スーパーワイドビューコミューター

日本の鉄道車両の窓はどれも大きく、格子や金網もないので見通しがとても良い。割れた状態で走ることはないし、たいていは汚れてもいないから、外に流れる四季折々の車窓を十分に堪能できる。
ご多分にもれず私も乗り物に乗れば窓側に座る。風景を楽しむこともそうだが、撮影予定地の現状を調べることも重要な目的だ。だからあえて日の当たる側に座り、暑いけどカーテンやブラインドもできるだけ閉めずにいる。最近の車両は紫外線カットの機能を持ち、日除けを省略する例も増えてきたので、いつでも見晴らしが確保でき都合がよい。それでも暑いけど。

特急電車の祖、151系が〔つばめ〕〔はと〕に投入されるとき、それまで客車最後尾に連結していた一等展望車の役割を担ったのが「パーラーカー」クロ151。その側面窓は幅2m・高さ1m(1920mm×905mm)という、当時としては巨大なものだった。客室は4人用区分室と一人掛け2列の開放室、定員18名という贅沢な構成で、なるほど parlor (応接室・居間) と呼ぶにふさわしい。1両も保存されていないのが残念だが(∵1両は事故廃車、残り11両とも改造により失われている)、新幹線開業まで電車王国を象徴する車両だった。時が過ぎて登場した純通勤車901→209系の窓がこの大きさと知って、嘆息した人もいるとかいないとか。
しかし1999年、さらに上を行く車両が登場する。

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クモハ815-14

  • 鹿児島本線 千丁→有佐 2009-5
  • D700, AF-S VR-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G
  • ISO200, 1/160, f11

熊本・大分地区に投入された815系電車は地方都市の通勤・近郊輸送に特化した2両編成で、車体はアルミ合金で側面はきわめてシンプル。一見それとわかりにくいが、ドアの赤色や細かなレタリング、一字ずつ枠で囲んだ車号標記などに「水戸岡デザイン」のエッセンスが凝縮されている。
系列の十位が1なので近郊形に属するが、室内はロングシート。座席基部や荷棚も大型押し出し材で成型され、直線が強調されたデザインから都会的なシャープさを感じる。海外の地下鉄などではFRPやステンレスのツルツル座席も多いらしいが、同車はさすがに(?)クッションを着座位置にあわせて背面・座面に配置している。

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クモハ817-19

  • 日豊本線 隼人←加治木 2009-5
  • D700, AF Nikkor 50mm F1.4D
  • ISO200-0.7, 1/160, f9

筑豊本線・篠栗(ささぐり)線の電化にあわせて投入された車両からは転換クロスシートを採用し、前面デザインに変更を加えた817系となった。室内はアルミパネルを基調とするのは変わらないが、座面と背もたれが木製で革クッションを貼った座席などは、落ち着きを重視した造りだ。乗降口付近のつり革手すりが円形なのも面白い。
扉間の大きな一枚窓(UVカットガラス)は幅3m・高さ1mで、乗り物に使われるガラスとしては国内最大級といえる。同縮尺の新幹線 N700系 とくらべるとその差は歴然! 普通車の窓が幅50cm・高さ52cmというから、単純計算でも815/817系の窓はN700系の約11.5倍の大きさになる。16号車の客室窓15列を全部集めても、こちらの方がまだ大窓ひとつぶん広いという計算だ。
遮光率の高いガラスだから外から見ると暗く見えるが、カーテンは持たないので「抜け」はよい。後ろを空にすると客室内がシルエットになり、イメージパースの雰囲気が得られる。

この記事へのコメント

小さな鉄道博物館
2009年05月16日 05:43
おはようございます。

ラッコのクーちゃんも無事に故郷に帰り私も本来の姿に戻りつつあります。(笑)先日は帯広に12年ぶりにノロッコ号がやって来て朝練を兼ねて十勝連山をバックに「とかち」との並びを帯広運転所で撮影していました。
さすが水戸岡デザイン。センスが光ってますね。それを最大に生かした撮影が出来る宮本さん。ひと味違います。(笑)こんな列車にいつも乗ってみたいです。こちらでの楽しみはスーパーおおぞら先頭かぶりつきですね。
大成の男
2009年05月16日 19:29
こんばんは。
北は北海道から南は九州まで。全国をくまなく廻る宮本さんが実に羨ましいです。
(※もし不謹慎な発言ならお詫び申し上げます)
JR九州で活躍する水戸岡デザイン事務所が手がけた車両たち。先週末、ご本人が登場し、その車両デザインに携わる様子が全国放映されました。
水戸岡代表曰く“使える便利なデザイン”がご自信のお考えだとか。
きっとこの窓寸法もそのスタンスの現われかと思います。大きな窓から注がれる太陽光、自然光ならではの効果を計算されたのでしょうか。
但し、ワタシはデザインとの仕事に対しカラっきしの素人でございます(笑)
また遅くなりましたが、リンク欄に当ブログを加えていただきありがとうございます。
こちらも本館HP内にてコチラをご紹介しますね。
相互リンクの実施、今後ともよろしくお願い申し上げます。
さくらねこ@携帯
2009年05月16日 23:34
そうそう、日差しが暑くてもカーテンしめたら景色は楽しめませんよね~私も窓に(時にはかぶりつきに)へばりついている方です(笑)
しかし、N700系の1両分の窓よりまだ大きいとはすごいですね!デザインはもちろん、その大きさに十分な強度のガラスということにもです。次々と九州の車両をアップされてますね。次はあの特急かな?それとも。。
2009年05月17日 22:23
こんばんは。
私も絶対に窓側派です。かぶりつき&へばりつきは、さくらねこさんと同じ(笑)で眩しくても、熱くても良さそうな撮影地はないかと、キョロキョロしてます。でもロングシートで大きな一枚窓のキハ201系(または731系)に乗ると、車窓の風景が見づらくて困ります。
815系 817系の窓はさらに大きな国内最大の窓なんですね。
JR九州の車両はやはり洗練されていて、室内にもこだわりがあるのですね。
九州といえば・・・復活した蒸気機関車も期待しています♪客車もとてもお洒落に改造されているそうですね。
2009年05月17日 23:01
小さな鉄道博物館さん こんばんは。

くーちゃん詣で お疲れさまでした(笑) 十勝のノロッコ号も撮影されたようでなによりです。
水戸岡デザインといえば強烈な色にレタリング。最初に485系を全身真っ赤に装飾したときはびっくりしたものですが、新型車両ではシンプルな中にデザインの妙味があると感じます。そんな形を少しでも引き出せればと思うところですが、お褒めにあずかり恐縮です。
〔スーパーおおぞら〕の前面展望はちょっとだけ(それも夜間に)したことがありますが、迫力ありますね。
2009年05月17日 23:03
大成の男さん こんばんは。

いやいやまったく不謹慎ではございませんが、しかし北海道から九州まで走り回って撮るのがコレばっかり? という感が無きにしもあらず(笑) もちろん撮影チャンスを複数作ってバリエーションができるよう考えておりますが。

テレビ番組の件、じつは後で小耳に挟んで「そんなのあるなら録っていたのに…」と後悔しきり。
それにしても「使える便利なデザイン」というのはまったくそのとおりで、不特定多数が利用するのだから便利でなくては意味がありませんね。これらの車両にはそのスタンスがしっかりと生きていると思います。だからこそ、九州の車両たちがこんなにも注目をされているのではないかと思います。
2009年05月17日 23:04
さくらねこさん こんばんは。

さくらねこさんも窓にへばりつくタイプなんですね。かぶりつきも!?(笑) 私は日が当たるとすぐカーテンを閉める人を見るたびに「もったいないなあ」とか思ったりしますが、まあそれも人それぞれなのでしょう。
この車両は乗ってみると外と一体になるほどの広がりを持つ、ある意味では展望車ともいえる空間です。これだけ大きくて強度のあるガラスができる時代だから、こんな自由なデザインもできるのだなと思わせる車両ですね。
2009年05月17日 23:06
水無月さん こんばんは。

水無月さんもまた日なた派で、かぶりつきもされるんですね。私もやはり車窓ロケハンは欠かせません。下回りも気になるので、思っていた場所では密着に近く(笑) こういうときにロングシートだと見づらくて困りますね。
815・817系の窓はごらんの通りとても見通しが良い車両です。戸袋の部分が他車よりかなり広く取られていますが、それでも間柱のないすっきりした構成で好ましい出来と思います。815のロングシートはちょっと残念ではありますが……(笑)

この地区ではSLが筆頭ですが、ほかにも面白い車両を紹介していきますので、もうしばらくおつきあいください。

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