風の町へ

富山市中心部から南に15km、現在は同市に編入されている旧八尾(やつお) 町は、毎年9月に行われる「おわら風の盆」が最近とくに著名だ。アクセスのひとつである高山本線は同時期の列車増結・増発に加え、大阪から特急〔おわら〕がキハ181系気動車で長躯乗り入れることでもファンの注目度が高い。
定期の特急はJR東海から乗り入れる〔ひだ〕のみで、猪谷(いのたに)~富山間のローカル列車はJR西日本の小単位輸送向け車両 (いわゆるレールバス) キハ120形でまかなわれている。前後で面の色が違う風変わりな300番台のうち、345・351はラッピングで当地の風土を紹介している。「安田城月見の宴」「八尾曳山」「富山の売薬」「売比河鵜飼祭」そして「おわら風の盆」。

キハ120-345

キハ120-345

  • 高山本線 千里←速星 2009-12
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

そんな高山本線富山口でもうひとつ注目を集めるのが、予備車として富山地域鉄道部に配置されているキハ58系4両の存在だ。
2005年の合併で沿線は猪谷・八尾まですべて富山市となったが、本線といっても同区間の実態は前述の通りローカル線と大差がない。そこで同区間の活性化を目指す社会実験として、婦中鵜坂(ふちゅううさか) 臨時駅の設置と越中八尾~富山間の増発が、2008年から3年間限定で行われている。運用増のため、予備車扱いのキハ58系も朝夕に限って同区間で定期運用についているのだ。いずれもキハ58-28のペアで、国鉄色と「高岡色」と呼ばれる小豆色に白帯の地域色がそれぞれ1編成で、この日は高岡色の出番だった。
どちらが良かったかの判断はつきかねるが、今後JR西日本では塗装を整理して一色塗りとし、気動車は首都圏色 (朱色) に統一する方向とのこと。これから逆に、地域色の方が貴重になりそうだ。朝方の雨雲はすっかり消えて澄み切った空の下、わずかに残る雪の上で濃い塗色がよく映える。

キハ58 1114ーキハ28 2346

キハ58 1114ーキハ28 2346

  • 高山本線 千里→速星 2009-12
  • D700, AF Nikkor 50mm F1.4D, ISO200

この仕業がキハ58系最後の定期運用である。それも朝方の列車は土休日運休。全国津々浦々に走っていた急行形気動車キハ58系が、いまや絶滅危惧種になってしまった。
同系による急行運用自体は分割民営化前から急激に減少し、各地に散らばった車両のほとんどは普通列車としての運用。やがて後輩のキハ40系とともに、さまざまな地域色に塗られていった。経年は進んでいたが、とくに2エンジンのキハ58は勾配路線に向き、電車と比べて車両取替えのペースが遅かったので、つい最近までローカル線で当たり前にその姿を見ることができた。
しかし製造後40年を超過して老朽化が著しい急行形気動車は、2008年10月にJR四国で、2009年3月にはJR東日本で定期運行が終了。大糸線 (南小谷~糸魚川間) のキハ52とあわせ、ここが国鉄気動車全盛期の香りを残す最後の場所になった。

いつ置き換えられてもおかしくないと噂されていた同車だが、社会実験の終わる2011年3月に引退することが先頃明らかとなった 。1961年の登場からちょうど半世紀での終幕である (ジョイフルトレインを除く)。車両取替えなのかは不明だが、昨今の情勢だと増発自体が継続されるか微妙なのが、なんとも……。
この3月には一足先に大糸線キハ52が引退、北陸本線でも新型電車521系が金沢まで延伸。北陸新幹線が到達する2014年までには、北陸の在来線から国鉄の風はほとんど消えてしまいそうだ。

この記事へのコメント

2010年01月28日 05:33
おはようございます。
ラッピング電車のイラスト、大きな写真で拝見しました。ご当地の伝統的なものをラッピングすることもあるのですね。彩りも落ち着いた感じで、絵のタッチはどこか懐かしさを感じさせるもので・・・いいなぁ、って思いました。
こういうラッピング電車って、どういう方が企画されるのでしょうか。風土にあったものを採用される所、いいアイディアですね(*^o^*
2010年01月28日 19:21
こんばんは。

かつて一大勢力を誇ったキハ58も今や風前の灯になってしまったんですよね。
こちらではキハ56とキハ27でしたが、それこそ国鉄時代は線路際に黙って立っていればいくらでも来たものですが、もうかれこれ全廃になって何年経ったものかと思うほど過去のものになってしまいました。
駅に行けばカラカラと聞こえてきたDMH17系列のエンジン音もこちらではすでに聞くことができなくなってしまいましたし。
そういえば日高線に充当されていたキハ130やちほく高原鉄道のCRなど軽快気動車もこちらでは一時見られただけで気がつけばもうないんですよね。
2010年01月30日 20:45
こんばんは。

富山では今現在もキハ58が運転されていましたが、こちらも2011年で終了なのですね。
国鉄色にこの塗装と2パターンある富山のキハ58も是非見ておきたかったものですが、果たして撮影の機会に恵まれるのか・・・といった感じです。
昔は北海道でもキハ56等がよく見られ、私も幼かった頃に臨時のキハ56やキハ27を見ることが出来ましたが、その車両たちも既に全廃。本当に寂しくなりました。

去年夏に見ることが出来た大糸線のキハ52もキハ20に置き換えになるとのことですよね。
こちらも昔ながらの顔が本線上から去ることにもなりそうで寂しい限りです。
2010年01月30日 22:08
スウさん こんばんは。

キハ120のラッピング、気に入っていただけたようですね。渋めの色とイラストが好感が持て、ご当地らしい車両です。
ここに載っている絵のいくつかわからなかったので検索して調べてみました。売比河とはいまの神通川のことだそうです。いずれも当地の特色を良くあらわしています。風の盆で訪れご覧になった方には一層印象深いでしょう。
2010年01月30日 22:09
加藤さん こんばんは。

かつて国鉄気動車の代名詞ともいえたキハ58系、最初に登場したのは北海道形キハ56・27だそうですね。それからほぼ半世紀、全国どこでも見られた車両が過去の物になろうとするのは一抹の寂しさを覚えます。乾いた音を立ててアイドリングし、どっしりとした重量感に比べ軽やかなジョイント音を立てる気動車も、気づけばすっかり無くなってしまいました。
かわってローカル線では、レールバスなど軽快形が幅をきかせてきました。北海道では日高本線のキハ130とかちほくCRでしたね。しかし日高では早々に引退してキハ40が後釜に座るという事態に、当地の半端でない厳しさを考えさせられたものです。
2010年01月30日 22:11
特急北斗さん こんばんは。

最後のキハ58定期仕業が見られる高山本線ですが、朝の列車が平日にしか走らないのが撮影班には厳しいところですね。今回は冬休み期間で、年末の土休日ダイヤになる直前という隙間で見ることができました。
国鉄色もいいのですが、マニアック視点で見れば、高岡色のキハ58(写真左)が唯一のパノラミックウィンドウ車という点が見逃せません。さらに高岡色も将来的には廃止されると思われ、大糸線のキハ52引退後はますます注目されるでしょうね。

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