上州の風に吹かれて

「ググッとぐんま」デスティネーションキャンペーン(DC) 開催中の群馬県、9月は「群馬鉄道月間」と銘打って県内の私鉄も参加したイベントが実施されている。県内を走る鉄道は、JR東日本と東武鉄道のほか、中小私鉄では上毛電気鉄道と上信電鉄、旧国鉄足尾線を受け継いだわたらせ渓谷鐡道。

県庁所在地、JR両毛線の前橋駅からレトロ調シャトルバスに乗ると5分で中央前橋駅。緑濃いケヤキ並木の道を歩いても15分くらいだ。この駅を起点とする上毛電気鉄道は、上毛三山のひとつ 赤城山の麓を走り西桐生まで25km、他線との接続駅は特急〔りょうもう〕も乗り入れる東武線接続の赤城のみで、両端とも単独駅というめずらしい路線だ。
同鉄道の目玉は、本線運転用としては現在日本最古の電車であるデハ101。バラスト散布やイベント向けに時折運転される日は、昔懐かしい釣り掛けモーターの高らかな響きを楽しむことができる。

クハ724 上毛電気鉄道

クハ724

  • 上毛電気鉄道 上泉→赤坂 2011-6
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO250

一般車は何度かの車両入れ替えを経て700型に統一された。京王電鉄から井の頭線3000系を一部先頭車化して譲り受けたもので、3000系は東急車輛製造が米バッド社のライセンス供与を受けて製造した、初期のオールステンレスカーだ。薄いステンレス板の強度確保と歪み隠しのため外板は「コルゲート」という蛇腹状の折り目がつき、光が当たると強く反射する一方でふっくら丸みを帯びた車体はやさしさも感じる。前頭部の上半分はFRP成型によるもので、京王時代は7色に塗り分けて「レインボーカラー」と称した。
18m級3扉の軽量な冷房車とあって、大手私鉄から退いた車両もローカル私鉄の車両更新にはうってつけの出物といえ、上毛のほかには松本電気鉄道(→アルピコ交通)、岳南鉄道 (静岡県富士市)、北陸鉄道 (金沢市)、伊予鉄道へ譲渡されている。あえて難点を挙げればワンマン運転には運転室と前扉が離れすぎるところだが、多くの会社でそうしているように扉付近に置いた運賃箱まで座席を取り払っている。
前面マスクの色は当初薄青緑(フィヨルドグリーン) だったが、のちに編成ごとに塗り分けるようになり、現在は8色の「レインボーカラー」。714-724編成は窓に魚類のイラストを正面と側窓に貼り付けた「はしる水族館」で、718-728は風鈴とアジサイやアサガオの造花を車内に飾った「風鈴電車」となっている。

商業の中心地にある県内最大のターミナル高崎駅。駅ビル「モントレー」は三つの山を意味する仏語からで、新宿経由で伊豆急下田へ走った臨時特急〔モントレー踊り子〕や、165系の新前橋色が通称「モントレー色」だったことを思い出す。
上信電鉄はJR駅構内の片隅、0番のりばから発車する。かつて製糸工業で栄えた富岡を経て、ネギとコンニャクイモの産地 下仁田まで34km、すこし手前には珍駅名・南蛇井駅 (→なんと読む?) がある。県内で完結する路線に「信」がつくのは、長野県佐久地方への延伸を目指していたからだ。高崎以外で接続する鉄道路線はない。
この鉄道の注目車両は「デキ」とよばれる2両の凸型電気機関車 (デキ1形)。大正時代にドイツから輸入された古豪は「上州のシーラカンス」とも称される。貨物列車の牽引機として長年活躍し、現在はイベント用として動態保存されている。一時運転を見合わせていたが群馬DCを前に修理され、ことし4月に本線復帰した。

クモハ153 上信電鉄

クモハ153

  • 上信電鉄 西山名→馬庭 2011-7
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO250

全面広告車が多いのも同電鉄の特徴で、産地と名高いことからコンニャク製品に関するラッピング車が2編成。それらに劣らず目立つ車両が、全身をシマウマ模様に装ったクモハ153-154である。富岡市にある「群馬サファリパーク」の広告で、上信線の各駅にも動物たちの顔写真が貼られて観光客を誘う。ただシマウマ電車に乗って最寄り駅の上州富岡で降りても、バスはないのでタクシーで向かうことになるが。
この車両は西武鉄道の801系だったもので、最近同社では西武から中古車を購入して自社の旧型車両を置き換えている。1編成は松本零士氏の代表作「銀河鉄道999」イメージのラッピング車両となり、この編成は「999号」として特定の列車に運用されている。

ところでシマウマの模様は縦縞? それとも横縞? 縞の向きは、学術的には頭を上、尻を下に置いた場合に見える模様の方向で決まるのだそうで、つまり「ヨコシマなシマウマ発見!」なんて騒ぐまでもないこと (CMでの話ですが) だった。ひるがえって鉄道やバス車両で一般的な横方向ストライプや上記ステンレスカーのコルゲートは、生物学的には縦縞だということに……。

この記事へのコメント

2011年09月21日 01:10
宮本さんとこも上信電鉄、しかも「南蛇井」も紹介されて・・・あら!リンクしてくださったのですね!ありがとうございます。お礼のコメントをと思いながら数日たってしまい、先にコメントいただいてしまいました(汗)
上信電鉄は始めていきましたが、なかなか楽しい路線ですね。しまうま柄、999、もちろんこんにゃくの車両も見ました!
しまうま柄、真横から見るとこんな感じなのですね。幾何学模様みたいで面白いです♪
2011年09月24日 11:08
さくらねこさん こんにちは。

上信電鉄、最近はキャンペーンがらみで訪れる機会は多いものの麓ばかり往復している状態です。終点まで行けば山間を走り、車両もコンニャク広告に999など小さいながらも見どころの多い鉄道ですね。古豪デキも先日撮れまして、のどかな沿線風景に似合いそうだと思ったものです。

警戒の意味で入換使用機の正面に規則的な虎縞(ゼブラパターン)を塗ったものはよくありましたが、こちらシマウマ電車は2両編成をよくみると模様がすこし違ったり、自然な模様が再現されています。
もうひとつ、上信線といえば外せないのが南蛇井ですので触れないわけには…(笑) また電車にゆっくり揺られて下仁田方面まで行きたいですね。

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