青い雷神

駅からそう遠くなく、しかし商業地でもない自宅周辺。この夏は節電につき夜は窓を開けてしのいできたが、ささやかに風が通り周囲も比較的静かなのが幸い。午後11時ごろ、その静寂を切り裂くように大きな風切り音が響いてくる。音の正体は、南武線から中央東線に向かう石油専貨を牽引するEH200形電気機関車だ。

いまでは通勤専業に見える南武線(本線) だが、もともと多摩川下流で採取した砂利や、氷川(→奥多摩) ・五日市で採掘される石灰石を川崎地区へ輸送する目的で敷設された。実際1998年までは奥多摩からEF64 1000番台牽引の赤いホッパ車が昼夜走っていたし、現在も立川~府中本町間は新鶴見信号場への中継ルートに利用される。それ以南は武蔵野線に貨物輸送を任せているが、貨物時刻表を開くと南武線経由の貨物列車も残っているのがわかる。
EH200形直流電気機関車、愛称「ECO-POWER ブルーサンダー (Blue Thunder)」。急勾配が連続する山岳路線向け電気機関車EF64、とくに基本番台(0番台)の取替えを目的に開発された。定格出力 4,520kW (30分定格 5,120kW) と1C1M制御によって、EF64が重連で牽引していた列車を単独牽引できる性能を持つ。試作機901号が2001年に登場、2003年から量産のはじまった同形はEF64基本番台に加え1000番台も順次置き換えていて、目的どおり中央東・西線~篠ノ井線、上越線で運用されている。

EH200-10

EH200-10

  • 上越線 後閑←沼田 2010-11
  • D700, AF-S VR-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G, ISO320

EH500につづき2車体式を採用したのは、JR貨物が旅客各社に支払う線路使用料の算定方法にあるとされる。ED75やEF64の重連だと2両通過となるところ、EH500や本形式は1両とカウントされるからだという。EH500と似た寸法と構成ではあるが、本形式の世代はひとつ新しくEF510 (レッドサンダー) が姉妹機にあたる。
EF200以来、形式ごとに異なるシルエットを持つJRFロコ。EH200も25度傾斜した くさび形の前頭部と、角々にスジがしっかり入った直線的な車体が特徴である。中央・篠ノ井線は石油輸送がメインだからか、それともスタイルの対比からなのか、同形はコンテナよりもタンク車牽引のほうが似合っている気がする。
寒冷地の峠を越える機関車は旧来から運転席窓上にヒサシがつき、彫りが深い表情が「山男」らしい。もちろんこれは単なる雰囲気づくりではなく、冬季にトンネル天井から垂れ下がるツララが窓に直接当たることを防ぐもの。国鉄時代はさらに窓全体を保護枠で覆い、いかめしい顔つきになっていた。そんな中、後ろ傾斜の平板一枚窓で上越線に投入しても大丈夫なのか……と心配する向きもあったようだが、いまのところ姿に変化はない。

道路の舗装工事かと勘違いしそうになる音は機器冷却用のブロアーファンが発生源で、その存在はよろい戸にホコリが円を描いていることで見た目もはっきり認識できる。EH500でも騒音が大きかったことから本形式は低騒音型を採用したといわれるが、それでもなお200~300m離れた位置から現物を見ずに接近のわかる車両なのだった。

この記事へのコメント

2011年09月12日 16:57
こんにちは。
コメントご無沙汰してしまいました。

ご自宅の窓から貨物列車が通り過ぎる音が聞こえるって、貨物好きには羨ましいです。
機関車の轟音の後に、貨車がレールを響かせて遠ざかっていく音って何だかいいですよね。
青い雷神という名にふさわしいEH200の轟音、聞いてみたいです。

2車体で1両とカウントされる形式、実は線路使用料によるものとは知りませんでした。
そう考えると、金太郎さんが活躍する路線も本数が多いですものね。機関車の置き換えは、こういうことも影響しているんですね。

遅ればせながら・・・記事200エントリーおめでとうございます。
独特な撮影スタイル、数々のご苦労が合ったことと思います。今後のご活躍、楽しみにしております♪
2011年09月14日 23:52
水無月さん こんばんは。
200回をお祝いいただきありがとうございます。苦労してるのかしてないのかはよくわかりませんが(笑)、これからもご笑覧いただければと思います。

きょうも窓から乾いた音とタンク車の奏でるリズムが聞こえてきました。ああ11時になるのだな…と思ったところで今の生活では何の区切りにもなってないのですが(笑)
先日たまたま帰りが遅くなって、ならば通過を見てみようと駅近くで待ってみたのですが、意外に静かな通過だったのは不思議です。ちなみにその中にはタキ43000形のトップ43000号も連結されていました。

線路使用料と機関車両数の話はなんだか屁理屈のような気もして、本当にそうか怪しかったりするのですが(苦笑)、JR貨物自身がH級機開発目的の一つに挙げたという話も聞きます。事実EF64の2両がEH200になれば軸数自体が減るぶん保線の面でも有効だと思いますし、その他にも1両として扱うことのメリット・デメリットをあれこれ勘案した結果だと考えられますね。
teru
2011年09月17日 17:09
こんにちは、好きな機関車の一つブルサン、やはり山系の機関車は良いものです。ツララ切りがあれば違った風貌になりますね。
2011年09月20日 23:28
teruさん こんばんは。

一枚ガラス(試作車除く)という機関車らしくないデザインの正面も特徴のブルーサンダー。最近は群馬に通う回数が増えているので、自動的にこの機関車を目撃する機会も増えていたりします。
ツララ切りがあればより「山男」らしくはなりますが、傾斜がこの角度だと相当大きくしないと…
2011年09月21日 01:16
ブルーサンダー!かっこいいです♪
まだまだプチ鉄道おたく(笑)だったころ、貨物にも疎く機関車も違いがわかっていませんでした。そのころ松本駅近くに停まっていた初めて見るこの機関車に、「なんてかっこいい機関車があるんだろう♪」と思ったのを覚えています。ほんの3-4年前ですけど(笑)
色違いのレッドサンダーが京都にもやってくるようになり、出会うと喜んだりしたものです。レッドサンダー、一時期台数が増えましたが、その後あんまり増殖していないような?

2台で1台の新型機関車、使用料がかかわっていたのですね。
2011年09月24日 11:06
さくらねこさん こんにちは。

現在のところ東日本地区だけで見られるブルーサンダー、すらっとした姿はなんだかすごく速そうに見え(笑) 国鉄形とは違った魅力を感じます。線路使用料という話もあるのでしょうが、EF64の中央・上越運用は重連が基本になっていましたから、それの置き換えとしてH級を選択するのはある意味妥当なのだと思いますね。

関西地区で見られる兄弟機のレッドサンダーは増備のペースが遅く(運用距離が長いこともあって)、まだEF81による列車も多いですね。そんなことを言っているうちに急激に置き換わったりするので要注意ですが。

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