ふるさと発なつかし経由おもいで行き

またひとつ……いやふたつ、夜行列車の灯が消える。
2010年3月13日のJRグループダイヤ改正で、最後の14系ブルートレイン―寝台特急〔北陸〕と、最後のボンネット形特急電車489系を使用した急行〔能登〕両列車の廃止が発表された。代替として週末や学休期間に臨時夜行急行が運転予定とされるが、現行の車両はいずれも廃車と思われる。
夜行長距離列車の不振は今に始まったことではないし、いまから安くしても利用客が帰ってこないことはもう明らかだ。さらに廃止理由に「老朽化により」とまで付け加えられたのでは、引退もやむなしであろう。とくに〔能登〕はもともと信越本線 (碓氷峠) 経由で、本来なら長野新幹線の開業とともに廃止されてもおかしくなかったのが、高崎~直江津間を上越線回り (途中営業停車なし) に変えられ、残り少ない普通急行列車の砦を守ってきた。

〔能登〕の魅力をあれこれ記すまでもないが、改めて簡潔に言えば国鉄特別急行列車の姿をほぼ残していることにある。夜行としては走行距離が短いため撮影できる期間と場所が極めて限られ、〔北陸〕とともに攻略の難しい列車の筆頭だった。立山連峰から昇る朝日に輝くボンネット特急形の写真を見る度にため息が出たけれど、私自身は結局その姿をとらえることができずに終わってしまいそうだ。
金沢総合車両所に所属する489系は夜行に備えて室内灯を減光できるほか、首都圏走行に必要な保安装置ATS-Pを装備している。このため北陸地区から首都圏への団体臨時列車、特に「舞浜臨」――東京ディズニーリゾートへの団臨には毎回充当され、ほぼ月に一度のペースで上京している。〔能登〕走行シーンが撮影不可能な秋~春にかけては、その姿をとらえる貴重な機会を提供してくれた。

クハ489-501

クハ489-501

  • 高崎線 熊谷(タ)←籠原 2008-6
  • D200, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

ことしの春に富山へ行ったとき、週末早朝の氷見線から入ろうと思うと、〔北陸〕か〔能登〕で乗りつけるのが都合がよい。もしかするとこの先もう味わえないかも……と、〔能登〕のグリーン券を買った。春休みは終わっており、数日前でも席は楽に取れて2人掛けを独占できたし、普通席もかなりの余裕だったようだ。
あれほどたくさんの特急列車に連結されていたグリーン車サロ481もすでになく、〔能登〕のサロ489が一族最後の生き残りだった。国鉄形スタイルそのままで少々古びた座席のかけ心地は、最近の車両にはない独特のものだ。背もたれは決められた角度でしか止められないが、座布団がそれに連動して前方が少し上にせり出すようになっている。だから思い切り倒しても腰がずり落ちることなく、安定した姿勢をとることができた。そもそも最近はグリーン車でものけぞるほどには倒れてくれず、むしろ昼間から夕方のくつろぎとかパソコン作業を重視しているのだろう。
翌朝、富山平野は濃霧だった。〔能登〕も徐行で遅れてしまい、乗ろうとした氷見線に接続できず1時間ほどロスした…とか、城端線や北陸本線でチューリップとの取り合わせを狙ったのにまったくダメに近かった…とか、それで日曜日に米沢盆地にいるのは一体どうしたことか…とか、振り返れば思い出のひとつ。

サロ489-27

サロ489-27

  • 高崎線 籠原→熊谷(タ) 2008-6
  • D200, AF Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

下り〔能登〕はながらく高崎線の最終列車だったから、とくに週末は「帰宅客」……というか酔客の混雑がひどかったらしい。その情景(?) を表現した曲が、あの「MOTER MAN 終電上野発23:54分」(SUPER BELL"Z) だったが。当時は同曲で触れられているように福井まで運転していたから、撮影範囲も広かった。結局2002年から〔能登〕の時刻を繰り上げて旅客を分離したけれど、そのために見かけ上の乗車率まで下降してしまったのは皮肉というものか。
一方の上り列車にも隠れた使命があったようだ。高崎4:37、熊谷5:08発で上野着6:05、京成上野から6:30発〔スカイライナー〕に乗ると成田空港 (第1ターミナル) には7:29に着く。または東京6:30発の〔成田エクスプレス〕が同じく7:29着。しかし最近では北関東を超早朝に出発する空港連絡バスが運行されて、その重みも薄れてしまっている。

代替の季節列車には新潟セ485系が予定されているとのことで (レイルマガジン2010-2より)、となればT-18編成 (国鉄色クハ481-1508が組成される) 充当の可能性も高そうなのが、わずかながらも残る希望だろうか。いずれにしても〔こだま〕以来のボンネット形特急車両の歴史は、あと2ヶ月半ということになる。
改正後、全国JRに残る定期急行列車は〔はまなす〕〔きたぐに〕のわずか2往復、青いブルートレインも〔北斗星〕〔あけぼの〕そして〔日本海〕の3往復となる。折しも登場してきたJR東日本の新型電気機関車EF510形500番台は、ブルートレインそのものの青い車体。この機関車はこの先何を引っ張り、何を乗せていくだろうか。



◆2009年の新規記事は今回で終了いたします。

この記事へのコメント

急行越前
2009年12月27日 22:09
日本海は・・・?
2009年12月27日 22:22
急行越前さん

>日本海は・・・?
あ、ほんとだ(苦笑)
しかし〔日本海〕も厳しいでしょうね、車両をいつまで使うか、が鍵かもしれません。撮影・乗車はお早めに…
(追補記しました)
2009年12月28日 00:01
「能登」「北陸」同時に廃止の発表がされてしまいましたね(涙)ボンネット型で定期で走る姿は貴重なだけにとても残念です。昨夏、東京へ行った折に能登で北陸周りで帰ってきた時、窓から見た朝日は忘れられません。あの時はお盆直前だったからかレディースカーは満席で意外な人気に驚いたのですけど、普段の利用は少ないのでしょうね。雪で先日は運休が続いてましたけど、最後まで無事走り抜いて欲しいです。
京都大阪で見ることのできる唯一のブルトレ「日本海」、乗換えなしで青森までいけるメリットは大きいと思います。まだまだ走っていて欲しいなあ。先日大阪駅で出発する「きたぐに」を見ましたが、こちらの車両も塗装がぼこぼこで、とても可哀そうな状態でした。
今年もいろんな車両のサイドビューを見せていただき、ありがとうございました!また私のつたないBLOGにもコメント、補足説明を頂いたり、ありがとうございました。来年もよろしくお願いします♪
2009年12月28日 08:19
おはようございます。

本当にこういうボンネット型の列車がなくなるのは寂しいですね。
この形、好きなんです…。
急行列車もたくさん姿を消し、ブルートレインもどんどん減っていくんですね。

今年も素敵なお写真とその列車にまつわるお話を丁寧に教えていただいてありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。
2009年12月30日 17:17
こんにちは。

私も能登・北陸の撮影は到着が早すぎるゆえに今年の6月に一度だけトライしましたが天気に恵まれず来年こそリベンジと思っていただけに残念でなりません。因みにボンネット489系はTDL団臨としての運用も無くなるのでしょうか。
2009年12月31日 10:59
さくらねこさん こんにちは。

距離的にはかなり短く、今まで2往復も残っていたことが異例といえた両列車もとうとう終着駅が近づいてきました。さくらねこさんは昨夏〔能登〕に乗られましたね。夜通し走って見られた朝日の光景は、心に残る想い出となることでしょう。
先日、北陸本線のとある駅で両列車+〔日本海〕を夜間・早朝撮影してきました。冬休みだからすこしは多いと思いきや他にはそれぞれ0・1名という状況で、心静かに(といっても停車時間がないので急いで)撮影できましたが、これからいつもどおりの経過になるのかと複雑な気分にもさせられました。

こちらこそ一年間、コメントをお寄せ頂き有り難うございました。来年もこんな形で続いていく予定ですので、よろしくお付き合い下さい。
2009年12月31日 11:09
静さん、こんにちは。

特急電車の象徴ともいえたボンネット形の国鉄色、ファンならずともなじみの姿ではなかったかと思います。いままで残っていてくれたことに感謝したいくらいですね。
あたりまえのようにあった急行やブルトレが、完全に無くなる日が来てしまうことも、そろそろ覚悟をせねばならないのかもしれません。

ことし一年ご覧頂き、またコメントも有り難うございました。できるだけ平易に書いてきたつもりですが、まだ至らぬ部分もあるかと思いつつ、今後もいろいろ紹介してまいりますので、よろしくお願いします。
2009年12月31日 11:10
nobuさん、こんにちは。

〔北陸〕〔能登〕は撮影可能期間の短さから、少ないチャンスが悪条件でも撮りきる力を要求されました。私としても、まだやってみたいことがあっただけに、次の時季が無いのが残念です。
来期以降も残る列車についても、次回や次年をあてにせず、今できることをきちんとやっておく必要がありそうですね。
2009年12月31日 12:04
こんにちは。
携帯からの投稿です。

遂に「能登」と「北陸」が廃止になってしまいますね。
昨年から幾度か関東を訪れ、夜に何度も撮りに行ったのがこの列車でした。
今年の夏は特に重点を置いて、朝にも2回ほど撮りに行き、また撮れればいいな、と思っていた矢先の廃止発表でした。

かねてからこの「能登」に関しては廃止になると聞いていたので、覚悟はしていましたが、実際に発表されると寂しいものです。
そして来年度からは新潟の485系が臨時急行を務めるのだとかで、どうやら「ムーンライトえちご」にも変化が出てくるのだそうですよ。

さて、今年は拙い弊ブログにもお越し頂き、有難うございました。
来年も是非宜しくお願い致します。
2009年12月31日 13:33
特急北斗さん こんにちは。

車齢や利用率のことを考えると、いつ無くなってもおかしくない両列車でしたが、正式に発表されるとやはり寂しいものです。私ももっといろいろな場所でいろいろな角度から撮ってみたかった… 特急北斗さんもことし夏に両列車を記録され、これが貴重な記録となりますね。
臨時列車の485系は新潟の陣容から国鉄色中心と予想できますが、〔ムーンライトえちご〕の行方ともあわせ気になるところですね。

こちらこそお越し頂き、またコメントもありがとうございました。来年もよろしくお願いします。
小さな鉄道博物館
2009年12月31日 18:54
こんばんは。

今年最後の書き込みになりました。今年一年素晴らしい写真をブログや鉄道雑誌で拝見させていただきました。参考になる写真も多く、いつも勉強になります。
また宮本さんとは僅か2日間の間にまったく別な場所で出会える偶然もありましたね。年末は例年以上に積雪が多く雪煙を楽しめそうです。
ついに能登の廃止が決まりましたか。本当に夜行列車にとっては厳しい時代になってしまいましたがお互いに思い出を残す記録に心がけていきましょう。
来年もまたよろしくお願いします。次回はゆっくりと十勝で撮影を楽しんだ後、当博物館でゆっくり話しがしたい物ですね。
2009年12月31日 19:48
こんばんは~

いよいよ能登と北陸も廃止が発表され、貴重なボンネットもついに来たか、といった感じがします。
それにしても夜行列車に置かれた環境はとても厳しく、ダイヤ改正ごとに廃止のニュースが飛び込んできますよね。
ここまで続くと今度はどの列車だろう…なんてつい考えてしまいます。

今年一年いろいろとありがとうございました。
来る2010年は怒濤の104両に負けないサイドビューを期待しております(笑)。
それでは良いお年をお迎えください。
2009年12月31日 20:18
こんばんは

昨年から寝台特急、夜行急行の廃止の声を次々と聞くたびに、車両の老朽化というのもありますが、時の流れと共に旅の形も変わっているんだな、という感じがします。
もし私が旅の移動の手段として選ぶのは、時間に余裕がない限りやはり飛行機となってしまうと思います。利用もしないで寂しいと書くのは不謹慎かもしれませんが、旅を楽しむ手段としてやはり寝台列車は残っていてほしいと感じます。
ボンネット車両は北海道に住むものには馴染みはありませんが、独特の風貌には実際に会って見たかったなと思いました。
「はまなす」も東北新幹線新函館延伸の時にはどうなるのか心配です。

今年もさまざまな車両のサイドビューを、詳しい解説とともに拝見させていただき、ありがとうございました。時には知識不足でコメントできない記事もあって、申し訳ありませんでした。
来年も宮本さんのご活躍をお祈りしています。
また拙いブログへいつも温かなコメントをくださり、ありがとうございました。
どうぞ良い新年をお迎えください。来年もよろしくお願いいたします。
2009年12月31日 22:17
小さな鉄道博物館さん こんばんは。

こちらこそ参考にしていただけるなどとても光栄に思います。また、先月の183国鉄色ではお世話になってしまいました。感謝しております。

ダイヤ改正のたびに廃止が発表され、残る列車ももはや順番待ちといった感じのある国鉄夜行、東京~北陸もその幕が事実上下ろされることになりました。限られた撮影機会を、これからはいっそう大切にしていかなければなりませんね。

ことし一年ありがとうございました。次回の道東訪問には道東の本格的な雪模様と共に、ぜひ博物館の見学をさせて頂きたく思います。来年もよろしくお願い致します。
2009年12月31日 22:18
加藤さん こんばんは。

時代の移ろいによるものでもありますが、国鉄形・急行・夜行という懐かしアイテムは、どれも引退の順番待ちに入ってきたと最近感じずにはいられません。これからも機会をみつけては丁寧に記録していく必要がありそうです。

ことし一年ありがとうございました。後半は若干息切れ? だった風もありましたが、最後の最後にメチャクチャやってしまいましたね(笑) 来年は少し気分を落ち着けていきたいと思っております。もちろんこのネタは続いていきますけど(笑) 加藤さんのさらなるご活躍をご期待するとともに、来年もよろしくお願いします。
2009年12月31日 22:19
水無月さん こんばんは。

夜行列車廃止の報を聞くにつけ、こうして撮影ばかりで利用がない身がただ惜別を言うだけで本当にいいのか? と自問をせずにはいられません。同時に、移動手段としては役目を終えたとしても、まだ鉄道の旅というものには非常に大きな商品価値があるはずだ、とも。事実、JR九州のリバイバルブルトレは運転の度に速攻で埋まり、いまだ人気が高いことから車両全廃が先延ばしになっているのだそうで、「トワイライト」「カシオペア」のような売り方に活路を見いだして欲しかったなと思います。

車両1両専門という、重箱の隅を突いているとしか思えない幣ブログですが、こうしてご覧頂きコメントいただくこと自体に感謝しております。できるだけ平易に説明したつもりですが、まだ至らぬ点もあったかと存じます。来る年にご期待も頂き大変恐縮に思うと共に、来年もまたよろしくお願いいたします。

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