まあだだよ!

上野を出た常磐線電車は日暮里から急カーブで東へ進路を変え、北千住から緩行線 (千代田線直通) が加わると非常に線形の良い複々線区間となる。かつて103系がモーター音を高らかに響かせ疾走したところだ。それも取手で終わり、すると車窓は一気に開けてくる。
この取手~藤代間は古くからの撮影名所。広がる水田の真ん中を線路が突っ切るというロケーションは影を落とす要素も少なく、朝から夕方まで編成写真はじめアングルの自由度が高い、はずだったが……。

ひさしぶりに足を運んでみると、線路がセイタカアワダチソウなどの雑草にうずもれている。この前月、 ひたちなかまで行った際にこの状況は確認していた。一部区間では刈り取りが始まっているのも見えたから、状況が変わったかと期待したのだが相変わらずで、車両下回りどころか車体裾部まで勢いのある草に隠れてしまう。草むらをすり抜けて走るアングルというのも写真表現としてはアリで、試してみたい被写体もあったりするのだが、車両の記録としては使えない。
さっさとあきらめて他の地点に移動するか……と悩みつつもうすこし進んでみると、視界の一番奥がすっきりしているように見えた。近寄ってみると、線路脇に白いポスト(杭)が立ち、そこから右側で雑草がきれいに刈り取られている。反対むきに立っていて字が見えないが、このポストが何を意味するかはなんとなくわかった。

クハE653-6

クハE653-6

  • 常磐線 取手→藤代 2011-10
  • D700, AF-S VR-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G, ISO250

常磐線特急は651系が1989年から〔スーパーひたち〕として在来線初の130km/h運転を開始、以降10年間は651系による上野~水戸間速達形と、途中駅にも停まる485系の交互運転を続けていた。485系の老朽取替えとして1997年から製造されたのが、E653系交直流特急形電車である。「フレッシュひたち」の愛称がついているが、列車としての〔フレッシュひたち〕は一部651系でも運転される。全普通席7連で登場し、後に増結用4連も登場。朝夕など14両編成が疾走する姿は見ごたえがある。
国鉄特急時代の普通座席は、151系以来シートピッチ (座席間隔) が910mmだった。標準体格が変化した現在では窮屈なピッチになってきたため、JR化後の新型車両では960~970mmに広げられ、国鉄形でも車内改装時にピッチ拡大した車両は少なくない。
そんな中でE653系のシートピッチは910mmとなった。定員確保の意味もあり、座席形状を工夫して圧迫感を低減させたというが、「狭い」という評価はぬぐいきれず、兄弟車とも言える交流車E751系で使われた後は960mmへ再拡大されている。5~6cmの差は列車単体だと気づきにくいけれど、以前683系〔しらさぎ〕から485系〔北越〕に乗り継いだときはその差がはっきりわかった。

クハE652-2

クハE652-2

  • 常磐線 取手←藤代 2011-10
  • D700, AF-S VR-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G, ISO250

183系以来の直流特急電車は停車頻度が高くなったことから2扉が標準的になっていたが、255系から各車1扉に減らす一方で客室両側に出口が配置されるようにした。E653系もデッキは全車の水戸側と上野寄り先頭車の上野側に設けてあり、自席からどちらに進んでも行き止まりにならず降りることができる。
国電101系以来、線区ごとに車体色を変える例はあったものの、E653系は同区間走行でありながら全5色というカラバリなのも特徴。基本7連は赤 (モチーフは偕楽園と好文亭)、青 (塩野崎灯台と太平洋)、黄 (国営ひたち海浜公園と水仙)、青緑 (霞ヶ浦と帆曳舟)、付属4連は柿色 (袋田の滝と紅葉)と、それぞれ沿線の名物から来たもので、先頭車にはシンボルマークも貼られている。どの色が、併結時どの組み合わせで来るかは、まったく運次第だ。

モハE653-17

モハE653-17

  • 常磐線 取手→藤代 2011-10
  • D700, AF-S VR-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G, ISO250


2012年春から651系に代わる新型特急E657系が投入され、同年秋には上野~いわき間の全列車が同系で統一されることになっている。いわき~仙台間はE653系により別名称の特急を運転する計画で、愛称の募集もしていた。しかし同区間はご存知の通り、全線復旧の見通しさえまったく立っていない。宙に浮いた形になる同系をどうするかは現状明らかになっていないが、耐寒耐雪仕様で交流50/60Hz区間とも走行できるため、現在485系が走っている線区での代替も可能ではある。

で、先程のポストは何だったのか? 勘の良い方なら気づいたかもしれないが、ここが東京支社(左)と水戸支社(右)の境界だった。取手と藤代の間では電化方式の境界でもあり、「交直セクション」が設けられている。これは石岡市にある気象庁地磁気観測所への影響から大規模な直流送電が制限されているためで、つくばエクスプレスに交流区間があるのも同じ理由だ。なお、交直セクションはここから約2km先、藤代駅の手前にある。

この記事へのコメント

teru
2011年11月12日 00:34
こんばんは!雑草多い中、お散歩お疲れ様でした。
名撮影地の草刈ボランティア活動なんてあればやってみたいものです(^^;。

常磐線特急車両もまた置き換えが開始されるんですね。JR型が引退ですか・・・歳を取るわけですなぁ(^^;。

また、色に意味があったんですね(^^;露知らずでした。
2011年11月13日 06:12
おはようございます。しばらくご無沙汰してしまいました。

常磐線は仕事の行き帰りに時々乗っていますが、取手藤代間は線路沿いに耕作放棄地が多くなった気がします。いったん雑草だらけになってしまうと元の田畑に戻すのは手間がかかりますが、サイドビューを撮るにはよく手入れした田畑が欠かせないので農業がもっと元気であってほしいです。

E657系がデビューするまでまだ間がありますがどこで撮ろうかなぁ。
2011年11月19日 01:33
teruさん こんばんは。

撮影地の状況とくに草の生え方などは毎回訪れるたびに少しずつ違うもので、予定した場所でうまくいかないと意地になるべきかきっぱりあきらめるか、どちらも難しい選択であったりします。まあ、たいていムキになっていればどこかに道は通じるようですが(笑)
651系の鮮烈すぎるデビューも20年以上前なんですね。時の経過を感じます。
2011年11月19日 01:34
かけやまさん こんばんは。

ここ最近の線路脇の状況は、いわゆる「お立ち台」と呼ばれる名所であっても油断ならないですね。仰るとおり手入れされなくなった田畑の雑草が邪魔をするケースも少なからずあり、いろいろ事情はあるのでしょうが難しくなったなと感じるものです。そんなところでもスパッときれいに抜ける一点が見つかるだけで、それなりの充足感が得られるのも事実ですが。

E657系はまだ甲種をチラ見しただけです。建前上は営業運転に入ってからですが、はやく撮ってみたいですね。
teru
2011年11月24日 05:49
おはようございます。
651系と言えば、形式名中間が5となっていて、そちらも新鮮でした。もっとも四国の2000系といった従来にとらわれない命名もあり、国鉄ファンとしては、なんとも言えない苦い気持ちになったことを思い出します。

この記事へのトラックバック