ミルクとチョコレート

JR京都線 (東海道本線) の下り電車で高槻(たかつき) を出発すると、しばらくして車窓右手に大きな茶色の壁が出現する。その正体はことし2月、同場所にある明治製菓大阪工場の壁面へ設置された巨大チョコレート、その名も「ビッグミルチ」。
明治チョコレートといえば、1編成をチョコレート色に装った「山手線命名100周年」E231系が記憶にまだ新しいが (しかしあのとき撮ったサハE230-503,504はもう北長野へ旅立ってしまった)、この巨大看板も見てみたい、なんとか画面に取り入れられないかと思っていた。
大阪側から普通電車で摂津富田(せっつとんだ) に降り、駅から約10分ほと歩くとチョコレートのかけらが見えてきた。近づくほどに笑ってしまうほどの大きさだ。もはや壁にしか見えないが、同社ではこれを「世界最大のプラスチック製広告看板」としてギネス世界記録に申請中。高さ27.6m×幅165.9m、「明治ミルクチョコレート」に換算すると約38万枚分になるという。

JR京都・神戸線はアーバンネットワークの基幹路線であり、北陸特急街道の発着点でもあるから被写体には事欠かない。とはいえ背景の関係上、ここは白っぽい車両のほうが引き立つような気がする (逆に長岡京コスモス畑はステンレスや濃い色の車両が似合う)。
画面右手は住宅で隠れ、すぐ左に架線柱がかかる。高槻停車の新快速や普通ならまだいいが、100km/h以上でいきなり視界にあらわれる特急電車へすばやく照準を合わせるのは、やはり容易ではない。

クロ683-4511

クロ683-4511

  • 東海道本線 摂津富田←高槻 2011-10
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO250

右からライチョウ色 (冬羽) の683系4000番台が飛び込んできた。681系から続くJR西日本 交直流形特急の決定版で、これの増備により2011年3月改正で485系〔雷鳥〕がすべて置き換えられた。
ほかの番台との違いは、6両+3両で運用していたのから9両編成になったこと、パンタグラフが下枠交差式からシングルアーム型に変更されたこと、衝突安全性を高めた設計から車体隅の造形に若干変化が見られることなどがある。サービス面では座席の改良とグリーン車全席へのAC100Vコンセント設置などが行われた。
それらよりも印象が強いのは、大阪方の先頭形状が変わったこと。編成の自由度を高める目的で、それまで流線形であったクロ683についても高運転台貫通形に変更した結果だ。ただし現時点でこちら側への増結は検討されていないので貫通路は整備されず、ふさぎ板を貼り付けてある。順序は逆だがクハ481-200やクハネ581の一部でも同じような車両が登場した。趣旨はわかるが中央になにも置かれないのっぺりした顔にはどうも馴染めず、両開き扉を設置した従来車のように鼻筋があるだけでも違うものだなと感じる。
右端にチラと見える小窓は、本来喫煙ルームとして設計されていたものだ。登場前に全車禁煙化が決定したため「空白地帯」となってしまい、結局携帯電話通話スペースとして開放されている (公衆電話は置いていない)。

京阪間を通る特急列車は〔サンダーバード〕〔はるか〕が主なものだが、京都総合車両所との回送で福知山線〔こうのとり〕、きのくに線 (紀勢本線)〔くろしお〕〔オーシャンアロー〕も通過する。
国鉄時代、阪和・紀勢線の列車は阪和電気鉄道のターミナルを受け継いだ天王寺発着であったが、1988年に開催された「なら・シルクロード博」向けの臨時快速として、梅田~西九条~安治川口間の貨物ルートを活用した新大阪~西九条~天王寺~奈良という経路で直通運転を開始。翌年には天王寺駅に関西本線~阪和線の連絡線が完成し、〔くろしお〕の一部列車が新大阪・京都へ乗り入れるようになった。
天王寺発着列車には新幹線からだと新大阪・大阪・天王寺と3回も乗り換えを要するし、乗継割引が適用できない。比べて新大阪なら乗り換えは1回、乗継割引も効く。どちらが便利かは言うまでもなく、現在定期列車は新大阪・京都発着に集約された。

クロ380-2

クロ380-2

  • 東海道本線 摂津富田←高槻 2011-10
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO250

紀勢本線はとくに紀伊半島南部で急曲線の連続する隘路であったから、電化とともに振子車両の381系が投入され、〔くろしお〕はエル特急となった。クロ380は客室グレードアップを行った〔スーパーくろしお〕に連結するパノラマグリーン車としてサロ381から改造された車両で、サロは全車先頭車化あるいは普通車と設備交換され廃形式となっている。
パノラマ車両は283系〔オーシャンアロー〕にも引き継がれているが、〔くろしお〕の取替えで投入される287系は683系4000番台同等の先頭車となってパノラマ形でなくなる (さらに普通車合造となりグリーン席は大幅に減少)。振子車両でもないが、低重心設計と加減速度アップで補われるという。制御付自然振子の実用化で各社に波及した振子車も、構造の複雑さゆえにコスト上昇が避けられず、今では退潮傾向となってしまった。

上の画像より背景のチョコが大きく見えるのは、カメラ位置を後退させ焦点距離を伸ばした結果で、望遠圧縮効果の妙である。こうしてみるとそびえ立つ巨大チョコはなかなかの迫力。

この記事へのコメント

2011年12月11日 23:56
出ました!ビッグな板チョコ!
チョコの前を走るサンダーバードやくろしおが、模型のように思えます。
しかし、38万枚分ですか!?ほんとにチョコだったら、食べるのに何年かかるのでしょう?(そんなチョコあるわけないですよね・笑)
新しい白いくろしお車両287系は、振り子ではないのですね。振り子電車はどうしても酔いやすいので、乗り心地はよくなるのかも。でも、スピードは出しにくくなるのでしょうね。
2011年12月19日 22:22
さくらねこさん こんばんは。お返事遅れてすみませんでした。

巨大チョコの前を横切る電車、ホントに模型みたいですよね。私も編集してみてそう思いました。それにしても、天下の東海道線でこんなおもしろアングルができるとは、です(笑) 板チョコ38万枚分とは途方もないスケールですね。正直、この1ピースだけでもひとりが一生に食べる量かどうか……
〔くろしお〕には以前485系が投入されたことがあり、非振子車は2度目ということになります。振子車両は独特の乗り心地で酔いやすいデメリットもあり、N700やE5のような空気ばね姿勢制御がトレンドになっていくのでしょう。
あわせて名称も〔オーシャンアロー〕〔スーパーくろしお〕含め〔くろしお〕に統一されるようですね。〔サンダーバード〕も、もう〔雷鳥〕に戻しちゃってもいいんじゃないかな……

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