ドアフル!

一部では「JR最強」とも称される埼京(さいきょう)線。正式には赤羽線(池袋~赤羽)+東北本線支線(赤羽~大宮)。赤羽以北は、東北新幹線大宮~東京のルート選定にあたり、騒音等を懸念して建設反対運動が起きた沿線への見返りという形で、新幹線に腹付けで建設された。カーブの制限もあり最高110km/hの新幹線よりも、当時走っていた103系のほうが明らかにうるさかったけれど……。
そんな路線もいざ開業(1985年)すると、「鉄道空白地」だった県南部はもとより大宮・川越周辺の需要を一気に取り込み、首都圏屈指の混雑路線となった。山手貨物線を南下して大崎まで延伸、湘南新宿ラインとともに山手線をサポートする立場だが、迷惑・犯罪行為の多発する路線でもあり、都心部停車駅の出口階段が北側に集中して混雑度が極端に偏るという問題も抱える。
大崎から りんかい線(東京臨海高速鉄道)と直通するJR車両の大半は、混雑の激しい大宮方に6扉車サハ204を2両連ねる。このサハ204は、かつては隣の山手線を走っていた。

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サハ204-7

  • 川越線 川越←南古谷 2008-7
  • D200, AF Nikkor 50mm F1.4D
  • ISO100, 1/250, f5.6

205系で運転されていたころの山手線では、混雑や遅延の緩和を目的として多扉車の組み込みが決定され、1990年に試作車2両が登場。実運用での試験を経て、「増結」という形で各編成に1両ずつ連結された(1991年)。
それまでにも京阪電鉄に5扉車は存在していた(5000系: 現役)が、片側6扉(自動)は史上初。側面はまさにドアだらけ、間に窓があるといってよい。また座席(30名)は平日始発から9時まで折り畳まれて丸ごと床という形になり、マスコミから「イスなし電車」「詰め込み主義」「貨物扱い」という批判を受け、「ワキ204」と揶揄されもした。座席を無くすのは詰め込むためではなく、ドア脇に人が溜まることを防ぐのが主目的ということだった。実際に、ドア数の多さも貢献して混雑時でも乗り降りはスムーズに感じ、短時間の乗車ならこちらを選びたくなる。

通勤電車の20m・4扉というスタイルは、戦時中に登場したモハ63系(→72系)で早くも確立した。しかし資材不足から登場当初は車両内外とも貧相な造りで、一部車両の座席は千鳥状に4箇所しか設置されなかった。座席を完全に無くすことも検討されたらしい。戦後を含め通勤車両では座席下に置かれるドアエンジン(開閉モーター)も、扉の上に設置された。209系以降では当たり前のようにドア上に置かれており、先取りしたものともいえる。同系まで存在したスタンションポールがある(室内中央に立ち棒が見える)のも、6扉車の特徴のひとつだ。

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サハ208-63

  • 東北本線 上野→鶯谷 2008-7
  • D200, AF Nikkor 50mm F1.4D
  • ISO160, 1/160, f8
  • RF2009-04-036

1995年には209系増備の過程で京浜東北線にも6扉車サハ208が登場。このころにはその威力もすっかり認知され、批判は影をひそめた。もっとも、209系自体が「さげすみ」の対象だったのだが。これをベースに横浜線205系にもサハ204-100番台が増結され、同線の輸送力増強に役立っている。
あまり注目されていないようだが、同形式は209系初の廃形式になると思われる。中央総武緩行向け500番台以降は6扉車を設定しないし、南武線や八高・川越線向け、また房総(?)などへ転用が予想される編成は4・6両で、もともとサハ組み込みがない。

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サハE230-512

  • 東北本線 上野→鶯谷 2008-7
  • D200, AF Nikkor 50mm F1.4D
  • ISO125, 1/160, f8

山手線のE231系化にあたっては、11両編成に6扉車が2両組み込まれた。中央総武緩行線のE231系(10連に1両)に続くもので、現在のところJR東日本では最終製造グループである。
E231系は「汎用タイプ」なので、近郊仕様(1000番台)には2階建てグリーン車もある。同一系列でずいぶんな違い(ちょっとお金を追加すれば誰でも乗れるから、格差というほどでは…)があるものだが、さすがに同一編成に両者が組み込まれるケースは、まだ発生していない。

現在進行中の京浜東北線209系→E233系置き換えでは、当初6扉車の組み込みが計画されていた(中央快速線は計画なし)。しかし拡幅などによる余裕の増加、また将来の東北~東海道線直通(東京経由)の計画も踏まえて全車4扉で導入されることになり、サハE232は幻の形式となった。
そして山手線でもホームドアの設置により、6扉車が編成から外される。ホームドアと何の関係が? と思われるかもしれないが、山手線と京浜東北線は田町~田端間で線路を共用することができ、ドア位置の違う車両を組み込めなくなることも理由とされた。
にしても、この6扉車はどうなるのだろう。ここだけで実に100両以上が投入されているのだ。私見だが、山手線にはE233系を投入して、E231-500を埼京線・京葉線に持っていくのが妥当と思える。

この記事へのコメント

小さな鉄道博物館
2009年02月26日 05:26
おはようございます。

最初にいったいいくつ扉があるのか写真で一生懸命数えてしまいました。(笑)やはり需要?があるのですね。道内では長年2扉が当たり前でしたがJR化後に3扉が出た際はカルチャーショックを受けました。(笑)

落ち着いてRF誌を拝見すると特集にも宮本さんの作品多数発見しました。この構図は宮本さんのトレードマーク?になってしまいましたね。書き込み終了したら釧路に向かいます。(笑)
2009年02月27日 06:34
おはようございます。

田舎では考えられない扉がいっぱいの電車ですね。
東京へ行った時にたぶん見たんでしょうが、乗るときにはこんなに扉があることを意識してなかったです。
こうしてサイドビューでみると、ホントに扉が多いことにビックリします。
2009年02月27日 23:46
小さな鉄道博物館さん こんばんは。

道内に51形3扉、つづいて711系3扉車が登場したときは私も「そんなところまで来たのか」と思ったものです。デッキで仕切ったのがさらに驚きで……さすがに6扉なんてものはとてもできないでしょうが(笑)
それより私はちほく高原鉄道の車両が二重窓でもない二段窓、デッキもない三セク標準車だったことに驚いたものです。あれほど寒い場所を走るのに、大丈夫だったんでしょうか?

特集もご覧頂きありがとうございます。もう暴走しちゃってますね(笑) このスタイルを独占するつもりは毛頭ないのですが、というかもともと広田先生の……
2009年02月27日 23:47
静さん こんばんは。

6扉車はまさに扉が車体の大半を占めていまして、このくらいでないと混雑をさばけないというところに都会ラッシュの激しさを感じますね。
私は幸いなことに長時間ギュウ詰めという通勤を絶妙に回避しているので、ときにそういう時間に当たるとホントに疲れます(笑)
2009年03月02日 02:04
1,2,3・・・
6つもドアがあると、見事ですね~
整然と並ぶドアが、とても幾何学的に美しかったりします(笑)
そうそう、ラッシュ時に椅子のない車輌もあるとか聞いたのですが・・・

「東北本線」、最初大宮付近の路線図にこの文字を見たとき、「間違い?」って思っちゃいましたよー
なんでここが東北なの?って(笑)

そして「富士・はやぶさ」、とうとうカウントダウンになってしまいましたね
東京駅は日に日にすごい状態なのでしょう
ラストランまで無事に駆け抜けてほしいです
宮本さんの記事にはもちろんかないませんが、昨夏九州に行った時の「富士・はやぶさ」をまだアップしていなかったので、廃止のレクイエムにアップし始めました
2009年03月02日 22:00
さくらねこさん こんばんは。

私も通勤電車には幾何学的な美しさを感じるときがあるのですが、この6扉車はその最たるものだなあと、ときどき思います。
で、この車両は平日朝に座席を折り畳んで運行するのですが、ラッシュ反対方向に向けてたまに乗ったりすると、とてもひろーく感じます。ちなみに床暖房なので、寝ころんでも気持ちいいかも!?(笑)

この電車に東北本線というと「えっ!?」という感じですね(笑) ここでは路線の正式名称を採用しておりますので、東京から(現在は)盛岡まで続く東北本線として扱っております。

〔富士・はやぶさ〕もいよいよカウントダウン。当方もすーっかり遅くなった〔富士〕乗車レポを近日公開予定ですが、さくらねこさんの視点も楽しみにしております。
2009年03月04日 22:56
こんばんは。大変出遅れで申し訳ありません。

ドアフル!…6つドアが並んだ車輌にまさしくピッタリなタイトルですね。
この6つの扉から通勤、通学の人達がドッと降り、乗り込む光景が、田舎の私には想像できません。
何とか想像できるのが札幌市営地下鉄5000形の4扉車くらいですが、そちらのラッシュ時の混雑具合は、多分その比ではありませんよね。
RF誌4月号、本当に宮本さんの活躍がすごいですね。こんな私がコメントしていいのか、改めて恐縮しておりますです…。
2009年03月06日 22:14
水無月さん こんばんは。
いつもご高評いただき、私の方こそ恐縮する次第です。これからもお気軽にどうぞ。

6扉車もそうですが、常磐快速線の計60扉! (15両編成)もまた壮観です。これらのドア群から乗り降りする人の動きをどうにかうまく表現できないものか、なんていつも思っております。

北海道の多扉車といえば地下鉄南北線の5000系ですね。私は2ドア連接車という2000系全盛期にも訪れたことがありますので、「あの南北線に4ドア車が!」とびっくりしたものです。

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