ベネシャン・ブラインドの謎

車両撮影をしていて、これは撮っておきたいと願いつつ叶わなかった系列・形式は山ほどあるけれど、そのひとつに国鉄381系がある。……と書くと、381系なら今でも撮れるだろうとツッコミが予想されるところだが、撮りたかったのはその窓、正確には窓の中にあるモノだった。

ブラインド窓表題のベネシャン・ブラインド、金属製の横桟(スラット) が上下あるいは角度を変えることで採光を調整する、遮光器具の一種。「ボス」が指を差し込んで外をのぞき見るアレだ。国内ではブラインドというとこれという認識が広く、ここでも以後ブラインドとするが、国鉄の車両で窓カーテン代わりにブラインドが採用されたことがある。サシ181形100番台からの在来線食堂車、581・583系、そして381系の客室窓がそうだった。
この窓はブラインド装置を組み込んだ二重窓ユニットになっていて、ガラスの間隙をスラットが上下する仕組み。車両の揺れでガラスを傷つけないように、両端はワイヤーや溝で拘束されていた。
上げ下げは乗客自身が窓の上にあるハンドルを回すことで行う。でもここで疑問が……。当時の写真を見ると上下は当然のことだがスラット角度も様々。家庭用のものは上げ下げのヒモに加え角度調整用のヒモやポールがあると知っていたが、ハンドルひとつでどうやって両者を調整するのだろうか?
1987年夏、北海道ワイド周遊券を手に〔ゆうづる〕583系の下段寝台へ乗りこんで、すべてがわかった。入線時は全閉の状態、そこでおもむろにハンドルを右へ回す。するとスラットが開き、水平になったら全体が上昇しだす。逆に左へ回すとスラットは閉まり、一番閉じた状態になったら全体が下降する。「あそび」の部分で角度が自由に決められたのだ。

クハ381-137

クハ381-137

  • 山陰本線 安来←荒島 2008-12
  • D700, AF-S VR-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G, ISO640

食堂車は国鉄末期にほぼ廃止され、室内が安っぽく見えるとか保守に難があるなどの理由で、残存車のブラインドもほとんど撤去されてしまった。JR西日本でつい最近まで現役だった419系 (←583系)、現在も残る583系・381系とスシ24も、早々に普通の横引きカーテンへ取り替えられている。
そんな中でJR東海の波動用381系はブラインド装備のまま残っていて、最後の1編成は連休などに臨時〔しなの〕として大糸線の白馬へ走っていた。ある冬の日に狙ってみたのだけれど、あいにく現地は氷雨模様、撮れた写真の中にブラインドを下ろしたものは見当たらない。次回こそと思っていたらあっさり廃車され、撮る機会を失ってしまった。

クロ381-13

クロ381-13

  • 大糸線 一日市場←梓橋 2008-1
  • D200, AF Nikkor 50mm F1.4D, ISO160

クロ381形10番台はJR初期に流行った特急パノラマグリーン車のひとつ。サロ381を種車に運転台と展望座席をくっつけたもので、加工の難しいといわれるアルミ車体での珍しい改造例 (前頭部は鋼製) だった。前部パノラマ室はカーテンだが、後部はブラインドを含め種車のインテリアをそのまま残していた。

調整ハンドル3月に名古屋・金城ふ頭にオープンしたJR東海「リニア・鉄道館」、連休で九州新幹線へ行く手始めに訪れてみた。車両展示の数では大宮の鉄道博物館に匹敵する規模で、その中にクハ381-1とクロ381-11がある。前者は車内見学もできるというので個人的に注目のひとつだったが、残念ながら…いや当然というべきか、一般客の立ち入り可能なエリアではハンドルがカバーされてブラインドを動かすことはできなかった。見たところ装置は撤去されていないようなので、どれかの窓で降ろした状態にしているといいのにと思う。
門司港の九州鉄道記念館にあるクハネ581-8 (←クハ715-1) では、窓のひとつでブラインドが下ろされているようだ。前回訪問時に気づかなかったのが、ちょっと口惜しい。

この記事へのコメント

2017年06月09日 23:57
初めまして。
6年前の記事なので、すでに疑問は解消しているのかも知れませんが、ベネシャインブラインドにおけるルーバー角の調整について。
ベネシャインブラインドはハンドルを左に回すとゆっくりと降下して締まり、右に回すと上昇して開きます。
ハンドルを左に回す時にはルーバーが立った状態(鳥の羽が重なったような状態)となって降下し、右に回すとルーバーが水平になって上昇します。
ハンドルを回すとき、逆回転させるとまずはルーバーの角度が変わり、続いてブラインドが昇降するイメージです。

このブラインドですが、初めのうちは楽しいのですが、座席を立たないと操作できない上、開閉に多大な手間が掛かるため評判は宜しくありませんでした。
また、金属板がかすかに擦れる音がするのも耳障りなものでした。

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