残照

九州唯一の大手私鉄、西日本鉄道(西鉄) の主要路線である天神大牟田線。特急の登場は1959年で、鹿児島本線の急行や特急〔有明〕と長年覇を競いあってきた。来年3月の九州新幹線全通で早朝・深夜以外の鹿児島線特急が全廃となるため、今後県南の都市・大牟田へのアクセスは新幹線と西鉄特急が牽引することになるだろう。
西鉄の初代特急車1000形 (1957~2001) は当時の標準色だったクリーム・茶のツートンでデビュー。1959年の特急運転開始を機にブルーの車体に黄色い帯という専用色に装いを改めた。その後継に1973年から製造されたのが2000形で、料金不要の列車としては九州初の冷房車でもある。黄色い車体にくっきり太い赤帯があざやかな印象で、車内は2ドアの間に転換クロスシートが並び、名実ともに西鉄の看板的存在となった。
2000形の運転台は客室から一段高い壇上にある。運転席から遠く広く見渡せることは、高速運転の安全には欠かせない要素。一見窮屈そうな運転台であっても、フロントガラスをワイドにしたり、のぞき窓を開けるなどして運転士の視野を確保している。そのなかで本形式の手法は実直かつユニークなもので、運転席が正面中央に置かれ見晴らしはとても良い。路面電車でなら珍しくないが、高速電車では異例だろう。もっとも最近の新幹線は運転台がキャノピー式で、運転席もほぼ中央まで寄ってきているのだけれど。
新型特急8000形登場のあと2000形は急行を中心に充当され、乗降をスムーズにするため中央ドアが増設された。転換クロスシート部は残され、同社初のステンレス車となった最新3000形にも受け継がれている。

ク3510 西鉄

ク3510

  • 西鉄天神大牟田線 端間→味坂 2009-8
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

6編成が製造され四半世紀の間活躍してきた2000形も老朽化が進み、3000形の増備と入れ替わりに順次廃車される。今春からは定期運用を外れ、そして10月に最後の1本が引退と発表。福岡に住んでいた私にとって西鉄特急・西鉄電車の象徴はいまでもこの形式で、当時あこがれていた車両を見る機会はこれが最後、なんとかとどめておきたいと現地へ向かった。
筑紫(ちくし) 付近でコスモスを見つけ、一緒に撮ってみようかと下車して狙う。と気づけば久留米・花畑までの運転はあと1往復 (その後筑紫まで片道)。編成・車両写真を撮りに端間~味坂間の平野へと急ぐ。惜別企画として、特徴的な前面が登場時の旧社紋入りデザインへ戻されているので、その表情もちゃんと収めておきたい。

ク2026 西鉄

ク2026

  • 西鉄天神大牟田線 端間←味坂 2010-10
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO1000

下り列車が通過するころ日照はもう真横にちかい角度だった。そんななか踏切の警報機が順番に鳴りだし、定期の急行電車として走る2000形が迫る。一時期は特急としてその性能を誇った車両、引退とは思えないほどの健脚ぶりを見せつけ一気に通過した。
返しの上りは西側から狙う。通過するほんの直前に太陽は遠くの山に隠れてしまったけれど、茜色に染まった空が車体をやわらかくつつんでくれた。



◆2010年の新規記事は今回で終了いたします。

この記事へのコメント

2010年12月31日 14:53
こんにちは。

刻々と迫る日没、そして本当に日没となり露出がなくなったときって撮っていると露出でどれを捨ててどれを選択するかけっこう悩みますよね。
そんな中、僅かな残照で茜色に染まる車体がなんとも言えない柔らかさというか優しさを感じます。
強い光線でコントラストがはっきりしているのもいいですが、こういう柔らかさも捨てがたいものだと改めて思いました。

さて、今年も弊ブログへたくさんのご訪問をありがとうございました。
来年もまたよろしくお願いいたします。
どうぞ良いお年をお迎えください。
2010年12月31日 19:48
こんばんは。

爽やかな色と暖かい色の列車ですね。
九州は近いわりには、修学旅行でしか行ったことがないので、いつか行ってみたいと思うのですが、なかなか行くことができません…。

今年もいろいろ教えていただいて、ありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。
よいお年をお迎えください。
2010年12月31日 21:16
加藤さん こんばんは。

夕暮れ時は露出が刻々と変わり、また思いもかけない影がかぶったりして、なかなか難しいところですね。そんななかで日没直後は、空に残る明るさが被写体を優しい色で照らしてくれる、ほんのわずかな時間。ちょうどそのとき、黄色い車体がわずかに茜に染まって通過していきました。
晴天順光のコントラストもいいものですが、こういった時間も大切に撮りおさめていきたいなと思います。

こちらこそ、ことし一年のご訪問まことにありがとうございました。来年もいっそうのご活躍をお祈り申し上げ、またよろしくお願いいたします。
2010年12月31日 21:19
静さん こんばんは。

西鉄電車の一般車両は当時は水色に赤の帯、特急に使われていたこの車両だけが黄色い車体でした。黄色は筑後平野の実りをイメージしたものと聞きますが、そんな理屈を抜きにしてこれこそ特別な車両だという存在感が伝わり、子供心にとてもまぶしく感じたものです。
九州の鉄道車両はJR九州だけでなく魅力的なものが多くありますので、ぜひ足を運んでみてください。来春は新幹線が開業して、南の方にもより行きやすくなりますので(笑)

拙い解説ではございましたが、ことし一年お付き合いいただき、こちらこそありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。
2010年12月31日 22:20
こんばんは。

2枚目の電車は、10月で引退してしまった車両なのですね。
黄色い車体に赤色の帯、順光だとその色あいは鮮やかなのでしょうね。
淡い光に包まれた残照の中では、とても優しい色あいに見え、茜色の空との組み合わせが素敵です。最後と聞くと、何だか哀愁も感じてしまいます。

今年もこちらで色々と勉強させていただき、ありがとうございました。
鉄道誌でサイドビューの写真を見るたびに、宮本さんのお写真では?とお名前を探すのも、毎月楽しみだったります。
2011年も宮本さんのご活躍をお祈りしています。
来年も宜しくお願いいたします。どうぞ良いお年をお迎えください。
2010年12月31日 23:26
こんばんは。
私にとってはなじみ薄い民鉄のカットですね。

私は民鉄の車両の知識は乏しいのですが、お写真の車両の世代の遠さは非常に感じられる一枚です。
下の古い車両の雰囲気に残照がとても綺麗に映えていていいですね。

今年もいろいろな車両のことについて学ばせていただきました。
また、幣ブログにお越しいただきましてありがとうございました。
また来年もご活躍をされることをお祈りいたします。

最後ではありますが、年末のご挨拶が遅れまして申し訳ございませんでした。
2011年01月03日 01:55
水無月さん こんばんは。
年が明けてからのお返事となりましたが、2011年もよろしくお願いします。

この2000形電車は当時西鉄のスターで、黄色に赤帯という非常に目立つ格好。福岡にいても西鉄特急には当時乗れる機会も少なかったもので、名実ともに看板列車として颯爽と走る姿はあこがれの的でした。時が流れその車両も10月の運転で引退してしまうと聞いて、最後の記録と撮りに出てしまいました。
最後となるショットは夕日が山の向こうに落ちてしまった時間だったわけですが、その残照がつくる空の色がとても印象に残ったので、空を多めに取り入れてみた次第です。なんでもない夕暮れ時かもしれませんが、最後と言われるとすこし寂しく感じてしまいますね。

こちらこそご訪問ありがとうございました。またご期待も下さり誠に恐縮です。これからもこんな感じで続く予定ですが、引き続きお付き合いのほどよろしくお願いします。
2011年01月03日 01:57
785@NE-501さん こんばんは。
年明けになってのお返事となりました。2011年もよろしくお願いいたします。

お住まいから遠く離れた地方の鉄道となると、なかなかなじみの薄いところとは存じますが、当方いろんな車両を節操なく撮ってあれこれ書き連ねておりますので、何かのご参考にしていただければ幸いです。
新旧車両を並べてみるとその世代の違いがはっきり見て取れますよね。引退前日、最終の急行行路となったときに日没の時間となって、残照の中をゆくやわらかい感じの写真となりました。ご高評いただきありがとうございます。

こちらこそいつもご訪問ありがとうございます。ご期待も下さり恐縮です。引き続きお付き合いのほどよろしくお願いします。

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