ワム!

東海道新幹線から富士山が見える新富士付近にさしかかると、同時にあちこちの煙突から白い煙がもくもくと立ち上がる光景が飛び込んでくる。これは製紙工場のもので、精製で大量に使われる水が熱せられ放出されている。富士山の豊富な伏流水に恵まれ、静岡県富士市は紙の街として栄えてきた。
この製紙工場からの出荷など、紙製品の輸送に使われている貨車がワム80000形。コンテナが主流となってきた国鉄後期の貨物輸送では、1両単位で輸送する「車扱貨物」の主力を担った2軸有蓋貨車である。

かつての貨物列車といえば、機関車の後ろにワム・ワラ・トラ・タム…と雑多な貨車が不規則に連なり、車掌車ヨがしんがりをつとめるのが定番。しかし1984年2月のダイヤ改正では不振の貨物輸送にメスが入れられ、ヤードを使ったバラ積み輸送からコンテナと貨物ターミナル中心の拠点輸送へと切り換わる。2軸貨車のほとんどが運用停止で操車場に放置され、国鉄末期までに廃止された。
その中で本形式が残された理由は、車齢が比較的若く最大勢力であったこと (一部は旧形式の置き換えにも使われた)、他形式より高速な75km/h走行ができたこと (2軸車の多くは65km/hが最高)、パレットに対応して大口輸送に適していたことがあげられる。現在の「ワムハチ」は貨物時刻表でも「紙輸送用」と解説されるほどの専用車扱いで、同形の2軸貨車が延々と連なる編成は国鉄時代では考えられなかった形態だけれど、列車本数・区間がかなり減ってきたことから注目される存在になりつつある。

ワム380060-ワム380228

ワム380060-ワム380228

  • 武蔵野線 東浦和←東川口 2009-12
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

10m級の車体は2軸車としては大柄なほうで、荷室は14枚のパレットを積載できる。リブのついた板が側方4面に屋根まで覆っているのが特徴だが、側面で見えているのはすべて扉で、4枚をスライドさせて任意の場所を開けることができる。従来の有蓋車では、入口へ一旦積んだ荷貨物を室内で移動させる必要があったが、本形式ならパレットに積んだままフォークリフトで直接積み降ろしできるため、荷役の効率が上がった。
現役の車両は、登場時の明るい茶色 (とび色) ではなくブルーに塗装されている。これは後期増備280000番台の車軸受を改造したもので、車番は10万も積み増し380000番台となった。そのほか特筆されるものとして、北海道では紙原料のチップ輸送向けとして、天井に穴を開けJRFカラーの赤紫に塗られた480000番台が室蘭付近で運用されていた (2008年3月に廃止)。
唯一の仕事である紙輸送だが、コンテナへ切り替える動きが進んでいる。山手線内にある最後の貨物駅だった飯田町駅(中央本線) は、付近に印刷社や新聞社などが集結していたため多数のワムハチが出入りし、駅の構造もほぼ紙専用に作り替えられた。しかし1997年には列車の設定が無くなり、その後荷役線に貨車を残したまま本線への線路が分断されたのを見た記憶がある。(駅の正式な廃止は1999年だった)
いまとなってはかなり低い75km/hの最高速は上げられず、車両自体の老朽化もあって、2万両以上が製造された貨車はことし1月の時点で約520両まで減った (貨物時刻表2010による)。このまま数年のうちに自然消滅を迎えてしまうのだろうか。

この記事へのコメント

2010年12月18日 13:17
こんにちは。

ワムハチは昔の貨物列車の姿を今に残す貴重な車両だけに私もお気に入りの貨車です。
今は首都圏系統で紙列車としての用途を残すのみで、新潟は焼島のワムもだいぶ整理され、時機にコキに切り替えられてしまうんですよね。

北海道にもつい数年前までワム80000から派生したワム480000なんて車両もいましたが、既にその車両も過去帳に入ってしまっています。こちらはDD51が引っ張るとあって国鉄時代の貨物列車を見ているようで、とても好きな貨物列車の一つでもありました。

北海道で今見られるワムハチは籍こそ旅客会社ですが、C11研修機材輸送用として残っている車両ぐらいだと思います。

車扱貨物が石油やタンク車系統のみになってしまった今、このような昔ながらの貨車の一日でも長い活躍を祈るばかりです。
2010年12月18日 17:34
あ!ワムですね
こちらでは早朝の通過らしく、夏場は多くの方が撮りに出られます。長いときには40両にもなるようで、迫力ですね。ずらーっと同じ貨車が並ぶ様は見事ですし一度みたいとは思うのですが、朝早いので、根性なしの私はまだ撮った(見た)事がありません。そうそう、名古屋周辺(稲沢かな?)で置いてあるのを見たことはあります。
しかし、これいっぱいに紙を入れたら、重そう・・・
2010年12月19日 19:48
こんばんわ。

タイトルはきっと
あのアーティストを意識したのでは?と
時期も時期ですしね(^^)

ワムのあとにビックリマークをいれたら
ラストクリスマスですよ。

こんなちっこい貨物列車はみたことがありません。
マッチ箱がつらなっているようでかわいらしいですね!
2010年12月21日 00:41
こんばんは、ワム8000、独特の走行音が好きですが、いよいよ本数が極めて少なくなってしまいましたね。石油以外の専用貨物列車の少なくなったのは、ニワカ貨物列車ファンとしては残念です。
2010年12月21日 22:02
785@NE-501さん こんばんは。

コンテナ輸送が次第に比重を占めていった貨物輸送のなか、ワムによる紙輸送は現在まで続いた車扱輸送の代表で、同時に国鉄の貨物列車らしい雰囲気を残すものでした。
新潟系統は先刻コンテナ化されたようですね。残る関東~富士~大阪の系統も、消滅は時間の問題といわれており、独特の走行音が聞けなくなる時期もそう遠くないようですが、一日でも長く活躍する姿を見せてほしいものです。
2010年12月21日 22:03
さくらねこさん こんばんは。

ワムです。正式にはハワム(ハは小文字で書く。パレットの意)で、「!」はつきません(笑)
だいたい10mのワム80000形のみの編成だと、40両はおよそコキ20両ぶんに相当します。それが「ダン・ダンッ」といかにもな音を立てて走っていくのが魅力のひとつでした。
関西だと夜間早朝通過のようで、夏場でないと撮るのは難しいですね。稲沢は春日井(ここにも紙工場が)からの中継地で、運用の間合いにいるところをご覧になったのだと思います。
2010年12月21日 22:04
Anさん こんばんは。

ワム…って書いたら、なんだか「!」をつけてみたくなりました。時期も時期ですしね(笑) 例の雑誌でも取り上げられているのは、いちおう偶然ということです(苦笑)
マッチ箱のような列車、というのはある意味当たっているかもしれませんね。そんなかわいらしい(でも中身は結構重いかも…)2軸貨車も、北海道では実質見ることができなくなりました。湿原号付きのヨがすっかり貴重な存在ですね。
2010年12月21日 22:05
teruさん こんばんは。

ワムの行進といえば独特のジョイント音で、見なくてもすぐそれと分かるものでした。
一時期は新宿あたりでも見られた紙輸送列車のワム。すっかり稀少になってしまいましたが、最後まで大動脈の東海道本線に残っていることは興味深いですね。
2010年12月25日 21:52
こんばんは。

かつてあれほどあったワムもずいぶんと少なくなったもので、この貨車もやがて過去のものとなってしまうのでしょうかね。
2軸貨車からして貴重な存在となっている今、あのジョイント音も懐かしく感じます。
こちらではチップ輸送に従事していたワムがありましたが、チップの鉄道輸送自体がなくなってしまったことからこれも過去のものとなりましたし。
チップのワムといえば返空では開口部にネットが張られていないことから、撮影していると荷台に残ったチップがよく飛んできたものです(笑)。
2010年12月27日 23:37
加藤さん こんばんは。

ワム80000の紙輸送列車といえば後期貨物輸送では2軸貨車の代名詞のようになっていましたが、それも最近ではまったく見る機会が無くなってしまいました。北海道のチップ輸送もいつか見てみたいと思っているうちに廃止されていまい残念です。

独特の輸送形態だったチップワム、返空を撮っているとチップが飛んできたんですね(笑) そのチップですが、いまの富士ではトラック搬入なのですが、その現場がなかなか面白いと言いますか…トラックごと傾けてザーと降ろすという力業に思わず目が点になったものです(笑)

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