ばす・おん・れーる

「レールバス」――rail (鉄道) なのか bus (バス) なのかよくわかりにくい言葉だが、現在も時刻表のJRページに混ざって載る第三セクター鉄道ページの一部、「全便レールバスで運転」という注釈に気づいた方も少なくないだろう。
レールバスとは、きわめて閑散な区間の輸送にむけて西ドイツ(当時) などで実用化された小型車両で、バスのボディと鉄輪を組み合わせたものだ。ただし DMVや軌陸車と違い、鉄道軌道専用である。
国内では南部縦貫鉄道のキハ101・102 (1997年まで営業し現在は動態保存) が著名。国鉄でも北海道のローカル線などで試用されたが、品質や耐久性の低さ、輸送力と需要のバランスに欠いたことなどから普及しなかった。

1980年代に新生レールバスとして富士重工から小型2軸車 "LE-Car II" が登場。軽量なモノコックボディにエンジン・ドア・窓・エアコンなど自動車汎用部品を多用した低コストの車両は、ちょうど国鉄の特定地方交通線の転換時期に重なり、引き継ぐ三セク会社の立ち上げに好適な車両として重宝された。
最初2軸車だった車両 (現在紀州鉄道に2両残存) は輸送の実態に合わせて2台車ボギー車となり、車体も「バス」とは似ても似つかぬほど大型化していくのだが、ほとんどの会社が単行~2両のワンマン運転で、整理券と運賃を降車時に払う路線バスと同じような方式になったことを強調する意味で、「レールバス」の名称が使われたと考えられる。

AT-552 会津鉄道

AT-552

  • 会津鉄道 南若松→門田 2010-8
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

会津南部を走る会津鉄道 (西若松~会津高原尾瀬口)。国鉄会津線が特定地方交通線に指定されたのを受けて鉄道存続のため第三セクター会社が設立、暫定引継ぎのJR東日本から1987年7月に転換開業した。先立って鉄道公団により建設中だった野岩線がこちらも三セクの野岩 (やがん) 鉄道として開業し、その先の東武線を含む相互直通運転を行っている。浅草駅では東武~野岩~会津 (西若松まで) の通し乗車券を券売機で販売しており、窓口では会津若松までの4社連絡券も購入可能だ。

開業当初の車両は、新潟鉄工 (現・新潟トランシス) 製の軽快気動車 "NDC" AT-100, 150, 200。富士重の LE-Carとくらべ車体構造は従来の鉄道車両に近いが、レールバスと呼んだ事業者もあった。
NDCにしても初期車の経年淘汰が進んでおり、同社でもAT-100の1両をのぞき初代は廃車された。寿命10~20年というのは鉄道車両としては短いほうで、各地の三セク鉄道が抱える問題のひとつだ。旅客数が漸減し転換交付金 (国鉄からの切り離しにあたって給付され、赤字補填などの基金として積み立てていた) も底をつく中、これら車両の修繕・更新費を計上しなければならない各社の懐事情が察せられる。
会津は野口英世の故郷 (生家は現在の猪苗代町) であり、最近の同社車両にも英世の姿が登場する。AT-502, 552は現行千円札の肖像となったのを記念したもので、ほかに英世の母シカがしたためた手紙の本文そのもの(!) を載せた「ふるさと列車」も走る。

AT-351 会津鉄道

AT-351

  • 会津鉄道 南若松→門田 2010-8
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

萱葺きの駅舎を持つ湯野上温泉 (ゆのかみおんせん) 駅などもよく知られているが、いま会津鉄道といえば芦ノ牧温泉 (あしのまきおんせん) 駅のネコ駅長「ばす」だろう。駅周辺に住み着いた もと野良(♀) が2008年に名誉駅長へ任命され、たま執行役員同様 駅の利用者増やグッズ売り上げで営業に貢献しているそうだ。
そんな「ばす」が2010年2月、トロッコ車両に登場。先代のAT-300 (もと国鉄キハ30) が老朽廃車となった代替に新製されたAT-350形である。特製の制帽をかぶり、車体に描かれた擬似窓から身を乗り出て隣をうかがい、かと思えば壁にしがみつきながらずり落ちる姿が微笑ましい。車内もばすの足跡や森の動物たち (イラスト)、特製ばす消印が押される郵便ポストなど、いろいろ楽しめそうだ。
この「ばす」が描かれたAT-351は、レールバスタイプのAT-103 (お座敷車)、JR東日本から購入したキハ40改造AT-401 (展望車) と3両編成「お座トロ展望列車」を組む。トロッコ車のオープン窓は寒冷期にはガラスをはめ込み、お座敷も掘りゴタツという雪見仕様となる。

この記事へのコメント

2010年08月31日 16:00
こんにちは。

私も旅行に行っておりまして、この会津地方にも足を延ばしました。
会津鉄道の方には向かうことは出来ませんでしたが、ちょうど会津若松の駅にてキハ8500系の後継車であるAT-700形によるAIZUマウントエクスプレスを確認できました。
やはりお写真のAT-552と同様、700形もかなり小柄な車両でレールバスというのにはピッタリな感じもしましたね。

会津鉄道・野岩鉄道・東武鉄道を経由すれば会津若松から浅草まで行けるのでしたよね。
会津若松の駅で、下今市行きの列車を見た時はつい凄いな~と思ってしまいました。
2010年08月31日 21:39
こんばんは。
1枚目の列車にプリントされた人物、
どこかで見たことがあるな~と思ったら、
1000円札にも描かれている野口英世さんだったんですね。
帽子を取るところ、はじめて見たかも。。
2枚目の猫ちゃん列車も可愛かったです(*^_^*)
たま駅長も可愛いけれど、ばす駅長も魅力的ですね♪
ばす駅長さんには、地域の人たち、そして旅行者の人たちに
たくさん可愛がられながら長生きして欲しいです。
2010年09月08日 22:25
特急北斗さん こんばんは。お返事が大変遅れ申し訳ございません。

特急北斗さんも会津地方へ出かけられたのですね。この地域はいろんな車両が集まり、限られた時間でどれだけ撮れるか、目移りした中で会津鉄道にも足を運んでみました。車両はレール「バス」と呼ぶにはすこし大きいですが、しかしJRのキハ40などに比べると確かに小さく見えてきます。
私も実際に浅草から会津若松まで乗り継いで行ったことがあります。小振りな自販券が4,000円くらいするという経験はなかなかありません(笑) AIZUマウントエクスプレスの方は新旧とも見られなかったのですが、「新」の赤い車体にもあかべぇがついていますね。
2010年09月08日 22:29
スウさん こんばんは。
コメントいただいたのにお返事が大変遅れ申し訳ございません。

そうなんです、ここ会津は野口英世の出身地で、千円札の肖像に選ばれたことを記念してこの車両が登場しました。この画像では見えませんが、車両正面には英世と母シカ両名が並んで撮られた写真が貼られ、このほかの車両にも野口英世のイメージが貼られています。
そして会津鉄道をある意味代表している(笑)「ばす」駅長。今回本人(猫)に会いに行くことはできませんでしたが、こうしてトロッコ列車に乗った可愛らしい姿を見ることができました。もうだいぶお年なんだそうですが、これからも皆さんに愛されつづけてほしいですね。

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