変転

209系にはじまりE233系に至る、JR東日本通勤車両の低コスト化と大量産体制は、最近の景気や輸送情勢の変化もあって、大手私鉄の車両ラインナップに少なからず影響を与えた。ここ数年で関東の各社が導入する車両は、日本鉄道車両工業会が2003年に制定した「通勤・近郊電車の標準仕様ガイドライン」に基づくもので、とくにステンレス車の外観はE231系(通勤タイプ)に近い設計思想を感じ取れる。
つまり、もとが個性的であるほどその変化もはげしくなるわけで、なかでも関東圏ではついにステンレス車を導入した京浜急行電鉄と、ここ相模鉄道が筆頭に挙げられる。

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モハ5054

  • 相鉄本線 かしわ台→海老名 2005-12
  • D100, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D
  • ISO200, 1/125, f4

相鉄最初の高性能電車は5000系と称し、いわゆる「湘南顔」と床下機器を車体に架装するモノコック式ボディマウント構造で、1955年に颯爽と登場した。その後車体の大型化で現在のアルミ車体に載せかわり(5100系)、さらにVVVF制御に更新して(5000系)現在に至る。
相鉄の車両を見る上で外せないのが、その車両が履く台車だ。モーターから車輪への動力伝達に「直角カルダン駆動」という方式を取るのが大きな特徴で、現在ほとんどの電車が採用する「平行カルダン」がモーターを車軸と平行に置くのに対し、車軸と直角つまりレール方向にモーターを置く。
この方式は軌間1,067mmという狭い空間に大出力モーターを配置するのに有効とされ、東急5000系(前代)に代表される初期の高性能車に用いられた。その構造から軸距(車輪2個間の距離)が長く、相鉄のそれは車軸外側にディスクブレーキを配した姿とあわせて、他社にない独特の姿を見せている。1960~70年代に直角方式の優位は完全に失われ、むしろ独特の構造が保守面で不利とされたが、相鉄は頑なに採用しつづけた。
車内を見ると、乗客がボタンで昇降操作できる自動窓がなにより目につく。これも5100系で採用後、2100・7000・8000・9000系へ受け継がれた。また8000・9000系の編成中2両はセミクロスシートを配置し、たまに乗車する時はここで小旅行気分を味わう。

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モハ10302

  • 相鉄本線 かしわ台←海老名 2005-12
  • D100, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D
  • ISO250, 1/100, f4

これが、2002年に登場した10000系はそれらの要素をばっさりと切り捨て、シンプルでオーソドックスな車両になった。
E231系にずいぶん似ているように見える。そのはず、この車両はE231系の設計をほぼそのまま取り入れたものだ。
最大幅が若干異なるほかE231系の広幅車体に準じ、窓配置・ドア配置・台車・駆動方式・情報システム(TIMS)もE231系のものを採用したばかりか、一部はJR東日本・新津車両製作所で製造された。車内を見ればE231系と同じ仕様のロングシートのみで(本家にはセミクロスタイプもあるのに…)、自動窓もやめている。従来車からほんとうに180度の方向転換といってもいい。
大手私鉄ではあるが確かに小規模だし、そこで独自色ばかり出してても……ということはわかるのだが、やはりどの会社も画一的で、違うのは顔の造作とテープの色……という現状はすこし物足りない気がする。なお、「本家」がE233系に移行したので、今後の増備はそれをベースにした11000系となり、この投入で5000系は最後の一本(上掲モハ5054を含む10両)が現役を退くことになっている。


■Wikipedia日本語版 通勤・近郊電車の標準仕様ガイドライン

この記事へのコメント

teru
2009年02月05日 00:09
こんばんは。
通学中に「車軸外側にディスクブレーキを配した姿」にいつも、いい意味での苦笑いしていたのを思い出しましたよ!そういえば、昨日乗りました。相鉄。あいかわらず軌道が弱いのか、保線にお金かけていないのか、JR東に近い乗り味は昔のままでした。さて日曜日・・・?
小さな鉄道博物館
2009年02月05日 17:50
こんばんは。
今回は写真もそうですが文章をじっくりと読まさせていただきました。車両自体の性能などなかなか分からない部分が多いなか適切な解説は読み応えがありました。塗装は大事なポイントになりますから独自のカラーを期待したいですね。
週末は久しぶりに「ふるさと銀河線」のCR車と可動状態で対面出来るのを楽しみにしています。
2009年02月06日 17:12
teruさん こんばんは。

そういえばこの路線を使って通学してた時期が、私にもありましたね(笑)
ディスクブレーキとか、前面の行先より大きい種別幕とか、武骨な構体とか、挙げればキリがないようです。
2009年02月06日 17:12
小さな鉄道博物館さん こんばんは。

いつもお読みいただきありがとうございます。
簡潔平易に説明するのはやはり難しいですね。いろいろ資料に頼りながら苦心しています。保育社のカラーブックスなどは古いながらも欠かせません。

また週末は もとふるさと銀河線の動態保存車を見に行かれるのですね。非常に寒い場所と聞きますが、そんな中を走る姿も見てみたいと思います(私が訪れたのは5月の一回だけでした)
2009年02月07日 05:35
おはようございます。

通勤列車は個性がなくなりつつあるんですね。
文章を読ませていただいて、なるほど…と思いました。
確かにお写真の5000系と10000系では違っていますね。

私はまた、過去の鉄道写真をUPしました。
ユニークなジョイフルトレイン 「リゾートサルーン・フェスタ」 です。
2009年02月07日 20:40
「通勤・近郊電車の標準仕様ガイドライン」なるものがあるのですね
フムフム・・・
ステンレスのままの車体も標準のひとつなんでしょうか?

ステンレスのボディは今風ですが、
私は以前の全体を塗装されていた方が好きです
京都駅の東海道線では
各駅停車はスカイブルー・快速は柿色(オレンジに緑のライン)・新快速は白っぽく、、、
遠目でも電車の種類がすぐわかり、小さい子にも説明しやすくてよかったです
今は、紛らわしくて・・・
ついこの間も、ホームにあがり表示板に次は「新快速」の表示だったのに
電車がきたら何も考えずに乗ってしまいました(苦)

宮本さんはJRだけでなく私鉄も把握されてるんですね
すごいです!
2009年02月09日 23:32
静さん こんばんは。

最近はどこへ行っても同じスタイルのステンレスかアルミ車、地方私鉄でももと大手のステンレス車が幅をきかせていて……まあ、会社にとって最良の選択をしたということですが、通勤電車とはいえ個性が無くなるのは残念なところです。

そういう観点ではかつてのジョイフルトレインは個性派揃い、中でも「フェスタ」は個性のカタマリといってもいい車両でしたね(笑)
2009年02月09日 23:34
さくらねこさん こんばんは。

京阪神JRでも運転系統が複雑になってきていますね(とくにJR東西線開業以降)。幕の下部を色分けして案内していますが、種別と行先をよく見ないと大変(笑)

このガイドラインではステンレス車とアルミ車の標準形式が決められています。多くの車両メーカーはJR・私鉄双方の車両を造るので、メーカーも主導するガイドラインで似た形が増えるのは妥当なところかもしれません。
とはいえ私鉄にも、まだまだ個性派が残っています。そんなところも今後紹介して行ければと思うところです。

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