FURIKO de SHIKOKU 2009

JR四国の路線網は855.2km(営業キロ)とグループ内で最小だが、その大半の区間に振子特急が走る。1990年代以降急速に整備された高速道路との競合がはげしく、対抗策として特急列車の高速・多頻度化がすすめられた。予讃線〔しおかぜ・いしづち〕に8000系電車、〔宇和海〕と土讃線〔南風・しまんと〕に2000系気動車、高徳線〔うずしお〕にはN2000系(130km/h対応)と振子車がそれぞれ投入され、現在のJR四国は「振子王国」といってもよい。そのさきがけが、1989年に登場した制御つき自然振子気動車2000系試作車・TSE (Trans Shikoku Experimental)。内燃機関動力車として世界初の振子車(車体傾斜機構)でもある。

「自然振子式」とは、コロを装備した特殊な台車に車体を載せ、曲線走行時に発生する遠心力を利用して車体下部を外側へ振り出す機構をいう。床面を大きく傾けることでカント(曲線路の傾き)で吸収しきれない遠心力を打ち消し、よって高速でカーブを通過しても乗り心地の低下が抑えられるという理論で、1969年製造の591系試験車をもとに中央本線へ投入された(1973年)381系特急形電車で実用化された。
また2000系以降振子車の標準となった「制御つき自然振子」は、あらかじめ記憶した曲線位置にあわせて台車内のシリンダで車体を徐々に傾け、乗り心地の変化を抑える。傾斜に用いるのはあくまで物理的な力であるところが、キハ261系やN700系のような空気ばね制御の車体傾斜とは異なる。

2001

2001

  • 予讃線 伊予平野←西大洲 2008-10
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D
  • ISO200, 1/250, f8
  • RF2009-07-044

JR四国初の新型車両でもあるTSEは、「キハ」という称号や各位の数字で示す用途など、国鉄時代の伝統を完全に捨てたことでも注目を集めた。形式名は2000年の鉄道を目指したものとされている。外形でも従来の気動車のイメージを脱却し、とくに非貫通形先頭車のオールブラックフェイスと巨大な連結器カバーはインパクトがあった。1989年3月から土讃線で営業を開始した同車は先進的な機構と高い性能が評価され、翌年鉄道友の会ローレル賞(第30回)を受賞している。

振子車最大の魅力がこの姿勢制御であり、特に制御つき振子車が曲線へ切り込むように先頭車から傾いていく姿をとらえた写真などは、鉄道各誌や数多のWebサイトでおなじみだろう。
これはカーブ区間を内側から撮影したものだが、カントに対し車体はさらに角度をつけて、ほぼ水平に見ているのに屋根上面までしっかり確認できる。振子でない車両と比較するとその差がわかりやすい。こちらキハ185系は国鉄末期からJR初期に特急の主力として活躍した車両で、振子車の増備で一部がJR九州に売却されたほか、格下げ改造された3000番台が西予地区の普通列車に使用されている。

キハ185-3105

キハ185-3105

  • 予讃線 伊予平野→西大洲 2008-10
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D
  • ISO250, 1/125, f5.6

TSEは1990年から製造の量産車と仕様の異なる点が多い。宇和島方の非貫通車は量産車のグリーン・普通合造車に対し普通席のみ、反対端の貫通形先頭車もデザインが異なる(その後扉が埋め込まれ、高松向き車で唯一非貫通車となった)。量産車との併結は可能だが、増備がN2000系まで進んだ現在ではどちらかといえば余り物扱いの感がある。〔うずしお〕に使用されたこともあった同車は、現在では試作車の3両編成で〔宇和海〕に使用されている。登場から20年、新型特急気動車開発(系列など詳細は不明)の発表もあり、今後の動向が注目される車両のひとつだ。

ところでその四国へは、東京・名古屋・大阪から振子車両だけを乗り継いでいくことができる。実際に私はJR西日本のキハ187系が運転開始した2001年の夏に、7列車のリレーで八王子から宇和島まで3日かけて行った(行程上は2日間で可能)。そのルートに従っていくと、現在ではこのような乗り継ぎ行になる。
  1. 新宿12:00-(スーパーあずさ15号:E351系)-14:25塩尻
  2. 塩尻15:03-(しなの16号:383系)-18:48京都
  3. 京都19:31-(スーパーはくと13号:HOT7000系)-22:41鳥取
  4. 鳥取9:41-(スーパーおき3号:キハ187系)-10:46米子
  5. 米子11:25-(やくも14号:381系)-13:39岡山
  6. 岡山14:35-(しおかぜ15号:8000系)-17:24松山
  7. 松山17:33-(宇和海17号:2000系)-18:54宇和島


■Wikipedia日本語版: 振り子式車両

◆リンク誤記を修正しました(6/22 さくらねこさん ご指摘感謝。)

この記事へのコメント

2009年06月21日 23:41
四国は振子列車が多いんですね。私にとっては、振子=くろしお、のイメージです。ずっと以前に「くろしお」で白浜に行った時、その揺れ(傾き)に家族みなが酔ってしまい、大変な目にありました。それ以来、白浜方面は敷居が高いです。「スーパーくろしお」「オーシャンアロー」と乗り心地は改善されているのでしょうけれど。八王子から宇和島まで、3日間振子列車のみって、車酔いしませんでしたか?
西日本パスでの旅は四国行の予定だったのですが、インフルエンザ騒動で自粛・延期、そして九州に変更したので、四国の列車を見れるのはうれしいです!

小さな鉄道博物館
2009年06月22日 05:44
おはようございます。

先日はデジカメ能力について色々とアドバイスありがとうございます。たしかにラッコ・クーちゃん撮影時に実際プリントした際に実感する事が出来ました。
四国は旅鉄時代唯一行かなかった場所ですがキハの振り子特急があるのでJR北海道との共通点があってとても好きな鉄道のひとつです。
こちらではキハで注目されるのは秋に廃止されるキハ183「とかち」ですがやっと昨日踏み切り待ちで偶然見る事が出来ました。(まったく一ヶ月運休状態でした・笑)
2009年06月22日 06:34
おはようございます。

すごく見慣れた列車で、嬉しいです。
2000系にもよく乗っていますし、キハ185にも乗りました。
キハ185は特急で走っていたときも乗りましたし、普通列車になったのも乗りました。
両方、乗っても違いをあまり実感しなかったのですが、こうして見てみると、振り子式というのがよくわかります。

八王子から宇和島まで、振り子式車両だけを乗り継いでいく…そういうことができるんですね。
スゴイです!
2009年06月23日 00:06
こんばんは。
車両について詳しくない私は、四国の2000系気動車が世界初の振り子式車両だということを、初めて知りました。
振り子特急は北海道が最初だと思っていただけに、大変勉強になりました。実はまだ乗車したことがありませんが、カーブの手前から徐々に車体が傾くのですよね。写真で見るととてもカッコいい姿ですが、斜度は数字にしてわずか一桁の5度とか6度とはいえ、酔う人もいるくらいですから、実際にはかなり傾きを感じるのでしょうね。
3日間振り子のみを乗り継いでの移動ってすごいですね。
2009年06月25日 21:50
さくらねこさん こんばんは。

振子車両は独特の乗り心地があるので、慣れないと酔いやすいですね。流れに任せるような感じでいくといい……という表現もまた難しいところです。
振子乗り継ぎは(まあ息抜きもありましたが)まったく平気でしたね。私も子供の頃は情けないほど酔いやすかったのですが、いつからか一気に克服してしまいました。先日など旧式381系〔やくも〕に乗って、揺れる揺れると予想していたもののまったく感じずに拍子抜けしたくらいで(笑)
2009年06月25日 21:51
小さな鉄道博物館さん こんばんは。

四国はそちらから遠く離れた地ではございますが、振子車が頻繁に走る予讃・土讃線、それからおなじみアンパンマン列車など、小さいなりにいろいろ見どころがあり、旅鉄にも好適ではないかと思います。
北海道の振子列車は281系の高速走行と283系のダイナミックな曲線通過があり、四国とまた違った魅力・迫力がありますね。そして261系、その影に消えつつある183系と、十勝界隈も要注目というところでしょうか。
2009年06月25日 21:51
静さん こんばんは。

これら四国の特急車は静さんにもおなじみの車両ですね。喜んでいただけてなによりです。185系は〔剣山〕と、九州に行った仲間の〔ゆふ〕〔九州横断特急〕で乗りました。振子と非振子の違いをあまり実感されなかったということは、かなり乗り物にお強いようですね(笑)
いまでも新宿から宇和島や宿毛まで、振子特急だけで行くことができるんです。さらに他の列車などを挟んで、北海道から九州まで振子で日本縦断というのも、いつかやってみたいものです(笑)
2009年06月25日 21:53
水無月さん こんばんは。

ディーゼルの振子列車はこの2000系が世界初ということで、この成功が北海道の〔スーパー北斗〕や〔スーパーおおぞら〕に繋がっているのですね。283系はさらに進化したメカニズムを誇り、JR在来線最強の部類に入る車両だと思います(笑)
振子の乗り心地といっても、慣れてしまうとホントに普通の車両と変わりがないんですけどね。私などすっかり平気になって、振子車の傾きとか飛行機の急旋回なども密かに楽しみにしている節があります(笑)
2009年06月25日 23:48
またまたこんばんは~

気動車の振り子車両というとそうですよね、JR四国が最初でしたよね。
エンジンを搭載する車両の場合、トルク反動により振り子化するのは難しいと言われていた…なんてことも2000系の登場により知ったものでした。
一方で最近は北海道でも振り子ではなくエアサスにより車体傾斜をさせる車両が登場してきましたが、こういった車両の特徴を目立たせるためカーブで撮影すると振り子式だと台車の振り子の位置を中心にして回転するようにして車体全体が傾斜するので写真に撮ってもそれがよく分かるのですが、エアサスで傾斜させる車両だと台車より上がただ傾くだけなのであまりよく分からないんですよね(笑)。
もっとも振り子式に比べて傾斜角が少ないのもありますが…。
2009年06月26日 23:48
加藤さん またこんばんは。

エンジンを搭載した振子車両は未知の領域だったようですね。トルクが問題なら2台載せて反対向きに回せばいい……というのは強引かつ明快な解ではありますが、機関の小型高性能化でじゅうぶん見合ったものになり、それで現在の気動車振子ができあがったのですよね。
いっぽう空気ばねの車体傾斜は角度も小さいですし、表現が難しいですね。乗車感覚も非常に自然で、N700系に何回乗っても違いがわかりません。わかるのは通勤電車並みの高加速度のほうで(笑)

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  • 特急「宇和海」2000系

    Excerpt: 2000系気動車は、世界初の制御付振子式特急気動車として、1989年3月、土讃線で営業運転を始めた。≫サブタイトルを変更しました。 Weblog: ぱふぅ家のホームページ racked: 2009-09-18 18:39