房総を行く

JR内房線に乗って千葉市のすこし南に位置する市原市へ、中心の五井(ごい) に降りると迎えてくれるのがクリームと朱色に塗られた気動車たち。カラカラと乾いた音を立てるエンジンがやがて吹き上がり、列車は房総の丘陵地へと進路を向ける。
小湊鐵道は五井から上総中野(かずさなかの) まで約40kmを走る全線非電化路線。久留里線と並び東京から最も近いディーゼルカー運行区間だ。しかも同社に在籍する気動車は、いまや骨董品ともいえる縦型ピストンのDMH17形エンジンを搭載。この音だけでも聞きに来る価値は十分にあるかと思う。

キハ201 小湊鐵道

キハ201

  • 小湊鐵道 五井←上総村上 2009-2
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200-0.3

現在籍車両はキハ200形のみ。国鉄キハ20系列の基本設計を流用しており基本スタイルも共通するが、幕板の朱色がなく (キハ30系の塗り分けに相当) 正面の前照灯が左右2灯であること、側窓配置が若干異なり室内もオールロングシート (トイレ無し) であるなどの相違が見える。一部車両はなつかしいプレスドアであったり、尾灯が後部反射標識にもなるタイプだったり、とJR線ではほとんど見ることのできなくなった国鉄の残り香が今もただよう車両だ。春には菜の花と桜を一緒に撮れるスポットもあって、ロケーションの良さからも一定の人気を保っている。
小湊(こみなと) は外房の安房鴨川近くにある町だ。内房の路線がこの名前を名乗る理由は、同社が当初そこまでの路線建設を目指していたからだった。財政や戦時事情などの理由で上総中野から延伸できず、国鉄木原線と接続して名目上は房総半島横断路線を構成している。この木原線というのが、大原から大多喜を経由し久留里線の上総亀山へ接続する予定で、「木」とは木更津のことだった。
木原線は第一次特定地方交通線に指定され、1988年に第三セクターいすみ鉄道へ転換。もしかしたら交通の要衝となっていたかも知れない上総中野駅は現在無人で、両側からやってきた (五井からはわずか4往復) ディーゼルカーが時折並ぶほかは静かな駅である。

いすみ201 いすみ鉄道

いすみ201

  • いすみ鉄道 国吉→新田野 2009-7
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

いすみ鉄道の沿線にも花の見どころが多い。その代表が菜の花だ。くわえて4月は桜、6月はアジサイが線路脇を彩り、その中を走る黄色くかわいらしい車両もじつに絵になる。
いすみ200型は当初セミクロスシートのいすみ100型として登場し、塗色は菜の花をイメージした鮮やかな黄色いに緑帯。車両は小型のいわゆる「レールバス」タイプで、各地の第三セクターで続々登場した頃はその「軽さ」を嫌う人も少なくなかったろうが、経年による車両更新が進んだ現在ではむしろ貴重なものとなってきた。現在では各車両に「ムーミン」キャラクターのイラストが貼られている。
沿線にこれといった観光地が「ない」ことを宣伝したり、前代未聞ともいえる施策や手法には賛否両論あることも事実。しかし一時は出資者の千葉県から「経営改善なければ廃止検討も」という通告まで受けてしまった同社は、そんな増収・集客策に一定の効果が認められ、存続することとなった。
そして同社いま一番の注目は、昨年大糸線での運行を終えたキハ52形の導入であろう。スカ色タイプ (旧標準色) のキハ52 125が選ばれ、新標準色のツートンに塗り直されて4月29日から急行列車として運転を開始している。

この記事へのコメント

2011年07月27日 08:38
おはようございます。
ご無沙汰しています。

大震災が起こる前、息子が房総のほうへ行くといっていたので、私も一緒に行って、この小湊鐵道やいすみ鉄道を見てこようか…と予定していました。
ですが、予定日の前日にあの大震災…。
結局、行くことはできませんでした。
こんな気動車が走っているのですね。
見たかったな~。
見せてくださって、ありがとうございます。
2011年07月27日 21:33
こんばんは。

小湊鉄道、いすみ鉄道ともに千葉は房総半島にある鉄道でしたね。
ローカルな雰囲気に加えて、使用されている気動車もまた古い車両で、本当に味のある鉄道だと感じます。
また、いすみ鉄道には現在キハ52 125もいるのでしたよね。昨年大糸線でこのキハ52のラストランを見に行き、この125番も撮影できたのでとても感慨深いものがあります。

いつかこの両鉄道を訪れて、撮影に乗車を楽しみたいです。
2011年07月30日 01:13
静さん こんばんは。こちらこそご無沙汰しております。

今年春に房総方面へ行かれる予定だったのですね。しかしその前日があの震災の日だったとのこと、私自身もその影響はいまだに引きずっている感じで、なかなかあちこち出かけたいと思うものの意識のどこかが切れて回復しないのも事実です。

春の早い房総半島、3月前後はちょうど菜の花が盛りとなる時期です。その終盤には桜へとバトンタッチして、ふたつの彩りを一緒に味わえる鉄道路線となります。今回は画像でその雰囲気のごく一部を味わっていただけたようで何よりですが、次回お越しの際はぜひ実際にお乗りになってご堪能いただければと存じます。
2011年07月30日 01:18
特急北斗さん こんばんは。

小湊鐵道といすみ鉄道、どちらも首都圏では希少となった非電化区間で、味わい深い路線といえます。共通企画の「房総横断記念乗車券」は私鉄では珍しい途中下車可能な片道乗車券で、一日かけてゆったりと旅ができます。
沿線の撮影ポイントも豊富ですし、国鉄気動車を今に伝えるキハ200とレールバス、そして大糸線からのキハ52も登場と車両の見どころもありますので、ぜひこちらへもいらして楽しんでください。
2011年08月06日 20:59
こんばんわ!

キハ201って
こんなとこにもいたのですね。

201って数字は
いろんな車両についてますね。

でも京葉線、中央線、札沼線の201は
ここで出すには畑違いかな(^^;
2011年08月09日 23:40
Anさん こんばんは。

200形の1号車としてではありますが、関東にもいまだ201健在です。200系や200形という車両は一見たくさんありそうですが、私鉄でも最近3ケタの形式とか系列はそれほど多くないようです。
北海道の201といえばパワーの有り余るDC、学園都市線電化後の処遇が少し気になるところです。その201系気動車に201系電車も撮ってはいるんですが(笑)、後者はもう関東からいなくなってしまったので、さてどう取り上げたものでしょうか…

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