エキチョーさん!

駅長とは、いうまでもなく駅で一番偉い人で、駅を代表する人。ことに地方の中心駅では地域を代表する人物とされ、駅本務以外に忙しい日々を送る方も多いとか。最近は合理化による無人駅の増加や駅管理の集約で駅長の数は減る傾向だが、いっぽうで人間以外の方(?)が駅長として着任し、それが集客に結びつくケースも増えているようで……。

福岡市北部、金印出土で知られる志賀島(しかのしま) と九州本島をむすぶ陸繋砂州は、その細長い区域で玄界灘と博多湾を仕切って島へ通じていることから「海の中道」と呼ばれる。水族館や動物園・プールもある海浜公園、ホテルにマリーナといった大型レジャー・レクリエーション施設が揃った、市内屈指のリゾートスポットである。
九太郎(♂2才)そのひとつ、国営海の中道海浜公園で飼育されているトカラヤギの九太郎(♂2才) が、この10月に香椎(かしい) 線・海ノ中道「駅長」に任命された。日本初のヤギ駅長―名札によれば海浜公園のスタッフでもあるらしい―は、11月末までの昼間 (雨の日除く) に公園隣接の同駅特設駅長室へ「出勤」し、列車で同園を訪れる人々を出迎えている。
それで駅長とこのブログに何の関係が? と思われる方が多いかもしれないが、実は関係大ありなのだ。その証拠に……。

駅長室

海ノ中道駅長室

  • 香椎線 海ノ中道 2010-10
  • D700, AF Nikkor 35mm F2D, ISO250

駅長室前面……ふざけているのかとお怒りになるのはもう少し待ってほしい。この左手側にまわると、柵の板が青く塗られ額に「うみなか」の文字。脇には前照灯・尾灯のような丸い物体が並び、貫通扉と思しき黒い枠も見える。ここまで来ればお分かりかと思う、この駅長室は香椎線を走るキハ40系をかたどったものなのだ。

香椎線 (西戸崎~宇美) は、途中で鹿児島本線・篠栗(ささぐり) 線と西鉄貝塚線に接続する一方で、起終点が両方とも行き止まりというめずらしい形態だ。これは糟屋郡近辺の炭鉱から石炭を運搬するため、私設の博多湾鉄道 (のちに西日本鉄道) が敷設し戦時中に国有化された歴史による。西戸崎(さいとざき) が海のほうで、香椎でウミゆきに乗るとヤマに連れて行かれるのでご注意を…という私自身、この駅で香椎線列車が右側通行になっている罠にはまったことがあるのだが。
筑豊地区の炭田が相次いで閉山となって以降、同線は九州一の大都市近郊にありながら単なるローカル線としての扱いを抜け出せなかった。いまは長者原(ちょうじゃばる) のりかえの篠栗線でショートカットできるけれど、交差点に同駅が設置されるまで宇美方面から福岡市街へはバスのほうが速くて便利という有様。博多方向へ通じる勝田線があるにはあったが、列車が一日数往復ではまったく使えず、特定地方交通線として1985年に廃止されてしまった。

画像

キハ47 71

  • 香椎線 長者原←酒殿 2010-10
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

JR発足前後に西戸崎~香椎間からてこ入れが行われ、鹿児島本線経由での博多直通も拡大された。そこで異彩を放ったのが、1988年に登場したキハ58系改造の3両編成「アクアエクスプレス」。車内外を種車が何だったのかわからないほどに改装し、白地に紺のストライプを巻いた専用車両は、乗車券のみで乗れるという営業的にも破格の列車だった。
この車両をデザインしたのは、水戸岡鋭治氏率いるドーンデザイン研究所。JR九州を中心に多数の鉄道車両・施設デザインを手がける水戸岡氏の、これが初の鉄道作品であった。残念ながらすでに廃車されているが、現在変更が進められている新塗装の色使いとロゴまわりは、同車の記憶を呼び起こしてもくれる。

この記事へのコメント

teru
2010年11月10日 22:41
こんばんは、10月に九州地区、お疲れ様でした!
アクアエクスプレスのデザインも水戸岡さんでしたか。わずかに数枚の写真が残っていますが、今でも斬新なデザインに驚いたのを思い出します。夏場なんて、海水浴客でごった返した列車内だったのではないかと想像します。
2010年11月11日 00:06
teruさん こんばんは。
ちょっと時間ができたので九州まで行ってしまいました(笑)

私を含め多くの人が衝撃を受け、同時に水戸岡氏の知名度を高めたのが"KAMOME EXPRESS"だと思いますが、じつは香椎線「アクアエクスプレス」が、最初の鉄道デザインでした。
そのすこし前に水戸岡氏が手がけた、海の中道ホテルのデザインが縁となったそうです。そしてJR九州が「自由にデザインしてください」とほぼフリーな設計を認めたことが、現在に至る大胆ながら芯の通ったデザインを生み出し続けているのですね。
それにしても、こんな列車が乗車券のみで利用できたというのもすごいことです。夏場は賑わったのではないでしょうか。

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