海をわたる鉄道

鉄道は水没区間を走ることはできない。それは当然のことだ。しかし地盤のきわめて緩い場所、たとえば北海道など開拓地の湿地帯や河川敷などでの物資運搬では、最も手っ取り早く造れるのはじつは鉄道だった。雑誌でそれを取り上げたものを見たのだが、まともに走れるのかと思うほどぐにゃぐにゃの軌道が印象的だった。まあ速度が必要とされないところだし、その程度で問題ないのだろう。
今回取り上げるのはそういうものではなく、本当に水の上を走っているJR系鉄道路線。正確には昨年まで……と書けばお気づきの方も多いだろう。日本三景・安芸の宮島へ行く 宮島航路 (宮島口~宮島) は、JR西日本系列会社が運航する鉄道連絡船の末裔だ。

青函や宇高のように車両継走を行った本格的な連絡船と趣旨は異なるが、宮島航路も国鉄~JRが直営してきた、れっきとした鉄道連絡船だった。その歴史は非常に古く国有化が1906年、それ以前も山陽鉄道 (現在の山陽本線) の連絡航路として宮島への観光客を運んでいた。瀬戸内海には、ほかに仁堀航路 (仁方[呉線]~堀江[予讃本線])、大島航路 (大畠[山陽本線]~小松港) という国鉄航路もあったが、大島は道路橋の完成によって1976年に、仁堀は民間航路に押されて1982年に廃止されている。余談だがその民間航路でさえも、昨今の事情から廃止に追い込まれてしまった。
「一本列島」の完成と引き換えに青函・宇高両航路が廃止された後も、本航路はJR唯一の連絡船として残存、「青春18きっぷ」でも乗れる船として知られていた。しかし2009年2月にJR西日本は子会社のJR西日本宮島フェリーを設立して同年4月1日に経営を移管、国内の鉄道連絡船はその歴史に幕を下ろしたのだった。時刻表などでは民間航路扱いとなったが、18きっぷ・フルムーン等での乗船は引き続き可能となっている。

みやじま丸

みやじま丸

  • JR西日本宮島フェリー 宮島口←宮島 2009-8
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

現在の宮島航路には、みやじま丸・みせん丸・ななうら丸の3隻が就航し、となりの松大フェリー (広島電鉄系) とともに昼間15分 (多客時10分) 間隔で出航する。みやじま丸は2006年に新造船へ交代、エンジンで発電機を回し、インバータ制御のモーターでスクリューを回す最新鋭の電気推進船となった。海を行く電気式気動車といってもいいかもしれない。
強い左右対称性を持つこの形の船が港に泊まっていると、どっちが前だかわからくなりそうだ。実際、この船は操舵室を船首・船尾両側に備え、どちら向きにも進むことができる両頭船だ。ちなみに図面上はこちら側が左舷とのこと。昼間の宮島ゆきは厳島神社大鳥居沖に接近するサービスを行っており、1階のバリアフリー室からも世界遺産の威容が存分に味わえる。
両頭船自体は従来から短距離フェリー向けに存在するもので (同航路ではみせん丸も該当)、入港時の旋回を省き時間短縮に貢献している。さらにみやじま丸では推進がモーターであることを活かし、推進ポッド (スクリュー) は360度全方位に回る。つまり横方向に移動することだって可能というユニークな船で、その先進性と環境性能の高さから2006年シップ・オブ・ザ・イヤー小型客船部門賞を受賞した。

この記事へのコメント

2010年04月03日 08:29
おはようございます。

鉄道連絡船の末裔なのですね。
左右対称で面白い船ですね~。
数十年前、宮島には新婚旅行で行きましたが…、何に乗ったのかまったく覚えていません。
その前に松山から乗った水中翼船 (笑) で酔ってしまったこともあって…。
実は仁堀航路というのも松山にいながら数年前までまったく知りませんでした。
宮脇俊三さんの 「最長片道切符の旅」 を読んで、こんな航路があったのか…とはじめて知ったのです。
いつかまた、宮島に行ってみたいと思っていました。
ぜひこの船に乗ってみたいです。
2010年04月04日 22:11
静さん こんばんは。

宮島航路は、渡った先に鉄道・バスなど交通機関がまったくないという、鉄道連絡船としては異端のものですが、歴史的な経緯で連絡船として運航を続けていたようです。
両頭船は前後対称なのが面白いですね。私が最初に乗ったのは東京湾フェリー(久里浜~浜金谷)の帰りで行きは普通の船だったから、出航したらおなじように旋回する……はずがずんずん進んでびっくりしたものです。

宮島にはご新婚の際に訪れられたとのこと、しかも松山から水中翼船! これは乗ってみたかったなあ…乗り心地はかなりのものと聞きましたが(笑) ホバークラフト(宇高にもありました)は大分で乗れたものの、これも昨年廃止になっていますね。
仁堀航路は宮脇さんの「最長片道切符の旅」に四国回りのルートの核として登場しましたね。これがなくなって最長距離はかなり減ったようです。
2010年04月08日 00:09
宮島への連絡線、数年前に行った折に乗りました。宮島に近づいていくにつれ、海が光り、とても美しかったのが印象的でした。降りたら、駅舎?の前には、いきなり鹿がいっぱいでした(笑)。
しかし、船もしっかりサイドビューなんですねぇ。昨年JRでなくなってしまいましたけど、まだ青春18は使えるんですね。
そうそう、今日の1枚、見つけました!撮り鉄も風景のひとつ、今を感じるカットですね。もちろんSLの迫力は満点~♪
2010年04月08日 22:07
こんばんわ!

広島長崎へ旅行へいったときに
宮島へも足を運びました!

広島までヒコーキでバス-山陽線と乗り継いで
こちらのJRのフェリーを選んで乗りました♪
宮島の2つのロープウェイに乗って
帰りは宮島口からリトルダンサーで市民球場まで!

宮島のロープウェイも
古くて珍しいゴンドラらしくて
よくわからないながらも
貴重な経験をさせてもらいました(^^;
2010年04月08日 23:49
さくらねこさん こんばんは。

最後の鉄道連絡船だった宮島航路、現在でも青春18きっぷが使用可能ですね。それにしても船までサイドビューを撮っているなんて、ホントに何考えているんだか(笑)
宮島へ行ったのは2回目だと思いますが、この日も宮島駅(直営時代は駅と言ってましたね)を降りると鹿がお出迎え…もっとも、とても暑い日だったのでノビぎみでした(笑) ちょうど干潮で、鳥居の真下まで歩いて行けました。
あちらのカットもご覧いただいたのですね。ありがとうございます。つくづく変わったアングルが好きでして(笑)
2010年04月08日 23:50
Anさん こんばんは。

宮島へのフェリーはJRと松大(広電)の双方がわずかに時間をずらして出航しています。AnさんもJRの方に乗られたのですね。
参考記録ながらJR線のりつぶしには外せない航路だったので、私としてはとりあえず片道JRに乗れば残りはどちらでもよかったんですが、2回行った両方ともJRフェリーでの往復でした。ロープウェイまでは足を伸ばせずでしたが、またの機会にはじっくり回りたいものです。
2010年04月13日 00:53
こんばんは。

文より先に写真を見て、その瞬間、これは何だ?
って、思ってしまいました(笑)。
そうそう、宮島航路。
この航路がJRの直営でなくなってしまったゆえ、鉄道航路も過去のものになってしまいましたね。
青函も宇高もとっくのとうになくなってしまいましたが、ひとつの時代が終わってしまったような感じがします。

それにしても両頭船というのも面白いです。
これ、図面上で手前側が左舷ということは画面左側が1エンドになるのでしょうか(笑)。
いや、運転台のある方が2エンドだから…
あっ、どっちにも操舵室があるんだった(笑)。
2010年04月15日 23:20
加藤さん こんばんは。
ビックリしましたか?(笑)

宮島航路は最後の鉄道連絡船でしたね。私も一度直営時代に通って、青函(JRになって)・宇高(国鉄時代)と3航路を走破してきました。
宮島は実態としては離島への観光船 兼 生活航路なのですが、振り返ってみればずいぶん歴史のある航路だったと気づいた次第。営業上ほとんど変わりありませんが、連絡航路としての終焉は鉄道歴史上ひとつの区切りになったといえます。

両頭船のシルエットは面白いですね。こちらが左舷だそうですから、機関車的には左が1エンド、客車的には2-4位ということになりますか(笑)

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