晩秋

あんなにひどかった夏の酷暑と厳しい残暑はどこへ行ったのか、気がつけばもう冬の足音が間近となり、山々の緑は色を変えてひとときの彩りを見せている。「今年の紅葉は色づきが悪い」とは毎年聞いているような気がするけれど、山だけでなく街中の木々に見る色の変化は、わずかなものでも季節の進行を感じさせる。

そんな秋の終わりと一緒に、各地で走るSLレギュラーシーズンも終わる。上越線で運行してきたD51 498〔SLみなかみ〕の撮りおさめと、ひさしぶりに高崎から上越線の普通電車へ乗りこんだ。標高が上がり山肌が迫るにつれ、沿線の色は黄色から赤へと変わって期待を持たせる。
現地に着くとすこし曇りがかった空だったが、やがて雲の隙間から陽光が差し、前方の山腹を照らしはじめた。これはもしかして…と左側に立つ煙――後閑駅付近にいるようだ――を待つが、そういうとき太陽の動きは速いもので、いまにも背後の山に隠れてしまいそう。発車予定時刻から数分遅れ、ブォーと汽笛が鳴るころ日差しは山の端と雲にさえぎられてしまった。定刻に通過すれば、いやあと1分でも早かったら! と思うが、それもまた一度きりの記録なのだと思いなおす。
自宅であらためて現像してみると、光が弱くなったぶん色彩の表現はむしろしやすくなったように感じたが、どうだろうか。余談だが、リスクを承知で午後の上り列車を狙ったのは、今回は右側面をとらえたかったからだ。

D51 498

D51 498

  • 上越線 後閑→沼田 2010-11
  • D700, AF-S VR-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G, ISO400

保存運行の蒸気機関車では、話題づくりに機関車の装飾を変更するケースも少なくない。そのひとつが九州地区で多く見られた門鉄デフ (門デフとも。門鉄=門司鉄道管理局) への変更。正装である58654 のほか C57 (180号機) やC58 (秩父鉄道363号機) が一時期装備し好評だったけれど、D51 498はこれまでナンバープレート地色の変化ぐらいにとどまっていた。
そんな同機がことし4月下旬に、後藤デフ (後藤工場=現JR西日本後藤総合車両所) と呼ばれる大型デフレクタと集煙装置を搭載して〔SL碓氷〕(高崎→横川) に登場、ファンの度肝を抜いた。同機はその翌月に中央本線で〔SLやまなし〕(甲府→小淵沢) 牽引が決まっていたが、この区間は急勾配が連続し、かつ長いトンネルもあることから、対策として装備されたもの。同時に、後藤デフ姿で三重県津市に保存されている499号機の姿を、本線上に復活させる意図もあったように見える。

D51 498

D51 498

  • 上越線 後閑←沼田 2010-8
  • D700, AF-S VR-Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

発車~力行時に煙突から煙が勢いよく噴き出す姿は、蒸気機関車最大の魅せ場。通常はデフによって煙と蒸気は上側へ整流されるのだが、トンネル内では天井に叩きつけられた煙が乱れて内部に充満し、運転操作を妨げ客車への影響も大きい。この対策として考案された集煙装置は、煙突に覆いかぶさるようなドームの天井と後方または前後方が開いており、天井部にはシャッターがある。これをトンネルに入る際に閉めて、煙を後方へ誘導させる仕組みだ。
大きなデフに隠れて見えづらい集煙装置だが、その後部にシャッターを開け閉めするリンクが確認できる。これがボイラ右表面に沿うロッドでキャブへ達し、機関助士の押し引き操作でシャッターをスライドさせる単純な構造だ。山口線〔SLやまぐち〕のC57 1号機でも、煤煙対策から集煙装置と火の粉止めを煙突へ追加した形でデビューしており (最近では外して運転する機会も多い)、もとが貴婦人だけにその姿に賛否両論あったようだ。翻ってD51 498号機のこの姿は、元来貨物機として生を受けたデゴイチの勇ましさをより感じさせ、好ましく思う。

499号機も集煙装置装備機だったが、今回は中央本線の小さなトンネルにあわせた背の低いオリジナル仕様――スタイルは鷹取式 (旧鷹取工場=JR西日本) で開閉機構は長野式 (長野工場=現JR東日本長野総合車両センター) ――となっている。そもそも蒸機については、投入線区にあわせた細かな改造や変更が各機関区や工場でその都度行われてきた。D51は製造総数1,115両を数え配置も広範だったから、そのバリエーションも非常に豊富だったようだ。もしかすると、まったく同じ形のカマは2両と存在しなかったかもしれない。

この記事へのコメント

2010年11月28日 22:35
こんばんわ

上越線といえば
新潟にいたころ東京まで就職活動で
何度となく普通列車でリクルートスーツを持って
でかけていました。
お金が無かったですから高速バスか普通列車で(苦笑)
今思えば、完乗してるんですね。

沼田のあたりはまだまだ谷川岳・水上からの
坂道が続いているという感覚が残っていますが
北海道のC11のようなディーゼルの後押しなしで
登って行くんですよね?

機関車も有名なデゴイチですし
昔の蒸気機関車の列車をまさに再現できている
観光列車ですね(^^)
2010年11月30日 23:55
Anさん こんばんは。

新潟に住まわれていたことがあるのですね。で、就職活動に普通列車で何度も上越線往復! これはまたすごいといいますか…私自身昼間に乗り通したのは片道1回しかありません(苦笑)

上越国境というと水上~湯沢の2ループを含む山越えが有名ですが、渋川~水上にかけてもかなりの連続勾配区間ですね。撮影したこの区間も実際には沼田からずっと上り坂になっているのです。それでもさすが大型機関車だけあって、〔SLみなかみ〕では6両の客車を単機で引っ張り上げていますね。
現在牽引しているのは12系客車、まあ今となってはこれも貴重品になってしまったものですが、やはり蒸機には旧型客車を牽かせたいなあと思うところ。来年C61復活の際には旧型客車も使うという話でしたので、期待したいです。
2010年12月01日 00:17
こんばんは、なるほど、とても勉強になります。SL自体がそれぞれ、パーツが異なっていたり個性がありますよね。やはり生まれてきたのが少し遅すぎたなぁと思う今日この頃です。
2010年12月10日 00:24
teruさん こんばんは。返答が遅れ申し訳ありませんでした。

まあ昔の話を言い出せばキリがございません。いろんな意味で現在より撮影そのものはしやすかったとも思います。しかしカメラもレンズも当時に比べれば長足の進歩を遂げているわけで、手軽に高品質な写真を得られる現代は昔から見るとやっぱりうらやましかったのかな、と思う今日この頃です。

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