線路をまもる

毎日私たちが通勤で利用する鉄道が、時刻どおりに運転されることを前提にできるのは、車両が定期的に検査を受けて故障を未然に防ぐ努力が続けられているためだ。それは線路施設についても同じことが言え、定期的に深夜 (需要の少ないところでは昼間) の保線作業が行われる。
そのために必要なデータを実際に走行しながら集めるのが、検測車とよばれる車両だ。新幹線総合検測車「ドクターイエロー」「East-i」はいまや一般にも広く知られた存在で、在来線向けでは高速軌道検測車マヤ34が長年活躍してきた(1959~)。これを用いた検測列車 (区分は試運転) は「マヤ検」と呼ばれ、機関車に牽かれて走る沿線には、甲種輸送同様ファンが集まってくる。
私鉄ではこのマヤ――最近では本州三社の新型検測車――を借りたり、保線機械で夜間に測定したりしている。いっぽう最近では自前の検測車両を用意する大手私鉄も出はじめた。

開成付近の定番地でロマンスカーはじめ小田急車を撮っていた休日。突如画面左から見慣れない、しかし一瞬でそれとわかる車両があらわれた。クヤ31形「テクノインスペクター」を先頭にした検測列車だった。

クヤ31

クヤ31

  • 小田急小田原線 開成→栢山 2009-5
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO250

2004年に登場した同車は、電化鉄道の要である軌道と架線 (パンタグラフが当たるトロリー線) の状態観測を走行しながら行う総合検測車。「ドクターイエロー」を筆頭に、編成単位で軌道と電気を検測できるものは従来からあるが、クヤ31は1両で双方を測れるはじめての車両となった。
「走る精密機器」ともいえる高価な検測車を導入する意義は、時間短縮も当然ながら、営業列車と同じ速度で走ることで実態に合ったデータを得ることにある。また測定を昼間に行えば、夜間の保線により時間を当てられるというメリットも考えているのだろう。昼間に走っても構わなくなったので、私たちがその姿を目にする機会も増えたのだ。新幹線「ドクターイエロー」も700系ベースになって以降は営業列車との速度差が無くなり、夜間中心だった検測が昼間に行われるようになっている。小田急では土休日にも走行するので、路線規模も考えると撮りやすい存在ではある。

クヤ31の車体デザインは3000系に準じており、前面はほぼ同じ。ただし設計製造が東急車輛で、側面上部 (いわゆる幕板) の扱いなどに日本車輌の設計 (下: クハ3550形。3555は東急車輌製造) との違いを見ることができる。車体に検測機器を満載するので扉・窓の数は極端に少なく、当初無装飾だった壁の部分には愛称決定後「TECHNO-INSPECTOR」の大きなロゴが貼り付けられた。ちなみに車体見付は反対側もほとんど同じ。
屋上のパンタグラフは測定専用で、近くにそれを撮影するカメラと投光器が設置されている。下を見れば軌道のゆがみを検出するセンサーを装着した台車のゴツさにも、検測車ならではの姿を感じ取れる。

クハ3555

クハ3555

  • 小田急小田原線 開成→栢山 2009-5
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D, ISO250

自家用検測車の先例は東急電鉄の架線検測車デヤ3000形で、現在は7200系改造を含むデヤ7200形3両編成で総合検測が行われている。ほかの大手私鉄でも導入例が増え、京王電鉄のクヤ900形「DAX」、相模鉄道モヤ700形、近畿日本鉄道モワ24系「はかるくん」が、それぞれ縁の下で自社の屋台骨を支えている。

この記事へのコメント

2009年08月30日 21:56
こんばんは。
今年は縁あって、マヤ検とEast-iDに出会うことができたのですが、どちらもかなりの早朝に検測が行われていました。それにマヤ検は自走できないので回送も大変ですね。
北海道には私鉄がないので気がつきませんでしたが、私鉄だって軌道検測は必要なんですよね。
大手私鉄は自社で検測車を用意できる力があるんですね。この検測車は1両のみですか?床下もすごいですね。

精密な機械が満載で、窓が少なく特殊な雰囲気を持つ検測車、East-iDを撮影した時は思わず窓の中を覗き込みたい衝動にかられました。
2009年08月31日 22:50
おっ♪こちらも検測車ですね(笑)
そうかー、私鉄に検測車が走るんですね
考えればあたりまえのようですけど、知りませんでした
白に明るい水色が爽やかで、「TECHNO-INSPECTOR」の文字もかっこいいですね
1枚目のお写真を見るとパンタグラフも車体と同じ白に塗られているようで、新鮮です!
私は念願のドクターイエローにやっと出会えましたけど、キヤ検(キヤ141)が走っていくのにには3回出会いました
2009年09月02日 22:21
水無月さん こんばんは。

北海道でもEast-iDでの検測の方が主流になってきているようですね。マヤは仰るとおり自走できませんし、最近だと終端駅での「機回し」もできなくなってますから、いっそう扱いづらいのかもしれません。
大手私鉄でも以前は国鉄からマヤを借りていた会社が多いと聞きますが、高いお金(このクヤは8億円だとか…さすがに1両きりです)をかけても効率的、頻繁な検査が可能になるのを重視しているようです。

原画像をよく見ると、窓を通して機械の前に係員が座って監視しているのが見えています(笑) 独特な風貌の検測車はつい覗いてみたくなりますね。
2009年09月02日 22:24
さくらねこさん こんばんは。

こちらも検測車を用意いたしました(笑) 最近は私鉄でも検測車を導入して昼間から走ることが多くなり、シャッターチャンスも増えるというものです。しかしドクターイエローのほうはまだ写真に収められておらず、いつか獲得したい被写体です。
検査を出てまもないのか(営業車ほど頻繁には走らないからかもしれませんが)、屋根や床下もきれいな姿でした。ちなみに車体はステンレスで、屋根は明るい灰色に塗装されています。
ドクターイエローのみならず、キヤ141(ドクターWEST)の走行をご覧になったことが3回ですか! なかなかの強運(?)ですね。こちらはJR四国や九州にも入ることがあるようです。

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