変わらぬ秋

常磐線 E531系普通電車で茨城県のローカル私鉄、ひたちなか海浜鉄道へ向かう。あの日からほぼ半年が過ぎていた。県内の鉄道路線は津波被害こそ免れたものの路盤陥没や施設損壊などの被害が多発、もっとも早く復旧した常磐線も水戸・勝田まで運転再開したのは3月31日のことだ。
ひたちなか海浜鉄道湊線では金上(かねあげ)~中根間の築堤脇にあった溜池が崩壊し、大規模な路盤流失が発生。ほかの区間も多数の線路損傷を受けて全線運転休止を余儀なくされた。再開のめどが立たないという深刻な話まで耳にしたが、関係者の尽力によって6月に中根~那珂湊間が仮復旧。その後残区間も復旧工事が進み、7月23日に全線で運転を再開した。これとは別に金上駅の交換施設整備が昨秋完成し、那珂湊までの列車増発も可能となっている。

勝田駅で下車すると、涼しいというより肌寒いくらいの風が吹きぬけている。のりかえ改札口を抜けて単行ディーゼルカー キハ205に乗り込んだ。金額の多寡はともかく、乗車することは鉄道会社に対する支援のもっともわかりやすい形だと思う。
中根で降りて近くの直線区間へ。田んぼの稲刈りはもう終盤にさしかかっていたが、豊かに実る稲穂が黄金色のじゅうたんとなっている区画もあった。こうして見渡す限りでは前回訪れたときとまったく変わっておらず、それだからこそ何か胸に迫り来るものを感じた。風は相変わらず強く吹いて雑木林の枝葉を騒がしく揺らし、頭上低く流れる雲が露出を秒単位で変えていく。

キハ205 ひたちなか海浜鉄道

キハ205

  • ひたちなか海浜鉄道 金上→中根 2011-9
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

湊線の前保有者だった茨城交通は、国鉄キハ20系および同仕様の車両を集めていた。いま現役の4両はそれぞれ別の国鉄標準塗装をまとっており、土休日の運用車両は公式サイトにて予告されているので乗車・撮影の参考になる。
一般形標準色のキハ205は国鉄キハ20形そのもので、JR西日本に承継されたキハ20 522が水島臨海鉄道 (岡山県倉敷市) へ譲渡され(→キハ211)、さらに湊線へ移ってきた。水島時代に冷房化された同社国鉄形では唯一の冷房車なので、夏場の週末レトロ車両は基本的に同車が担当しているようだ。天井の扇風機にはJNRマークをレリーフにしたオリジナルと、「JR西日本」のステッカーを貼ったものが混在して出身を語る。類型車 小湊鐵道キハ200形との微妙な違いも見て取れようか。

キハ205 ひたちなか海浜鉄道

キハ205

  • ひたちなか海浜鉄道 金上→中根 2009-9
  • D700, AF-S VR-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G, ISO200

約2年前にも同じ時期に同じ場所で同じ車両を撮影していた。それじゃなぜ2回も出すのかと思うところだが、よくよくご覧いただきたい。窓割りや床下機器の配置が違っていて、じつは向きが反転しているのだ。この鉄道にはデルタ線も転車台もないのだが、どうやって転回したのだろう?
2009年にミキ300が導入され、引き替えに廃車されたキハ22 (223) は個人譲渡が決まって同年12月に搬出されたのだが、それに使用したクレーン車でキハ205の転回も行っていた。現在の国鉄形ではキハ205だけ向きが反対になっていたため、保守などの観点からこの機会に向きを統一したものと推察される。余談だが、下写真で右端だけ窓の形が違うのは、ここにもともとトイレがあったからだ。

やがて空はどんよりと雲に覆われ、帰途につくころにはキハ205の扇風機も止まっていた。もうそろそろ週末にもキハ22・2000が登板してくるだろう。

この記事へのコメント

2011年10月01日 16:15
こんにちは。

ひたちなか海浜鉄道湊線も全線の運転が再開していたのですね。
湊線には何度か乗りましたし、写真も撮りましたので、再開は嬉しいです。
今、茨城に来ていますが、見に行く時間はなさそうで、ちょっと残念です…。
2011年10月02日 01:03
静さん こんばんは。

茨城にお越しになっているのですね。東北の被害が大きすぎるため見過ごされがちですが、茨城県内とくに ひたちなか湊線の被害はかなり深刻と聞いたので、一時はどうなることかと心配しました。私にとっても、再開は非常に嬉しく思います。

復旧したら行かねばと機をうかがっていたら秋になってしまったわけですが、周囲の光景、豊かな実りもほとんど変わっていませんでした。問題の溜池跡も含め線路は元通りになっていて、ひとまず胸をなで下ろしたところです。(ただ、この後関東を襲った台風で那珂湊の木造車庫が被害を受けたという気になるニュースも…)
2011年10月02日 23:36
こんばんは。

ひたちなか海浜鉄道も様々な顔触れの気動車が勢揃いしていて、かなり気になっている路線です。
キハ205も国鉄標準塗装で雰囲気も満点ですね。JRでは既にキハ20系列が見られなくなってしまいましたが、最後まで残った大糸線のキハ52がいすみ鉄道へ、そしてこのひたちなか海浜鉄道でも見られるということで、関東の私鉄は魅力がいっぱいです。

先の震災により大きな被害を受けたものの、こうして多くの人々の努力で復旧したというのは本当に嬉しいことですね。
2011年10月03日 09:57
 ご乗車ありがとうございます。
 10月10日までは、団体貸切があり毎日旧型車両が運用されます。
 回送時には、一般乗車もできますのでよろしければばどうぞ。
 乗車可能なのは、勝田発16時36分が多いようです。
(吉田)
2011年10月05日 00:28
特急北斗さん こんばんは。

ひたちなか海浜鉄道は国鉄気動車のいろんな形態・塗装が見られ、走る風景ものびのびしていて、何回でも訪れてみたくなる路線です。国鉄形だけでなく、新型車両の塗装やミキ300も外せないですね。地震で大きな被害を受けてしまいましたが、多くの方々の努力によって復旧なったことは私も嬉しく思っています。

千葉はいすみ鉄道のキハ52も国鉄標準色、久留里線にはキハ30と、こうして見回すと関東にもまだまだ魅力ある被写体がそろっているなと思いました。末永く運行が続けられることを願うところです。
2011年10月05日 00:38
ひたちなか海浜鉄道 吉田様 コメントありがとうございます。

この度は非常に大変なことであったと存じますが、早期の復旧・営業再開を果たされて何より嬉しく思います。今後も折を見て訪問・乗車し、微力ながらも応援してまいりたいと思います。
耳より情報もお寄せいただき、誠にありがとうございます。

この記事へのトラックバック