Take the "A" Train

「A列車で行こう」。ジャズ・スタンダードナンバーの代表にあげられる一曲、また1980~90年代にパソコン用鉄道シミュレーションゲームとして一世を風靡した (かくいう私も一時期ハマったもので) タイトルでもある。
今秋、熊本の三角線にJR九州の新たな観光特急が走り出す。その名も〔A列車で行こう〕。三角(みすみ) は熊本市の南西に位置する宇土(うと) 半島の先端にある町で、天草五橋または観光船などで向かう天草諸島の玄関口だ。
三角線に特急が走るのは初めてのこと。天草(Amakusa) へのアクセス列車として、また車内にバーを備えるなど大人(Adult) の雰囲気を重視した列車ということで、「A列車」の名を冠することになった。ちなみに本家の「A列車」はニューヨーク市地下鉄の一路線(急行運転) であるから、正確には"A路線"というべきだろうか。水戸岡氏の手により既存車両をガラリと改装という手法は今回も同じで、今回の種車はキハ185系となる。

キハ185-20

キハ185-20

  • 予讃線 伊予平野←西大洲 2008-9
  • D700, AF Nikkor 50mm F1.4D, ISO200

ところでこのキハ185系、もともと九州にはいなかった。
1986年、分割民営化を翌年に控えた国鉄は最終年度の新製車両を北海道・四国・九州へ重点的に配備した。北海道にはキハ54形500番台・キハ183系500番台が、九州にはキハ31形が投入されている。
キハ185系はキハ54形0番台・キハ32形とともに四国へ投入された。当時の四国島内でまだ主役だった急行列車の置き換えを目的としたものだ。すでにキハ181系の特急列車が走っていたけれど、185系はそれとの連結はまったく考えず、最短2両から1両単位で編成を組めるようにした。ステンレス車体に直噴型エンジン2基を搭載して走行性能を向上させる一方で、空調機器などにバス部品を使用、その電源も走行エンジンから取るなどして、コストの削減にもつとめている。先頭車後部にあった電源用機械室を撤廃し、短編成でも定員を最大限確保できるようになった。
登場当初はモスグリーンの腰帯を締めていたが、分割民営化後はJR四国コーポレートカラーの水色帯に貼り替えられた。現在ではオープン型車両キクハ32形と併結したトロッコ列車用の2両が緑帯に戻されている。

キハ185-8

キハ185-8

  • 肥薩線 西人吉→人吉 2010-10
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

その後JR四国は世界初の制御振子気動車TSEを実用化した2000系で、予讃・土讃線特急列車の高速化をすすめていく。そこで余ったキハ185系の一部が、同様にキハ58系急行の刷新を検討していたJR九州に譲渡され、久大本線〔ゆふ〕豊肥本線〔あそ〕の両特急となった。車両外装はビビッドな赤を基調とし、内装は485系RED EXPRESSなみの黒で締めている。
同系は九州新幹線部分開業での特急網再編を基にリニューアル、外観はさらに赤の面積が増加し、〔九州横断特急〕〔くまがわ〕用車は言われなければステンレス車とはわからないだろう。一方で内装は木をふんだんに使っており、新型車両なみの雰囲気だ。車掌乗務を廃止した「ワンマン特急」だが、客室乗務員が車販はじめアテンダント業務を担当し、見かけだけでない旅の演出がなされていることも忘れてはならない。
〔ゆふいんの森〕や新登場〔あそぼーい!〕の陰に隠れがちな存在だが、実は「お召列車」の栄誉を担ったこともある185系、四国・九州の軽快特急としてこれからも活躍してくれるだろう。

この記事へのコメント

2011年05月29日 13:35
こんにちは。

一枚目の旧塗装のキハ185の前に繋がっているのはキハ58でしょうか?
四国では普通列車用の3000・3100番台というのもいるそうで、この顔立ちで普通列車と言うのも新鮮な感じがします。

「A列車で行こう」、このネーミングには本当に驚かされましたね(笑)
一瞬何のことかと思いましたが、そのまま列車名になるとは思ってもみませんでした。
九州ではキハ185も一般の特急から今後は観光特急と様々な使われ方をされていますね。一度真っ赤なキハ185も見てみたいものです。
2011年05月29日 22:21
特急北斗さん こんばんは。

キハ185-20の右につながっているのはキハ65でした。引退する直前に、〔富士〕乗車のため九州へ行く途中で無理矢理立ち寄ったときの一枚です(笑) 予土線トロッコ列車(左がキクハ32) の送り込み回送にたまたま出くわしたのでした。
たしか185系は〔あそ〕〔ゆふ〕のほうが先に乗ったと思います。普通列車専用3100番台にはまだ乗っていなかったかな…… 四国にはこのほか「ゆうゆうアンパンマンカー」もあって、主役ではありませんがいろいろな場所と列車で見られる車両ですね。

新列車名〔A列車で行こう〕という名前にはちょっと驚きましたが、考えてみるともう〔指宿のたまて箱〕や〔あそぼーい!〕がありますから(笑) 乗って楽しい列車であることは間違いないと確信しており、今後も九州の列車からは目が離せません。

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