古豪と新風

11月6日、国鉄特急形の歴史にひとつの区切りが加わった。特急〔はまかぜ〕に使用されてきたキハ181系がこの日限りで定期運行を終了、翌日から新型キハ189系に置き換えられている。ダイヤ改正でもなんでもない時期の、しかも土日にかけて車両交代となったのは、6日が山陰冬の風物詩ズワイガニ漁の解禁日だったから。キハ189系の投入自体、当初来年 (おそらく3月改正) から運転開始という計画が、今期のカニシーズンにあわせ前倒しされたものだ。

キハ189-1005

キハ189-1005

  • 山陽本線 魚住→大久保 2010-11
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO320

キハ181系は地方都市へ特急列車を直通運転させる目的で、勾配区間向け大出力ディーゼルエンジンを搭載して1968年に登場。485系電車やキハ80系とともに、全国に特急列車網を拡大する役目を担った。
先頭部はキハ80系の (キハ82) を継承しつつ要所を角でまとめ、各車床下の12気筒ターボエンジン (500PS) がくり出す重厚なサウンドも魅力。大出力に物をいわせ山岳路線を中心に活躍してきたが、電化の進展によって四国や中国西部に勢力が移った。それも新型車投入でしだいに縮小し、1982年から充当の〔はまかぜ〕が最後の舞台となっていた。
〔はまかぜ〕は1972年登場、播但線経由で大阪と兵庫北部を結ぶ。現在では智頭急行経由のほうが速いから、砂丘のトレインマークが示す鳥取までの列車は1往復だけになった。いまでは冬季の旅行商品「かにカニ日帰りエクスプレス」の香住・浜坂方面プランに向く列車という面が強くなり、老朽化の進んだ車両に対しJR西日本が新車で運転継続としたのも、その需要を見込んでのことだろう。

キハ181-27

キハ181-27

  • 山陽本線 魚住→大久保 2010-11
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO320

明石のすこし西にある魚住近辺には溜池が多い。そのひとつが線路のすぐ脇にあって、条件によっては水面に車両の姿を映し出す。池のほとりまで寄れるから、昨今の事情を考えるといつこちら側にフェンスができてもおかしくないのだが、線路際のほうが金網で覆われる現状にあって貴重なポイントはまだ残っていた。言うまでもないが、間違っても転落・落下しないような場所を選んでいる。
昼間は雲ひとつない晴天が続き、そのまま傾きだした夕日が快速電車の車体をほんのり彩る。そして16時過ぎ、列車の接近を告げる踏切が鳴り出し、左から紫煙とターボサウンドを連れて〔はまかぜ4号〕6両編成が通過していった。

前頭のスタイルが特徴的なキハ181系は、中間車にも見逃せないポイントがある。普通車キハ180は座席定員76と、代表的な特急電車485系のモハ485・484(200番台)にくらべ1列多い。485系の車両長が20.5mなのに対し、キハ181系が21.3mと長いためだ。地方駅の低いプラットホーム向けにステップを設けドアが下側に出っ張るのも共通だが、出入台と台車の位置関係から戸袋を設置できず2枚折戸を採用した。
客室内はキハ80系とほぼ同じ。日よけは電車特急の横引きカーテンではなくロールスクリーンで、しかも前後2列で1枚という構成だから、上げ下げには両者の合意が必要だった。

キハ180-48

キハ180-48


中間車屋上でクーラーを覆うように横たわる黒い物体は、エンジン冷却用のラジエーター。自動車ではエンジン手前のフロント最前部に置かれているもので、エンジンの熱を移動させて自体は走行風で冷やす要領も自動車のそれと同じ。しかし強力エンジンから出る大量の熱をさばくため、放熱フィンは車両全長にわたってびっしり並んでおり、その異様な姿もまた本系列の特徴といえる。先頭車に見当たらないのは、電源系のエンジンを設置した客室前方の機械室内にラジエーターも収納し、ファンで強制冷却しているからだ。
この設計の成否は、他にこのような車両が存在しないことでわかると思う。大出力気動車の試作車キハ90系の設計を流用したものだったが、自然冷却式はトンネルが続く勾配区間で能力不足となり、中央本線〔しなの〕では夏場のオーバーヒートが頻発し保守に手を焼いたという。奥羽本線でキハ80系から交代した〔つばさ〕でも、板谷峠を単独登坂できる性能でありながら結局補機EF71の力を借りる始末だった。
大出力のエンジンはこのあと出力を押さえたタイプで九州地区キハ66系に採用、そして北海道向けのキハ183系(キハ182形)で安定した性能を発揮できるようになった。

〔はまかぜ〕の定期運行を終えたキハ181系は、年度内に全廃される予定。ただし臨時特急〔かにカニはまかぜ〕11月下旬から年内の運転は同系が登板、沿線に最後の雄姿を披露することになる。

この記事へのコメント

2010年11月14日 11:59
こんにちは。

キハ181系も遂に定期運用の座から退きましたね。
早速つい先日には幡生までの廃回もあったとのこと、先頭車には私が夏に「はまかぜ」を撮りに行った際にやって来てくれたキハ181-22がおり、最近といえば最近撮っていただけに真っ先の廃車に寂しさが込み上げてきます。
キハ189系は顔立ちがキハ181系と若干ながら似ており、遠目ではどことなくキハ181系の面影を感じれそうです。

キハ181系はこれから「かにカニ」で活躍の後、全廃なのですね。
最後の運転の日も沿線や駅は大変な賑わいを見せそうです。最後まで何事もなく頑張って欲しいですね。
2010年11月14日 18:59
こんばんわ。

超新車ですね!
下側も暗くならないでグレーで
くっきり機械が丸見えですね
あんまり汚したくないですが
ジーゼル特急ですか(^^;

北海道のディーゼル特急は
まっ黒けに写っちゃいます・・・。
デビューから時間がたっている列車も多いから
しょうがないですよね。

181って
北海道にも似たお顔が1両いますね☆
2010年11月16日 22:45
特急北斗さん こんばんは。

つい先日定期運用が終わったキハ181系ですが、もう廃車前提の回送が行われたようですね。
あらためて見直すと私もその先頭車キハ181-22を撮っていたのでした。偶然の出会いといえばそうですが、撮影した当の車両が役目を終えたという一報にはすこし心が痛みながらも、良い記録になったなと思うところです。残る車両が〔かにカニはまかぜ〕として最後の活躍となるわけですが、無事走りきってほしいと思います。

代わってデビューした189系は、オデコのライト類や丸みのある先頭部と、仰るとおりキハ82~キハ181のラインを汲むところがありますね。
2010年11月16日 22:52
Anさん こんばんは。

できたての新車は床下から屋上までピカピカですね(笑) 黒い床下の車両でも、新製や検査明けは輝きがあって、すぐそれとわかります。その一方ススで汚れた姿もまたディーゼルらしく、勇ましさを感じます。

北海道の丸い顔…といえばキハ183-100番台ですね。とうとう最後の「白ボウズ」1両となってしまいましたが、なんとか現役中に撮りたいものです(苦笑)
2010年11月17日 17:06
こんばんは。

ついにキハ181系は定期運用が終わり来春には全廃されるとのことで、これでまた国鉄形の形式がひとつ消滅してしまいますね。
その一方で車齢を考えるとこれまでずいぶんと頑張ってきたものだとも…。
キハ181系というとキハ180の屋根上に並ぶラジエーターが特徴のひとつで、子供の頃は本で見たその姿に衝撃を受けたものでした。
それでも山岳地帯ではオーバーヒートを起こしていたというのですから自然冷却だけでは限界があったのでしょうね。
それと同時にラジエーターで周りを囲まれたクーラーユニットは熱交換がちゃんとできるのだろうか…と思ってみたりもしていたのですが(苦笑)。
2010年11月20日 01:11
加藤さん こんばんは。

私にとって国鉄ディーゼル特急というとキハ80系よりこちらのほうがなじみがありましたが、やはり経年が進んだこともあってついに定期運用を退いてしまいました。同時によく今まで残っていてくれたと労いの言葉もかけたいですね。
中間車だけにある屋上のラジエーターは、先頭の勇ましい形とともに同系の野性味を感じます。小さい頃はこれが飾り屋根みたいに見えて、先頭車にこれがなかったのを不思議に思ったものです。
しかし走行風だけに頼る冷却は夏場の効率低下を避けられなかったようで、その後の車両ではパワーを落としたり冷却ファンをつけたりしたため、結果キハ181系の大きな特徴になったわけです。仰るとおりクーラーがこれで覆われている形ですから、熱交換の効率は確かに悪そうですね(苦笑)

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