神の村にて

国道12号線で深川から旭川へ向かう途中、山に突き当たった道路はトンネルに入る。そこに入らず直前で左折すると、すぐに「神居古潭 (かむいこたん)」の看板が見えてくる。
カムイコタン (kamuy-kotan) とはアイヌ語で神のいる村(場所)の意。道央をゆったり流れる石狩川はこの周辺で山間の狭い谷を抜けており、「舟が唯一の交通手段だった時代、両岸から奇岩怪岩が迫る激流のこの地では、神(カムイ) に祈りを捧げて通らなければならない場所」で (当地の解説文による)、そのような難所であることから「魔神が住む所」という意味もあった。
開業当初の函館本線はこの渓谷北側を通過し、当地に神居古潭駅が営業していた。1969年の旭川電化時には、北側の山中を複線のトンネルが貫通して線路が移設されたため、同駅は廃止となった。1989年になって旧駅舎が復元され、また線路跡を利用したサイクリングロードの拠点にもなっている。

C57 201 (静態保存)

C57 201

  • 函館本線 (旧)神居古潭 2010-5
  • D700, AF Nikkor ED 18-35mm F3.5-4.5D, ISO200

旧駅舎の近くには3両の蒸気機関車、29638 (9600形), C57 201, D51 6 が静態保存されていた。
北海道のC57というと、最終旅客列車を牽引し現在は鉄道博物館に展示されている135号機がとくに有名だが、この201号機は4次車とよばれる最終グループで、同形式のラストナンバーでもある。密閉型のキャブを本格採用し、デフレクタの形状や炭水車の構造もそれまでと変わっている。整った形態で「貴婦人」の愛称を持つ同形だが、4次車のスタイルは大型急客機C59形に通じ、近代的なスマートさも感じさせる。
(注: 超広角域で撮影のため、最前面以外の縮尺は正確ではありません)

クハ711-104

クハ711-104

  • 函館本線 峰延→岩見沢 2010-5
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO400

旭川電化に先立つ1968年に小樽~滝川が北海道最初の電化区間となったとき、小樽・札幌~旭川を結ぶ急行〔かむい〕の1往復が711系電車に置き換えられて、道内初の電車急行が登場した。
営業用としては国鉄初の交流電車は、サイリスタ位相制御の高い粘着性能をあてにしたクハ-モハ-クハの1M2Tと、当時としては低いMT比が特徴。車端2扉デッキつき・セミクロスシート・二重窓はキハ22などと同等の設計である。機器類は徹底した雪氷・寒冷対策が取られていて、その思想は現在活躍する新鋭車にも受け継がれている。系列十の位が1で車種上は近郊形に属する同系だが、北海道形の国鉄車両はその構造上急行に使用してもさほど問題なく、事実ローカル線ではキハ22やキハ40による急行も存在した。

モハ711-107

モハ711-107

  • 函館本線 岩見沢→峰延 2009-11
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

本州などの電車にくらべると加速がとてもゆるい711系は (以前も述べたが加速度はキハ201系の約半分)、現在の札幌近郊ではさすがに常用されない。とはいえ当時の機関車+客車や気動車に対してはじゅうぶん快速であり、札幌を離れれば駅間もとても長いので、その性能で問題なかった。停車駅の少ない急行にはさらに向いているといえ、1968年から〔かむい〕は電車主体になり、1971年には札幌~旭川間ノンストップの〔さちかぜ〕1往復を設定、表定速度85.5km/hは本州の幹線エル特急に比肩する俊足ぶりだった。

「かむい」の名はカムイそのものにくわえて当地神居古潭、それと張碓の神威古潭から取ったものと見てよいだろう。札樽間に立ちはだかる張碓の断崖もまた、通行の難所だった。
〔ホワイトアロー〕〔ライラック〕に格上げ吸収された〔かむい〕は2007年に新エル特急〔スーパーカムイ〕として復活、785系・789系が130km/hで疾走する。トレインマークに流れる2本のラインは、大雪山と石狩川をイメージしたものである。

この記事へのコメント

2010年05月29日 22:10
こんばんは。
「カムイコタン」って何だか素敵な響きですね(^-^*
北海道の地名って、理由はうまく言葉にできないんですけれど、コトバの響きに惹かれます。蒸気機関車もかっこいいですね。

>本州などの電車にくらべると加速がとてもゆるい711系
昔は本州で走る列車と北海道の列車ではスピードも異なっていたんですね。
これもまたへぇ~、でした。
電車を運転する感覚も、やっぱり北海道と本州では違いがあるのかな。北海道の大自然の中、先頭車両の運転席に座って電車を動かせたら、爽快でしょうね^^
2010年05月31日 13:10
こんにちは。

そういえば神居古潭駅はかなり前に一度だけ行きました。
しかも行ったときが冬の前だったか季節的に悪い時期で、保存されている機関車たちはブルーシートに覆われていて何も見えなかったという記憶だけが妙に残っていたりします(笑)。
蒸気機関車に限らず国鉄形の機関車って全国的に配置された形式は多々ありますが、その地域に合わせた独特の改造があったりして面白味がありますよね。

国鉄形でも711系は北海道のために造られた形式。さらにその数もずいぶんと減ってしまっていますからこちらも見逃せません。
711系も冷房化改造や3ドア化、両改造が施されていない編成もパンタがシングルアーム化されていますからもはや厳密なオリジナルの姿はみられないんですよね。
2010年06月02日 21:35
スウさん こんばんは。

北海道にはアイヌ語由来の地名、そしてアイヌ語そのものの地名もたくさんありますね。その響きに独自の歴史やその雄大さも感じます。
また道央地区の線路は平坦で直線も多く、列車もなんだかゆうゆうと走っているように感じます。クルマで走っていても確かに爽快ですから (スピードオーバーには注意)、列車の運転席から見る風景も、そんな感じなのかもしれませんね。
2010年06月02日 21:37
加藤さん こんばんは。

以前この神居古潭駅を訪れたことがあるのですね。しかし機関車がブルーシートに覆われてしまっていたのですか(苦笑) せっかく訪れたのに、お目当てのものが見られないとひどくがっかりしちゃいますよね。ええ、私もコレ狙いでしたから(笑)
この201号機もよくよく見れば北海道対応が施されており、各地の事情に合わせていろんな装備や改造を受けた国鉄の機関車らしい姿といえます。

そして711系、厳密な意味でのオリジナルはもう見られないですが、東海形顔の面影を残す貴重な形式。私は最初に見たときから現行塗装だけなので、すこし深いローズ色の国鉄オリジナル姿も一度は見てみたいものだなあと思います。
2010年06月12日 18:16
こんにちは。

帰省の際は有料高速道路は使わないので、必ず国道12号線の神居古潭を通りますが、国道も何度も改修されているので、この場所の存在を知りながらもサイクリングロードの入り口を見逃してしまうことが多いです。
でもこの辺りを通るたびに、石狩川の上流ともあって水の流れもとても綺麗で、神居古潭の名の通り神聖な雰囲気を感じます。
岩見沢にもC57 144が静態保存されていますが、こちらは同じC57の中でもラストナンバーなのですね。3次車と4次車では外見に違いはあるのでしょうか?見比べてみたい気持ちになりました。北海道の保存蒸気機関車は、冬期間は丁寧にブルーシートで覆われるので、現地の方々の愛着を感じます。

赤電こと711系は、北海道電化の象徴ですよね。岩見沢周辺が活躍の場となってしまいましたが、この車両がいずれ見られなくなるかもしれない、ということが、今の私には全く想像ができません。
2010年06月14日 00:23
水無月さん こんばんは。

蒸気機関車に関しては、製造時期や工場で外形が変わるのも珍しくなく、くわえて配置区などでの後付け改造からさらに複雑怪奇とさえ言えるほどの細分化になってしまいます。解説しだすと際限なくなっていまうので、ぜひご自分の目でお比べいただければ、と…(苦笑)
北海道の保存機は、冬場はシートで覆っているところが多いのですね。厳しい気候ですから丁寧に保存しないとすぐ朽ちてしまうわけで、たまたまそんな時期に訪れればガッカリ…でしょうが、その心遣いに感謝せねばなりませんね。

北海道電化のシンボルともいえる711系ですが、いまでは岩見沢以北と室蘭本線区間に固められていますね。そのあたりが性能に見合った路線のため、現在も生きながらえていると言えますが、それも近い将来には見られなくなることも気に留める必要がありそうです。

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