思い出ほのかに

毎年恒例の 鉄道ファン 特集「JR車両ファイル」。この一年間、JR車両にあったダイヤや車両の変化を振り返ろうと誌面を開けば、「えっ? そんなものまで?」と驚くような廃車や廃形式、運用離脱の報を見つけてしまう。とくに国鉄形の衰退が著しい昨今、一覧表に冷たく記された処遇に心が痛むこともある。
大糸線北部で活躍してきたキハ52も、そんな車両だ。昨年末に北陸へ寄ったとき、計画に組み入れるかどうか迷ったけれど、結局高山本線のキハ58系列を優先していた。今改正でキハ120に置き換わることが発表されており、さよなら運転が行われることも知っていたが、やはり普段の姿を残しておきたい、と改正直前の3月上旬に急遽訪問を計画。北陸本線〔雷鳥〕などを福井近辺で撮りおさめ、〔しらさぎ〕~〔北越〕の乗り継ぎで糸魚川へ着いたのだった。

糸魚川駅の大糸線のりばでは当日の運用を終えたキハ52 115が、線路がすでに無くなっていたレンガ造りの機関庫を後に、カラカラと軽いエンジンのアイドリング音を流していた。昔のエンジンは低温での始動性が悪いため、冬場はこうして一晩中かけっぱなしにしておくのだ。
翌日は標準色115と首都圏色156の2両による運転。125 (藍色+ベージュ:旧標準色) はお休みだった。天気は良くなかったけれど、両者の彩度の強さにある程度救われた気がする。雪の白さにも枯草色にも違和感なくおさまる国鉄標準色には、やはり安心できる存在感があった。

キハ52 115

キハ52 115

  • 大糸線 姫川→頚城大野 2010-3
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO400

キハ52形は、ローカル線の動力近代化にむけて1957年から製造された20系一般形気動車の一員で、勾配線区向けに2エンジンとして出力を増強したもの。後継のキハ40系が勾配路線にはまったく不向きだったため (そういう路線は輸送量も単行程度なので)、ほかのキハ20系が民営化後数年で消滅したのに対し、20年以上も生きながらえてきた。
2009年3月まではJR東日本でも定期運用され、とくに最後まで残った新津運輸区の車両はエンジンを換装しながらも上回りはほぼオリジナル形態だった。JR西日本のものはワンマン改造・トイレの撤去・冷房化・一部座席の撤去が行われた一方エンジンは従来のままで、音の方ではこちらに軍配というところか。JR東日本の車両も以前に取り上げているので比較されたい (車両向きは逆ですが)。ちなみに上写真の左側で窓のない部分には、トイレ (反対側に設置) 用の水タンクがあった。

近年ワンマン運転のローカル線で顕著な、安全確認の徐行運転も影響するのか、ここの列車速度は正直かなり遅い。小滝~平岩でのろのろと進む列車を撮れるだけ撮って、機材を片付け車に乗り込み、並行する国道をふつうに走って北小谷付近でふと横を見ると、ゆっくり通過するのは同じ車両! この速度と少ない運転本数では、鉄道利用の促進は正直厳しいと言わざるを得ない。いままでは同形の懐かしさと希少性を売りに「乗り鉄」や「撮り鉄」を集められたけれど、キハ120に置き換えた今後どうアピールしていくのか、気になるところではある。

キハ52 156

キハ52 156

  • 大糸線 姫川←頚城大野 2010-3
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO400

改正前日の3月12日夜、特別に3両で運転した同形は、引退を惜しむ声に応えて20~22日にふたたび3両で〔キハ52ありがとう号〕として運転 (ただし21日は強風のため取りやめ)。その後ただちに富山へ回送された。標準色の115号車は、はるばる中国地方の津山へ移送された後に年度末ギリギリで除籍され、扇形機関庫の新たな住人となっている。残る2両は8月まで数回、同線で臨時に運転される予定だ。

この記事へのコメント

小さな鉄道博物館
2010年05月24日 12:41
こんにちは。

早速今月の鉄道ファン特集拝見させてもらいました。すぐに宮本さんの写真が目に付き楽しませていただきました。どれも流し撮影に適した場所を選ばれてして自分も最近はこの構図に挑戦しています。
とても懐かしい塗装ですね。学生時代写真を撮り始めた頃、士幌線や広尾線のキハ22を思い出しました。こちらでも3月からキハ40国鉄色が復活しこの2ヶ月間は新得ー釧路間を中心に追いかけ本格的に鉄道撮影を撮っていた頃の記憶も同時に蘇っています。次回道東方面に来られる際はぜひ狙ってみてください。
2010年05月26日 00:09
小さな鉄道博物館さん こんばんは。

ありがとうございます。こちらもレポート記事を興味深く拝見させていただきました。
キハ183系の国鉄色は残念ながら除籍されてしまいましたが、かわりにキハ40 777をはじめとした3両の首都圏色が道東の新たな話題となっていますね。
発足初年に渡道したときにはキハ22とあわせ当たり前のように走っていた首都圏色。いつの間にか消滅していたのですが、今回復活のうえあの2429Dにも充当ということで、次回道東への訪問を楽しみにしたいと思います。
2010年05月30日 14:00
こんばんは。ご活躍のようでなによりです。大糸線沿線エリアは、スキーでよく訪問しました(スキーも最近はまったく行きませんが・・・)が、鉄道となるとなかなか触れる機会が無く、現在に至ります。少しでも、スキー途中に撮影でもしておけばよかったなぁと思う今日この頃です。また気動車といえば、小湊鉄道、訪問したいものですね。
2010年06月02日 21:31
teruさん こんばんは。

大糸線といえばスキーですね。ここや信越線など、以前なら南と北から「シュプール号」などいろんな臨時列車も走っていたのに、ついぞ見に行く機会もありませんでした。
気動車も国鉄の香りを残す車両がだいぶ少なくなっている感じで、いろいろ撮り収めておかねばと思いますね。

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