マルーンの旋風

大阪梅田を基点に京阪神へ路線を広げる阪急電鉄。箕面有馬電気軌道から関西私鉄の代表格にのぼり詰めた同社は、宅地開発や娯楽施設とセットした路線の開拓など見本的な経営手法で知られ、同じような路線を展開した東京急行電鉄と並び「西の阪急、東の東急」と称される。
その特徴をひとことで言えば「上質」に尽きる。「阪急マルーン」と呼ばれる艶やかな栗色の車体にアルミの窓枠が光り、最近まで日よけに「よろい戸」を常用していたことも見逃せない。その塗装は肩にアイボリーを追加した以外は一貫し、室内の落ち着いた雰囲気もあって、私鉄の中でもトップクラスの品位といえる。「皆様」で始まり「ただいま~いたします」と続く駅放送の節回しに、デパートに足を踏み入れたときのちょっと高級な空気を感じるのは、私だけではないだろう。
関西の私鉄は「官」(鉄道省→国鉄→JR) への対抗意識が強く、長年各社が独立してそれぞれのポリシーを保ってきた。しかしJR西日本が路線ネットワークをフル活用して都市圏輸送で優位に立ったこと、阪神~近鉄の相互直通運転や阪急・阪神の経営統合などから、その味はだいぶ薄まったようだ。そのなかで電鉄としての阪急は、いまなお伝統を重んじる数少ない私鉄であるといえるだろう。

6454 阪急電鉄

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現在の京都線は、新京阪電気鉄道として建設された、もともと京阪の子会社だった。京阪線の高速バイパスとして両都市をまっすぐに結んだ路線では開業初期から理念どおりの高速運転が行われ、P-6が超特急「燕」を追い抜いた逸話は今でも伝説として語り継がれている。京阪に吸収された後、戦時中の輸送政策で阪神急行電鉄と合併 (京阪神急行電鉄)、戦後の京阪分離時には阪急に残った。
駅間距離の長い京都線は普通でもそれなりに速いが、とくに特急は長年 十三 (じゅうそう: 大阪)~大宮 (京都) 間ノンストップ、2800系や6300系といった転換クロスシート車両が新快速や京阪テレビカーと競ってきた。1975年登場の6300系は、ほぼ全座席をクロスシートとし、両開き2扉を車端に寄せた独特のスタイルが目立つ。座席部が長いので、室内は実寸 (全長はJR電車にくらべ若干短い19m) 以上に広く見える。ちなみに肩のアイボリーはこの系列から採用されたものだ。

9405

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  • 阪急京都本線 上牧←高槻市 2009-8
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO200

京都線も都市間輸送はJRに対し劣勢で、1997年の高槻市停車を皮切りに2000年前後から特急停車駅が急増。対岸の京阪でも途中駅重視に舵を切った結果、阪神間も含めJR vs. 私鉄という競争の構図はすでに存在しない。特急の運転間隔を10分ヘッドに詰めるとともに3扉の一般車も混用されだし、そういう状況でやはり2扉車は扱いにくい存在となっていく。2003年登場の9300系は、転換クロスシートを備えながらも3扉車となった。他車と同じ扉配置とはいえ大型の固定窓、クーラを隠すように張り上げた化粧板などに、独自の優雅さを感じ取ることができる。
9300系と入れ替わりに一線を退く6300系はスタイルの特殊さゆえ一般車化が難しく、大半はそのまま廃車となる予定だ。ただし一部は4両編成に短縮のうえ、室内もセミクロスに変更して嵐山線での折り返し運用についた。外観はそれほど変更されず、かつての栄光を偲ばせてくれる。

この記事へのコメント

2009年11月21日 19:35
見慣れた阪急電車の登場ですね♪
「阪急」の経営といえば小林一三氏、そしてなんといっても「宝塚」!阪神=タイガースのイメージが強いのに対し、阪急=宝塚は優雅なイメージを持ってます。百貨店も梅田には両方ありますけど、阪急は高級感を打ち出しているように感じますし。でも、京都線がもとは京阪の子会社だったとか、こんなに経緯があったとは知りませんでした。
そういえばたしかに阪急は、子供の頃見たのとおんなじ色あいで走ってますね。乗り物酔いしやすかった子供の頃、阪急は河原町まで乗ると酔ってしまいました。地下に入ると、景色が見えないし空気がよどむような気がして苦手でした。
そういえば、新幹線開通前上牧あたりでしたでしょうか、工事の途中で新幹線の線路を阪急が走っていたという逸話、私は小さい頃なので見たことがないのですけど、見たかったものです。
2009年11月22日 07:23
おはようございます。

私は阪急の電車は見たことがないのですが、落ち着いた色の素敵な電車ですね。
こういうのも見てみたいです。
それぞれの路線にもいろいろな歴史があるんですね。

先日、教えていただいた 「龍馬伝」 ラッピング列車、高知県へ出かけたときに見ることができました。
見れたらいいな…と思っていましたが、佐川駅でしたので、まさか本当に来るとは思っていませんでした。
見ることができて、ラッキーでした。
写真は証拠写真でしかありませんが… (笑)。
教えてくださって、ありがとうございました。
2009年11月26日 18:50
こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。阪急電車は、ツヤがあり重厚感のある色調の車体がとても良いと感じます。まだ、アルミ車両はありませんよね?
2009年11月26日 23:00
さくらねこさん こんばんは。お返事が遅れてすみません。

さくらねこさんにとっては阪急電車はおなじみだろうなと思ってました(笑) 小林一三による沿線開拓、変わらない姿、そしてやはり宝塚の存在が阪急のイメージを一層引上げていると思います。
大宮~河原町の地下区間は、東京地下鉄道(現在の銀座線)に続く関西初の地下鉄道だそうです。ちょっと古さを感じさせますね。
新幹線の線路を走った阪急線のエピソードも有名。この写真、すぐ背後がその新幹線の線路でして、上牧~大山崎がその区間です。ちなみに撮影者の背後は東海道本線だったり(笑)
2009年11月26日 23:02
静さん こんばんは。お返事が遅れてすみません。

阪急電車のマルーンは昔から変わっておらず、見るたびに落ち着き安心できる感じがします。こうやっていろいろ調べていくと一路線ごとにいろんな歴史があるのだなあと改めて思います。ちなみに京都線は新幹線と京都~新大阪のほぼ中間で並走して、運が良ければ一瞬すれ違う、あるいは追い抜く光景も見られるかもしれません。

「龍馬伝」のラッピング車両もご覧になれたのですね。お役に立てていただけたようでなによりです。アンパンマンのほうも塗装替えが終わった頃を見計らっていかないと(笑)
2009年11月26日 23:06
teruさん こんばんは。

阪急電車はどの車両も内外とも重厚感があっていいですね。最近の増備は違いますが、日よけのアルミ製よろい戸も特徴的です。
アルミ車体は6300系のあと6000系から採用され、9300系はアルミダブルスキンですね。

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