赤い電車―3つの1000

大手私鉄というものは一部の有料特急を除けばとかく興味の対象から外れがちだが、そのなかで京急電車のファンは以前から数多く、根強い人気を保っているように思う。
京浜急行電鉄の起源は路面電車であり、華やかな観光特急とも無縁だけれど、現在の赤い電車は最上位の快特から普通まで、とにかく走りっぷりがすごい。新幹線と同じ標準軌(1,435mm軌間)と18m級のすこし小ぶりな車体が、とくに京浜間では軒先をかすめるように高速で通過する。子安付近のカーブで東海道線をアウト側からかわす快特、待避線からの発車時に分岐器をものともせずぐんぐん加速する普通車などは、その象徴といえるだろう。

デハ1348

デハ1348

  • 京急本線 鶴見市場→京急鶴見 2009-5
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D
  • ISO250, 1/100, f8 [DX]

そんな京急を代表する車両が1000形。800形として営業開始したのが1960年だから、大手私鉄でもかなり古参の部類に属する。
まず目につくのは鮮やかな赤地に白帯、大きな窓と片開き扉。前照灯は頭上に一つ、アンチクライマ、連結面の折妻、といったこだわりも見える。客室内には立ち棒もなくすっきりと広い。
快速特急向けの600形(先代)、のちに登場した2000形から一歩引いた位置にいたけれど、私鉄最大の12両を連ねた通勤快特から、都営・京成・北総線直通に支線の普通まで幅広くこなす、京急の屋台骨を支えた車両だった。オールMで全車両が「デハ1000形」を名乗り、私鉄の単一形式では最多両を記録する車両でもある。

デハ1436

デハ1436

  • 京急本線 鶴見市場←京急鶴見 2009-5
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D
  • ISO200, 1/100, f8 [DX]

2002年に登場した2代目は、現在京急車の頂点に位置する2100形の流れを汲んだアルミ合金製。外観イメージも同形と共通し、併結して京浜間を最高120km/hで走る姿が美しい。
前期増備車はその2100形とおなじ「歌う電車」で、独シーメンス社製VVVFインバータの励磁音が発車時に音階を奏でる。汎用なので3扉ロングシートだが、車端部にはボックスシートを設けてある。写真は後期車で扉間の窓が一枚ガラスになり、いっそうスマートになった。電動機の出力向上と軽量化で中間にサハが組み込まれるようになったが、先頭を重い電動車とするのは京急の一貫したポリシーである。

デハ1456

デハ1456

  • 京急本線 鶴見市場←京急鶴見 2009-5
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D
  • ISO250, 1/100, f8 [DX]

2007年登場の3代目では安全強化とコストダウン等の見地から、京急初のステンレス車体(前頭は普通鋼製)となった。基本性能は2代目に準じているので公式には2代目の増備車(制御機器は日本製)だが、車内外のデザインには現代通勤車の設計思想が随所に感じられる。
ここまで頑なに守り続けた全面塗装、張り上げ屋根、運転台直後の座席といった要素が廃止され、客室車端部もロングシートになった。味気なくなったといわれれば正直そうだと言わざるを得ない。ラインカラーを腰帯ではなく腰板全体にラッピングしてあるのは意地というものだろうか。余談だが、2~3代の座席はほどよいやわらかさで、ロングシートとしてはトップクラスといえる。JR東日本もE233系でだいぶ水準が上がったけれど。

とくに1代と2代では様相も性能も違うのに同一形式を名乗るのは、2代目が初代の代替であるというほかにも理由がある。京急では都営浅草線および京成・北総線との相互直通運転を行っているのだが、この乗り入れに関する協定には車両形式名の規定があり、京急は1000代まで、京成は3000代、都営が5000代で北総は7000代以上、と決められているのだ。ちなみに東京メトロ関連ではそういった規約はないので、同一車号が並んだりすることもよくある。

この記事へのコメント

2009年06月27日 11:08
こんにちは。

京急は年に数回しか乗車機会はありませんけど特にデハ1000系がお気に入りで運転席のすぐ後にシートがあり空いていればすかさず陣取って子供のように前方の景色や運転士の指差し確認など眺めています。高架を走る印象があり側面写真が撮れる場所が限定されてそうな感じでしょうか。
小さな鉄道博物館
2009年06月27日 19:45
こんばんは。
先ほどSL常紋号撮影から帰宅しました。特に撮影ポイントは決めていませんでしたが行き当たりバッタリの方が意外にいい場面に出会います。今日は菜の花畑が広がるポイントを見つけとてもラッキーでした。天候も週末としては先月10日以来で腕がかなり焼けてしまい後がこわいですね。(笑)
今回は写真だけで京急の走りの凄さが伝わってきます。やはり暖色系はメリハリがつきますね。
明日もまた遠軽まで出動します。
2009年06月29日 21:16
nobuさん こんばんは。

運転台の直後に座席のある車両も少なくなっていますね。京急でもとうとうやめてしまいました。車体(前面)の強化など、やむを得ないところもありますが。
京急もそうですが、一般に大手私鉄の運転士は動作がキリッとして好ましく思います。2100形や600形のように「展望席」を取れればと思いますが、そう簡単には行かず…(笑)
仰るとおり、離れた場所からの撮影自体なかなか難しいようです。そこが京急らしいところでもありますが。
2009年06月29日 21:18
小さな鉄道博物館さん こんばんは。
常紋号は天候もよく、良い成果を上げられたようですね。

京急は普通電車でもそうとう頑張って走るので、スピード感は得やすいです。ただ建物の近い場所がとても多く、撮影地点はかなり限られたものになるようです。車窓から探してもいますが、なかなかココ!という場所が決まりません(笑)
2009年06月29日 23:12
こちらではなじみのない私鉄なんですけど、昨年京都ー大阪間を「KEIKYU」と書かれた車両が走っていったそうです。甲種回送っていうのですね。
普通電車でも相当なスピードとのこと、この3枚のサイドビューの写真を拝見しても背景の流れ具合でそれがわかります。もともとは路面電車だったとは意外ですね。
2009年07月01日 21:25
さくらねこさん こんばんは。

京急の赤い電車は普通列車でもガンガン飛ばしますし、やはり花形の快特はスピード感満点です。細かいところではこの初代1000のドアがまたスゴイのです。こんど東京へ出られる際にはぜひ体感してみてください(笑)

京急の電車は、沿線の金沢文庫駅近くの東急車輌と、兵庫駅近くの川崎重工での製造が半々だそうです。昨秋の甲種輸送はこの3代目だったようですね。ちなみに車両自体を「貨物」としてJR貨物に輸送してもらうので、回送でなく甲種輸送と呼ぶのが正しいそうです。
teru
2009年07月01日 22:00
こんばんは!、ご無沙汰しておりまして、いよいよカウントダウン状態に入っております。ところで仕事の移動で京急使うことが増えてます。夜のウイング号は安くて早くて快適、JRのような750円払ってしかも立ち席サービスに比べると、雲泥の差・・・。駅や踏み切りがあるたびに強引に加速するところ、「通過ぁ~通過ぁ~通過ぁ~♪」感なところは相変らずスリル満点でステキですね。
2009年07月04日 00:21
teruさん こんばんは。

ホームライナーもいっぺん体験してみたいところですが(筆頭は〔鴻巣3号〕か)、向きが微妙にずれるのでなかなか乗れませんね。
そして京急ですが、乗るたびにその加速度の高さに驚愕させられます。もっとも支線に入るといきなりユルくなりますが……(笑)

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