ、JR東日本では〔スーパーあずさ〕後継車両の検討に入ったという。新型車両では乗り心地や静粛性の向上をはじめ、AC電源やネット接続といったサービスの向上に力を入れるとのこと。E259系とE657系をあわせた感じになるだろうか。

この記事へのコメント

teru
2013年04月19日 00:09
こんばんは!
スーパーあずさ車両、そういえば、東京乗り入れは珍しかったんですね(^^。

市ヶ谷のお堀もあっという間に新緑の季節になりつつあるようで、季節がたつのは早いものです。後継車両とのこと、もう振り子はやらないのかな?リニアとの競合もあり、難しいことでしょう。

teru
2013年04月23日 22:40
そうそう、F誌拝見しました。大活躍(^^。
美しい写真でしたね。
2013年04月26日 23:55
teruさん こんばんは。アチラもご覧いただきありがとうございます(笑)

東京駅1・2番線はE351系12両が入れるホーム長なんですよね。ほとんど活用されないのはもったいないですが、まあ需要もその程度、でしょうか。
ともあれ〔スーパーあずさ〕が市ヶ谷~飯田橋の外堀を眺めて走るのは久しぶりということで、桜の時期にあわせて行ってみました。いまはすっかり緑の景色ですね。ウチの近所の梨畑も、受粉作業をしているなと思ったらあっというまに緑一色に……
E351系の後継は振子ではなさそうで、やっても空気ばね式傾斜くらいでしょうか。他社でも新規・追加導入は期待薄です。