チンチン電車は今日も行く

中国地方最大の都市、広島。宮島への玄関口、原爆ドームのある平和記念都市、広島東洋カープとサンフレッチェ広島の本拠地、そして路面電車の走る街。広島電鉄 (広電: ひろでん) の鉄軌道路線は総延長35.1km、輸送人員16万人/日と、名実ともに日本の路面電車を代表する存在だ。
昭和40~50年代にかけて、国内の路面電車はモータリゼーションの波にのまれ相次いで廃止されていった。広電ではそれらの車両を譲り受けた上で、そのオリジナルの形態や塗装をほぼ保った形で運転させている。自社車両では1945年の惨禍から復活した「被爆電車」の存在も忘れてはならない。そしてこの11月23日には電車開業100周年を迎えることになった。

3905 広島電鉄

3905

  • 広島電鉄宮島線 広電五日市←鈴峯女子大前 2008-8
  • D700, AF Nikkor 50mm F1.4D, ISO200

「軌道」である市内線電車は広電西広島駅を境に「鉄道」の宮島線(16.1km) となるが、広島駅前から宮島線を通って広電宮島口まで直通電車が走り、昼間は連接車によって運行される。1982年までは西広島~宮島間のみを運行する鉄道形電車も在籍し、宮島線内の各駅は市内直通車用の低床ホームと線内車用の高床ホームが同居するふしぎな姿をしていた。
路面電車は高架路線や地下鉄などよりはずっと乗り降りしやすい交通機関ではあるが、唯一問題があるとすれば乗降そのものであろう。路上の電停は安全地帯があってもとても狭く、ときにそれすらも設けられていない場所があったりする (広電にもまだ1ヶ所残っているのだ)。そこから車内へは狭い扉から一段ないし二段のステップを上がる必要があって、すべての人に優しい交通機関とは言えなかった。現在は拡幅や屋根掛け、スロープの設置などかなり改善されてはきているが。

5006 広島電鉄

5006

  • 広島電鉄宮島線 広電五日市→鈴峯女子大前 2008-8
  • D700, AF Nikkor 50mm F1.4D, ISO200

路面電車低床化のうごきは欧州が先行しており、熊本市交9700系に続く国内2例目となった広電も独シーメンスが製造販売していた超低床車「コンビーノ」を導入、5000形「GREEN MOVER」とした。1999年登場の第一編成はアントノフ大型輸送機で空輸されたことでも話題を呼んだ。
それまでの日本では存在しなかった5連接、全長30.5mという長大な車体は、広島駅前側からA-C-E-D-B (画像は左からB-D-E-C-A) の付記号がつく同一車号で、A,E,Bのみに台車があってC,Dは両側車体から支えられている。各台車は無車軸車輪で、ノンステップバスのように室内にタイヤハウスが張り出しその上に座席が配置されている。
当然のごとくVVVFインバータ制御ではあるが、この電車は歌わない (もともとデュワグという別の会社の製品だったが買収された)。

5101 広島電鉄

5101

  • 広島電鉄宮島線 広電五日市←鈴峯女子大前 2008-8
  • D700, AF Nikkor 50mm F1.4D, ISO200

5000形は全12編成が増備され宮島線の主力となっているが、部品調達などの問題から国産化することになり、新たに開発されたのが5100形である。全長を法規上の限界 30.0mに抑えたほか、座席数の増加、冷房の効率向上、駆動方式などの特許を回避した純国産の車両である。愛称は「Greenmover max」。全10編成が在籍し、こちらはおもに市内線の輸送力車両として活躍している。上掲5101編成のみ宮島線で運用、広島~宮島の名勝がラッピングされている。

現在の広電では車掌が乗る連接車でも次駅案内は自動放送で、その冒頭にチャイムが鳴らされる。のりかえ電停で鳴るらしい、耳に残るメロディが気になっていた。あるテレビ番組でその正体が明かされ、それは1979年に発売されたレコード (EP盤) 「広島の歌」の一曲、「広島チンチン電車の歌」のサビ部分だった。もう一曲は「がんばって! カープ」、広島カープが日本一になった年のことだ。
一般の電停では単純な2打点チャイムであるが、特別な電停では違う音色で流れる。広島の魂ともいえる音色は、一度ご乗車になった上で聞いてほしい。

この記事へのコメント

teru
2012年11月17日 17:56
お久しぶりです。広電のsideview、良いですね。
後ろの貨物列車も気になりますが、また行きたいものです。かなり良い車が導入されている一方で、市内線の方はまだまだ京都、福岡の旧市電の車、健在なのでしょうか・・・。
2012年11月24日 11:07
こんにちは。

宮島へいったときに
宮島口から市民球場まで利用しました。
いろんなデザインのがあったように思いますが
たぶんグリーンムーバーシリーズので
乗ってる時のリズムが、体験したことのない揺れ心地で
鉄道に乗ってる感が楽しく伝わってくる電車でした。

よいやすいひとはつらいかも?
わたしは旅きぶんでしたので♪
2012年11月26日 22:40
teruさん こんばんは。

広島といえば長崎と並ぶ路面電車博物館であり、京都市電や西鉄市内線の車両もまだ健在のようですね。その一方で最新の超低床電車も走り、一日眺めても飽きない街です。
枝線の白島(はくしま)系統にも新型低床車が入るというニュースもあり、まだまだ話題は尽きないようです。
2012年11月26日 22:47
Anさん こんばんは。

ひろでんの宮島線に乗られたのですね。路面電車としては高速ですがなにぶん駅数が多いもので、私も宮島へ行くのについ市内線から乗り通したらけっこう時間を食って、厳島神社などの観光が駆け足になってしまいました(笑)

グリーンムーバーは5車体で台車が3つという変則的な連接車ですね。私も5000系のほうに乗りましたが、乗り心地の独特さというより道路のすぐ上を滑るように走るおもしろさのほうを強く感じました。また同系は砂箱を持っているのですが、車内に窓があってその残量を確認できるようになっているのが興味深いです。