みんなで半分こ

「電車」の英語略記として日本でよく知られるのは EC (Electric Car) だが、ほかに EMU (Electric Multiple Unit) という呼び方もある。複数の電動車ユニットをまとめた編成という意味で、動力分散方式が発達した日本の電車にふさわしい言い方といえる。
かつての電車は1両単位の電動車 (運転台つき) を需要に応じて連結してきたが、それが長い編成で固定されるようになると付随車の数が増えだした。車両の価格・重量・消費電力・保守点検の手間などを考えると、電動車とか運転台の数をむやみに多くしないほうが経済的だからだ。新幹線や急勾配区間、地下鉄などを除くと、電動車と付随車の比率「MT比」は国鉄私鉄問わずおよそ半々が標準的だった。

クモハ223-2096

クモハ223-2096

  • 山陽本線 魚住→大久保 2011-5
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

1980年代からVVVFインバータ制御が普及すると電動機の出力が一段と向上し、ステンレスなど車体の軽量化もあいまって、より低いMT比でも高速かつ高加減速の運転が可能となる。JR西日本ではVVVFを本格採用して以降、出力200kWを超す強力モーターを装備した電動車1両が2~3両の付随車を牽引するようになった。現在アーバンネットワークの主役である223系1000・2000番台は8両編成の場合3M5T、207系は3M4Tとなる。
ところが2005年、207系に続く通勤タイプ車両として登場した321系では、一転7両編成中6両がクモハ・モハ。6M1Tとはやたら高MT比な編成にみえるが、2台車がそれぞれ電動台車と付随台車という0.5Mユニット方式を採用しており、実質的には3M4Tといえる。

クモハ321-7

クモハ321-7

  • 福知山線 道場←三田 2010-12
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO400

なぜ半分電動車なのか? に対する答えのひとつは冗長化、つまり故障への耐性を高めることだ。
101系から国鉄時代の電車は2両を1ユニットとして、制御装置1個が8個モーターを動かす。これを"1C8M"というが、装置が故障すると2両分の動力が一気に失われてしまう。VVVFの普及とともにモーターの個別制御化が進み、たとえばE231系は2両ユニットで1C4M×2だが、321系はそれをさらに推し進めて1C2Mを6両に分散した。こうすれば運転途中に1両の装置が故障したとしても他の車両でバックアップして、通常の運転を確保できることになる。
このほかには車内騒音などの偏りを平準化する目的もある。実際、電動車と付随車で車内に響く音がまるで違う形式もあったりするから、その考え方もある意味納得だ。騒音源が増えることに対しては、床材の改良などで対応しているとのこと。

クモハ225-5

クモハ225-5

  • 山陽本線 魚住←大久保 2011-5
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

この方針はその後の同社在来線電車にも受け継がれ、2010年に登場した近郊タイプの225系、北近畿ビッグX向け新型特急287系も全車「半電動車」で設計されている。287系では半室グリーン先頭車「クモロハ」という称号も登場することになった。
223系のなめらかな曲面からちょっとキツめな表情となった正面デザインの変更が一番目につくところだが、車体構体の強化に伴うものだろうか、側面の窓割り付けも変更された。屋上の集電装置もシンプルなスタイルに。JR西はかなり最近まで下枠交差型パンタグラフにこだわってきたが、125系と683系4000番台からシングルアームに舵を切った。

ちなみに3月に全線開業した九州新幹線を走る 800系6両・N700系8両いずれも全電動車だが、これは新幹線として随一の35‰(1000分の35) 勾配が存在することに対応して台車はすべてモーターつき。その急坂は博多から乗るとすぐに体験でき、博多総合車両所を過ぎるところからぐんぐん登り、あっというまに遠くの市街地を見下ろせるほどだ。

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