潮騒が聞こえる

9月連休の最終日はひさしぶりに銚子へ行こうと思い、昼前に現着できるようなのりつぎ時刻を前夜調べておいた。JR総武本線の終点・銚子から出発する銚子電気鉄道は関東最東端の鉄道路線で、犬吠埼たもとの漁港・外川(とかわ) まで走る延長 6.4kmのミニ私鉄。銚子はNHK連続テレビ小説「澪つくし」の舞台でもあり、同社の車両もたびたび画面に登場した。

朝起きてみると7時半、予定では6時半に出発だった……直接の原因は夜更かししているせいなのだが、このところ週末になってもどうも気が入らないのはいけない。
さてどうしたものか。もう一度時刻を調べなおしてみると、今からでもお昼過ぎには着けるという結果が出た。それなら行くかと腰を上げて8時半に出発、横須賀・総武線で千葉へ行き、E257系特急〔しおさい〕に乗り換えた。

クハE257-502

クハE257-502

  • 総武本線 佐倉←物井 2010-4
  • D700, AF-S Niikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO250

房総特急で使用されていた183系電車の置き換えは、〔あずさ〕〔かいじ〕に投入されたE257系のマイナーチェンジ500番台で行われた。普通車のみ5両編成で、朝夕には2編成併結10両の全自由席特急、昼間の末端区間では普通列車で運転するなど、柔軟に使われている。
総武本線〔しおさい〕は1975年から成田・鹿島線〔あやめ〕とともに運転開始、1972年にデビューした外房線〔わかしお〕、内房線〔さざなみ〕とあわせて「房総エル特急」4兄弟を構成した (2002年にエル特急ではなくなっている)。大幹線の長大編成特急に比べ格下だとか、急行の単なる値上げという批判も受けたものだが、当時はATCを要した急行電車が乗り入れできなかった東京駅地下ホームから発車できたのは利点だった。
現在の房総特急はいずれも255系(〔あやめ〕除く)とE257系500番台で運転されている。高速道との競合で不振といわれるが、その整備状況あるいは東関東道・京葉道路の渋滞という事情もあってか、〔しおさい〕の利用率は堅調なほうに見える。こまめに停車するたびに東京あるいは千葉からの乗客が降りていく。

銚子電鉄はJR駅構内の片隅から発車する。すぐ近くはヤマサ醤油の醸造所で、銚電も原料などを国鉄との間で継走していた。貨車の牽引に活躍したミニ電機 デキ3 は現在も仲ノ町(なかのちょう) 車庫に静態保存され、銚電のマスコット的存在となっている。
入線してきた2000形は2010年に伊予鉄道からやってきた車両だが、前々身は京王帝都電鉄の京王線用2010系。旧型車両の更新に中古の京王3000系を導入しようとしたが断念、同系を導入した伊予鉄から押し出された車両を譲り受けた。1編成はクリーム地にショッピングセンターの側面広告をかけたラッピング車となっているが、のちに前面へ追加されたえんじの細帯は京王帝都電鉄のかつての標準塗色で、外川方クハ2050正面は往年の名車5000系を彷彿(ほうふつ) とさせる。
電車は1時間に上下2本あるので、一日乗車券「弧廻手形(こまわりてがた)」を使って行きつ戻りつしながら撮影。仲ノ町の車庫、観音駅のたい焼き、笠上黒生(かさがみくろはえ) 駅でのタブレット交換、外川の木造駅舎……小さいながらも密度の濃い鉄道だ。手形にはサービス券がついて、犬吠駅ではいまや銚電を支える屋台骨となった「ぬれ煎餅」1枚と交換できる。

デハ2002 調子電気鉄道

デハ2002

  • 銚子電気鉄道 海鹿島←君ヶ浜 2011-9
  • D700, AF Nikkor 35mm F2D, ISO250

醤油工場と家並みを抜け、関東でもっとも東にある海鹿島(あしかじま) あたりから車窓には畑が広がってくる。耕作する農家の方々の姿も目につき、帰りの電車に添乗していたアテンダント(客室乗務員) によれば、キャベツの栽培がこれからはじまるとのこと。今回は都合で入れられなかったが、犬吠崎灯台をバックに走る電車の姿も撮影が可能だ。

電車の通過を待っている間、正面からドドドドと鈍い音がずっと響いてくる。林の向こうが君ヶ浜、太平洋が大きく広がっている。銚子電鉄の車窓から太平洋が見えるのは一瞬しかないが、台風の余波で濁っていた。

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