逆光は勝利?

「ピーカン不許可」といえば、対になる言葉は「逆光は勝利」。それに「世はなべて三分の一」「頭上の余白は敵だ」……(ゆうきまさみ作「究極超人あ~る」第79話『これが基本だ』から)。いずれもポートレート(人物撮影) でエッセンスとなり、あるいは気をつけておいた方が良い事柄で、決してかたよっているわけではないと思う (トライXを5号[印画紙]に焼くのは?)
鉄道写真ではどうかというと、基本的には晴天下順光で撮られるべきというのが共通認識であろう。動きものに対するシャッタースピードの確保、色表現の良さも、順光が圧倒的に勝っている。あまたの撮影地ガイドで順光の条件が必ずといっていいほど書かれているのは、その要求に応えるためだ。そのいっぽうで、明確な意図を持って撮られた逆光の写真は、ときに順光下よりもはるかに力のある作品となる。
車両撮影はどちらかといえば「記録」の要素が強いから、上から下までの描写を均等にしたいところ。強すぎる順光は床下の描写を難しくするし、どうしても逆光側から狙わなければならないこともある。だからそんなときはすこしでもいいから曇ってほしいと願ったものだ。

冬晴れの日、信越本線の高崎→横川で運転される〔SL碓氷〕のD51 498を狙う。電車で気楽に乗り込む場所だが、めずらしくクルマで訪れた。群馬八幡~安中で順光下の撮影後、いつもならゆっくり機材をたたんで駅に戻る (直後の上りには間に合わないので…) が、この日はすぐに移動。列車が安中で10分ほど停車するのと、同駅以降の連続勾配で速度が低下することから、安全に先回りしてもう一回捉えることができる。ヨコカルこと碓氷峠の急勾配にまぎれていたが、安中~横川間も25‰がつづく難所で、乗っていてもその傾斜を感じ取れる。
駅近くは若干混雑したが抜ければ順調で、となりの磯部駅にほど近い水田へ。勾配は駅の手前まで続いており、機関車は駅到着まで力行を続ける。南側から撮れることは承知の上で、ここはあえて北側へ回った。空もようは変わらずで、正面ほぼ真上から陽が差す完全逆光である。あわただしく機材をセットすると踏切が鳴り出し、12系5両と後補機DD51を従えて機関車がゆっくり登ってきた。補機つきといっても、D51なら手を借りず横川まで登り切ってしまうそうだが。

D51 498

D51 498

  • 信越本線 安中→磯部 2012-2
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

蒸機に関しては、逆光撮影もほかの車種よりは積極的に行われる。黒一色の車体に煙突からの煙や足下のドレインで、立体的な描写が得られるところが大きいだろう。そんな逆光撮影をサイドビューでやってみたら? というのがこの撮影のもくろみであった。黒の締まりという点ではやはり不利で、しかも背景が暗い場所というかなり難しい条件だと思ったが、頭頂部にさしこむ光によってボイラの輪郭が出て、これはこれでおもしろい描写になったと思う。C61右側面もほぼ同じ場所で撮影したわけだが、こちらはうす曇りの下で積雪をレフ板代わりにして得られたものだった。
順光下では黒煙をかぶりすすけてしまった後補機DLは、逆光では白いベールの中に浮かび上がる姿に。高崎車両センターのDD51 842はじめ3機がお召仕様で、ランボード・煙突カバー・手すりのステンレスが強く輝き、銀さしした連結器と車輪が鈍く光る。

DD51 842

DD51 842

  • 信越本線 安中→磯部 2012-2
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

2013年3月現在 D51 498は大宮総合セに全検入場中のため、昨秋から各地のSL運転は留守番を任されたC61 20が勤め、上越線と信越本線でも運転される。ただ上越線よりきつい連続勾配は現在の同機の粘着性能には厳しいようで、SLとDLの連結位置を入れ替えて横川ゆきを〔DL碓氷〕、高崎行きを〔SL碓氷〕としての運転である。2012年9月には横川方をD51としたプッシュプル運転も実施され、D51全検復帰後の再現も期待できる。

この記事へのコメント

teru
2013年04月02日 07:45
おはようございます(^_^)
逆光の方が味のある写真になること有りますよね。煙の輝く陰影、気に入りました。
2013年04月07日 23:57
teruさん こんばんは。

蒸気機関車というものは、車体から煙まで順光でもそこそこ立体的に見えるものですね。その一方で逆光側に回ってみると、輝きのある煙と陰影との組み合わせで立体感がいっそう強調され、どちらかといえば印象に残るなあ、と感じた撮影でした。