イブ■□タマ

鹿児島中央を起点に薩摩半島を周回し、カツオ漁港の枕崎へ向かう指宿枕崎(いぶすきまくらざき) 線。本州南端の鉄道路線で、開聞岳を仰ぐ西大山がJR最南端の駅となる。閑散区間のため鉄道での訪問にはハードルが高いが、やはりこの駅には列車から降り立ちたいところ。
途中の指宿――「砂むし」で知られる指宿温泉の玄関口までは比較的列車本数も多い。1992年にキハ200形の快速〔なのはな〕がデビュー、新幹線開業の2004年から指定席車両を連結した特別快速〔なのはなDX〕が運転されていた。これを置き換えて3月改正で新設された列車が観光特急〔指宿のたまて箱〕、愛称「いぶたま」。薩摩半島南端が浦島太郎伝説の残る地ということで、この名前となった。キハ47形2両を種車に車両内外に遊び心があふれるデザインは、いうまでもなく水戸岡鋭治氏の手によるものだ。
鹿児島まで来たからには、やっぱりコレは外せないと思っていたところだが、幸い指宿→鹿児島中央の指定席が取れた上に、鹿児島から指宿までは車を使えることになった。というわけでほぼ中間地点の喜入(きいれ) へ。喜入といえば日本の石油需要を支える備蓄基地、列車からも海越しに巨大タンクの並ぶ姿を見ることができる。

南九州には黒い特急白い特急が走っている。こんどは白と黒を塗り分けた特急だ。塗りわけ……というと上下にするのが常識だがこの列車は前代未聞、正面の床下スカートから屋根上のクーラーに至るまで、白と黒を真ん中で塗り分けているのだ。左右でデザインがまるきり異なる車両といえば伊豆急行2100系「リゾート21」が思い出されるが、衝撃という点ではやはりこちらが上回るだろうか。
もちろん両側から狙ってみた。あいにくの雨模様が惜しい。

キハ47 8060

キハ47 8060

  • 指宿枕崎線 喜入←中名 2011-5
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO400

編成は白い側面が海側となる。客室内は海を向いたひとり掛けの座席が並び、錦江湾のパノラマそして晴れていれば桜島の姿を存分に楽しめる。前述したリゾート21も外を向いたベンチシートが設置されていて、これも列車から海を眺めるための設計だった。
車内に木材を多用するのも既存車両と同じ。ステンドグラスをはめた飾り棚の中にはたまて箱も置かれ、そんな小物たちを探すのも楽しい。車体横に大きな玉手箱を配した部分は洗面所とサービスコーナー。ワンマン運転だが客室乗務員が車内サービスを行う。
出入口にも仕掛けが。各車連結面寄りのドアが開くと、玉手箱を開けたときのような煙で覆われる。正体は扉上部の屋根に設置したミスト発生装置から出る霧で、これも「いぶたま」らしい演出のひとつだ。ただ風がちょっとでも吹くとあおられてしまい、なかなか思い通りの画を撮るのは難しいかも……。

キハ47 9079

キハ47 9079

  • 指宿枕崎線 中名←喜入 2011-5
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO400

「いぶたま」は1編成が片道約1時間の行程を1日3往復する。車号標記は運転台下の小さな文字になってしまったが、2両しかいないので特定は容易。なお検査時には現在3両ある〔はやとの風〕車が1両単位で代役をつとめ、このとき海側は白+黒となる。
腰に締めた金色のラインはゆるいカーブを描き、そしてくるりと一回転。この通称「つばめ返し」は新幹線800系の増備車で登場した。スピード感を前面に押し出す新幹線にくねくね曲がったラインというのも、ちょっとミスマッチではある。3月から新設の新八代~宮崎間高速バス「B&Sみやざき」にも同様の「つばめ返し」があり、カーブラインは人吉市内周遊バス「さるく人吉」、山中湖の水陸両用バス「YAMANAKAKO NO KABA」でも使われていて、水戸岡氏最近のお気に入りのようだ。



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