車両を「運ぶ」

車両メーカーで製造された鉄道車両は、使用する各社の車両基地までなんらかの手段で輸送する必要がある。自動車(トレーラー)や船(台船・はしけ)も使われるが、多数両を遠くまで運ぶには全国に広がるJRグループの路線網を使うのが効率よく、そこでJR貨物の機関車が旅客車両を牽引する光景が時折見られる。これが「甲種輸送」だ。
鉄道車両がその車輪で機関車などに牽引され輸送されることを「甲種鉄道車両輸送」と呼び、国鉄分割民営化後はJR貨物がその任務を請け負う。趣味者間や現場では「甲種輸送」とか「甲種」でも通用するが、甲種「回送」ではく、JR貨物とJR旅客会社を含む各社の契約に基いた、れっきとした貨物輸送の一形態だ。用途は新製配置だけでなく、会社間での譲渡、改造などでメーカーに戻される時にも使われる。
もともと知る人ぞ知る地味な存在であったはずだが、機関車牽引の旅客列車・ジョイフルトレインがほぼ消滅した現在は甲種輸送への注目も相対的に高まり、荷姿の特殊さもあって輸送日は沿線にカメラが並ぶ。それを知ってかJR貨物でも特異なカマを牽引機に充て、わざわざ作ったヘッドマークを掲出したりしてくれる。「センゴック」ことEF65 1059 (つい最近まで残った試験塗装機)も、甲種の常連だった。なおダイヤは毎月「鉄道ダイヤ情報」(交通新聞社)に載る公知のもので、ネット上の情報をあわせれば列車自体は容易に捉えられる。

EF66 106

EF66 106

  • 東海道本線 木曽川←岐阜 2009-7
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D

JR東海のワイドビュー特急第一弾・キハ85系を撮るつもりで、東海道本線の木曽川近くに着いた。付近の道路には自家用車が散らばり、低い築堤のゆるいカーブを見通せる場所に三脚が並んでいる。編成撮影に好適なポイントであることは認識していたが、それにしてもこの数……。何か「ネタ」でも来るのだろうと思っていたら、果たして数本の前座のあとやってきたのは、東武鉄道向け50050系の甲種輸送列車であった。
EF66 100番台はJR貨物が発足後初めて増備した車両のひとつ。バブル景気で急増した貨物需要に応える新型電気機関車の開発が急がれていたが、それまでのつなぎとして国鉄電機の仕様を踏襲して製造した。ほかにEF81 500番台とED79 50番台が前後して登場しており、いずれも性能は国鉄時代と同じだが、乗務員室の環境改善のため当初から空調装置を備える。EF66については前面デザインを変え、現代的なスマートさが備わった。コンテナブルーと白の軽快な塗装は従来機にも適用されたものの、汚れの目立ちやすいのが難点で、最近はまた濃色系に回帰している。

新車の甲種輸送では、編成端面にビニールシートがかけられることが多い。これは電気機関車のパンタグラフと架線の摩擦で飛ぶ塵埃から車両前面を保護するもので、組成の順序を変えて先頭部を編成内側に持ってくることもある。かつては控車として車掌車(ヨ8000)を連結していたけれど、現在はほとんどシート覆いで済ませている。
それとは別に、お披露目前の新車で全貌を見せたくないため、先頭部全体にマスクをかけるケースもある。最近では京成スカイライナー向け新型AE車がそうだったし、小田急VSEの第一編成は前頭はもとより側窓まで白くラッピングして、一種異様な雰囲気の輸送であったという。

列車が通過すると同時に集まった人の撤収がはじまり、私が本命としていた〔ひだ〕の通過時には誰も残っていなかった。無理もない、当日は完全引退が迫る名鉄パノラマカー(白帯車)の運転日、いいアングルが取れる沿線の各ポイントへ急ぐ必要があるわけで。私も例外ではなく、といってあせる必要も無かったので、おもむろに予定地へとクルマを発進させた。

この記事へのコメント

2009年07月27日 23:56
初めて「甲種輸送」というのを知ったのは昨年なんです。向日町のホームに「KEIKYU」と書かれた車両が停まっている!?というメールでした。私は目撃したことはないのですけど、車両そのものを荷物として走るんですね~そこでひとつ疑問が・・・私鉄の車両の場合、軌道幅が違う時はどうしているんでしょう?
そうそう、夕べ深夜明治の蒸気機関車が梅小路蒸気機関車館に入ったそうです。てっきり線路上出運ばれてくるのだと思ってたら、道路をトレーラーで運んだそうです。しかも出ている写真を見ると、何もおおわれていなかったようで・・・蒸気機関車の乗ったトレーラーが目の前を通過したら、ビックリですね!
2009年07月28日 06:36
さくらねこさん おはようございます。

車両そのものを貨物として運ぶ甲種輸送も、いまや注目の被写体となった感じがしますね。東海道・山陽線では兵庫と下松からの輸送があり、それなりに? ご覧になる機会があるかと思います。
この東武車はJR線と同じゲージなのでそのまま走りますが、京急など軌間が違う場合は、仮台車という輸送用の台車に履き替えて牽引され、台車はトラックなどで運ばれて現地で合体します。
線路を走るためにはいろいろと決まり事も多いですし、また甲種輸送の手続きもけっこう時間が掛かるらしく、1~数両の場合だとコスト勘案から道路輸送とする場合も少なくありません。一時期は新幹線(フル規格)でさえも在来線を走ることがありましたが、最近の新幹線(N700系)はトレーラー輸送になっています。そんな車両が夜中に道路を走っていると、知らない人はびっくりするでしょうね。
2009年07月28日 22:34
こんばんは。
私も「甲種輸送」という言葉を知ったのは、頻繁に撮影に出るようになって「DJ誌」を利用するようになってからでした。
でも実情がよく分からずに、気になって検索してみると、鉄道関係のWEBページでは、そのシーンを撮影した画像がかなり公開されていて、ようやく意味を理解したという、無知な人です(汗)
牽引する機関車も話題性もあり、シートで覆われた新車両は全部が見えないだけに、さらに注目が集まるのでしょうね。

今日は少しだけ撮影に行ったのですが、夏休みを利用して京都から来たという親子と一緒になりました。
帯広で戦車の輸送を撮影してきたそうです。その後は室蘭方面で再び、戦車の輸送を撮影されるとのこと…この場合は何輸送??
年に1度くらいしかない輸送とのことで、ぜひ撮影されるといいですよ~と勧められましたが、ダイヤも分からず…。皆さん、色々と情報を入手されているんですね。
2009年07月30日 20:36
こんばんは。
「甲種輸送」は前にまだてつどう撮影を頻繁に始める前に、789系1000番台の輸送を札幌で迎えた時以来見ていないですね。貴重さ故に こちらでも結構注目はされるようです。関東ではJRから私鉄から新型の車両が多く製造されたりしているので、東海道本線は比較的甲種のにぎわいを見せることが多いのではないでしょうか。

充当される機関車、ピカピカな新造車両が注目を集めているようですね。牽引機ではやはり最近廃車となってしまったセンゴックが注目されていたようですしね。
こちらでは専ら青いDDが引っ張るので、たまには突発的なもので未更新機が引っ張るなどもして欲しいものです(笑)
2009年08月01日 00:55
水無月さん こんばんは。

甲種輸送に着目したのは私もつい最近で、撮ったのはたぶん今回が初めて……っていうか予定してもいなかったし(笑) にしてもみなさんきっかり集まって撮って、散って行かれたものです。ここまで注目されるのは、やはり「ふつうの」客車列車がほとんど無くなっている状態だからかなあ、とも。
自衛隊装備の北海道輸送も年に一度行われているようですね。長物車(チキ)や無蓋車(トラ)に積まれており、扱いとしては臨時の「専用貨物」になると思います。
2009年08月01日 00:58
特急北斗さん こんばんは。

東海道筋には車両メーカーも点在して、甲種輸送の機会も多いようですね。といいつつ撮影機会はいままで無かったように思います。道内でJR北海道向けには青DDが登板するのですね。確かに未更新が牽いたら大騒ぎになるかも(笑)
こうしてみるとできたての車体(アルミ製)の輝きは相当なもので、うっかりすると飛んでしまう(笑) しばらく後に東武線内できれいな車体の電車を見て、もしかすると先日牽かれてきた車両だったのかなと思ったりしました。
teru
2009年08月14日 19:26
こんばんは、この夏の遠征シーズン、いかがお過ごしでしょうか?こちらは、戸塚方面への遠征?のみ、自宅で忙しい?今日この頃です。EF66サメさんのサイドビュー、これまたステキですね!。ところで、いよいよAF-SVRの新型発表。物色中でしょうか(^^?
2009年08月16日 00:20
teruさん こんばんは。

夏のシーズンということで、やはり遠征などしちゃったりしてますね(笑)
さて今回はEF66でも100番台を取り上げましたが、このスタイルもなかなかいいと思っています。汚れやすいのが難点かも…… 更新を受けた場合はどのようなデザインになるんでしょうね。

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