潮風に吹かれて

かつては九州の玄関口、現在では関門海峡「門司港レトロ」の中心であるJR九州・門司港駅。堂々たる木造駅舎の脇に踏切があったことに気づく人は、以前はそれほど多くなかったか。鹿児島本線の一部として0.9km先の北浜駅までJR貨物、それからトンネルを通って和布刈(めかり) 公園付近まで田野浦公共臨港鉄道の線路だった。
JR貨物は旅客会社の線路を使用して輸送を行う第二種鉄道事業者。都市部などに存在し、貨物列車と特殊な臨時列車などしか走らない「短絡線」区間も、実際には旅客会社の線路であることがほとんどだが、全国で数ヶ所に自社線路を保有する第一種事業区間がある。近年は漸減が続き、ここも2004年に列車の運行がなくなり実質廃線となっていた。

門司港レトロ地区観光振興の一環として北九州市は同線の活用を決定、線路を譲受して「景観の鑑賞、遊戯施設への移動その他の観光の目的を有する旅客の運送を専ら行う」特定目的鉄道で事業化を進めた。運行は筑豊地区の特定地交線を引き継ぐ三セク平成筑豊鉄道が行い、2009年4月26日からトロッコ列車「門司港レトロ観光線 (愛称やまぎんレトロライン)」の旅客営業を開始している。
営業区間は九州鉄道記念館~関門海峡めかり間の2.1km、2両のトロッコ客車を小型ディーゼル機関車2両が両端から牽引・推進する。速度は15km/h、本来の「旅客鉄道」としては日本一遅い部類に入るだろう。なお (ケーブルカー等を含まない) 日本最小の鉄道は千葉県の芝山鉄道 (営業キロ2.2km) で、同線はそれより短いものの線籍上平成筑豊鉄道の一路線なので、記録更新ではない。
昨年4月末の開業から人気は上々で、すっかりレトロ地区観光の主役となった同線は、ことしも3月中旬から11月下旬まで週末中心の運行が予定されている。

門司港レトロ観光線

DB101-トラ701-トラ702-DB102

  • 平成筑豊鉄道門司港レトロ観光線 ノーフォーク広場←出光美術館 2009-4
  • D700, AF-S VR-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G, ISO200-0.7

ここが旅客鉄道路線ということになれば、全線完乗記録保持者として行かないわけには! と、昨年九州を訪れた際に立ち寄……いやむしろ主目的のひとつだった。門司港の改札を出て九州鉄道記念館のほうへ向かうと、その脇に新しい やまぎんレトロラインの駅ができている。平日でも次の列車を待つ人が並んでおり、土・休日なら長蛇の列だろう。
やがて向こうから小さな青い機関車が、大きい「潮風号」のヘッドマーク、さらに大きな客車を牽いてあらわれた。出自は全国各地の駅側線や専用線などで貨車や工事機械を動かす入換動車である。最近では本線機関車が入換を担当することが多いし、そもそも貨物扱いの廃止などで活躍の場は狭まっているのが現状だ。最高速度からもわかるとおり本線走行用ではないが、熊本県の三セク鉄道・南阿蘇鉄道でトロッコ列車の牽引に車籍を得たもので、いっぽう客車 (もとトラ70000) は島原鉄道の雲仙普賢岳観光トロッコ列車に使用されていた。全長10mにも満たない車両だが、機関車が機関車だけにとても大きく見える。

天井の水族館走り出せば、もとが2軸の貨車とあって乗り心地は相応のものだが、それを楽しむのがトロッコ列車というもの。文字通りの潮風が車内を通り抜け、やがて前方に関門橋が見えてくる。漁港の突き当たりで線路はトンネルに入り、そこで車内は真っ暗に……と同時に天井を青色の魚が泳ぎだす。当地周囲に生息する魚の魚拓で、景色が見えないのを逆手に取ったものだ。1分間の水族館のあとはちよっとした森林鉄道の雰囲気で、ほどなく終点に達する。所要10分でもみどころは多い。

愛称の「やまぎん」とは? 私も最近までわからなかったのだけれど、これは下関市に本店を置く山口銀行のこと。海峡向こうの会社が命名権を買い取っていたのだ。和布刈公園から望む関門海峡の先はすぐ本州 (火の山) で、壇ノ浦の合戦で知られる赤間神宮も九州側からよく見える。門司港から唐戸への船便、関門橋の真下には徒歩連絡も可能な関門国道トンネルもあり行き来は容易だ。夏には海峡をはさんでの花火大会なども開かれ、両者の関係は深い。



■4/15掲載の「まさがいちがし」、相違点はこちらです。

この記事へのコメント

2010年04月25日 23:23
門司港レトロ観光列車の登場ですね!あの街中を走るトロッコ列車でさえ、サイドビューですか?!よくそんな場所があったのですね、と思えば、、、海上からですか?並んだヨットが、潮風を受けて走る路線を感じさせていますね。
天井の魚たち、ほんの数分のことですがアイデアですよね。乗客が天井を見上げているところのお写真、車内の雰囲気をよく捉えられていますねぇ。私は天井だけ撮っちゃいましたから(笑)
2010年04月27日 23:08
さくらねこさん こんばんは。

これですが船の上から撮った……のではなく(笑)、漁港の突堤側から港越しに見た図なんです。海がテーマですから、やはりそれらしい光景がほしい、それで障害物が少ないところ……となると非常に限定されてしまいますね。くわえてフェンスが立っているのはいかんともしがたく、まあある意味苦し紛れとも言えます(苦笑)

トンネル内の演出はニュース等で知っていたので、最初から期待して待っていました(笑) 低い位置(いわゆるウェストレベル)から撮るのが好きなもので必然的にこういうアングルになってしまうんですが、お褒めいただきありがとうございます。さくらねこさんが撮られた、明るいところで波にゆれるような様子も改めて拝見しましたが、これも表現として面白いですね。
2010年04月28日 09:07
おはようございます。
このトロッコ列車、とても可愛いです。
海のそばを走るサイドビュー、いいですね!
トンネル内の青い魚も素敵ですし、一度乗ってみたいけど、九州は近いようで遠いです…。
大成の男
2010年04月28日 16:46
こんにちは♪

今回のテーマとなった門司港レトロ観光線。
とある鉄道雑誌でこれらの記事を拝読、我住まいから本州をも通りこした九州と遠路ながら、写すにも乗るにも大変魅力を感じました。
15キロとの低速、海沿いを心地よい潮風を受けながらの旅。
普段の忙しい時間を忘れ、トロッコ列車に身をゆだねてみたいですね。
2010年04月30日 21:30
静さん こんばんは。

潮風を受けて走る青いトロッコ列車、機関車の小ささも相まってかわいらしく見えますね。トンネル内1分間の水族館もなかなかの演出です。
トロッコのほかにも門司港レトロ地区、そして海峡を渡って下関唐戸にはいろんな見どころがあります。なかなか四国からだと経路が難しいところですが、ぜひ一度訪問の機会をお作りいただければと思います。
2010年04月30日 21:31
大成の男さん こんばんは。

魅力のある鉄道風景は、遠くにあっても訪れてみたいという気にさせてくれるものですね。JR九州ではこれにも増して彩りのある車両が多数走っておりますので、ご訪問されれば必ず満足いただけると思います(笑)
北海道ではノロッコ号、本州各地でもオープンデッキのトロッコ列車が活躍していますね。ときに撮影を忘れてこんな車両に揺られ、風を感じてみたいものです。

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  • 天井に泳ぐ魚たち~門司港トロッコ観光列車

    Excerpt: 潮風を受けて軽やかに走るトロッコ列車 天井には 海のさかなたち 射しこむ光で 波間に揺れるよう 私の心も誘われて 海の底 *門司港レトロ観光列車「潮風」号 ☆CANON/PowerS.. Weblog: さくらねこのPHOTO散歩 racked: 2010-04-25 23:13
  • 緑の中をゆく「門司港レトロ観光列車」

    Excerpt: 関門海峡の潮風を浴びて 夏の日差しに 緑が木陰を落とす中を 青空よりも 海の色よりも 青いトロッコ列車が走ってゆく *門司港レトロ観光列車/関門海峡めかり駅付近 ☆CANON/P.. Weblog: さくらねこのPHOTO散歩 racked: 2010-04-25 23:14