ムーミン谷の冬

EF55形直流電気機関車。昭和初期にブームとなった流線形を取り入れた車両のひとつで、2009年頭の時点でJRに在籍する数少ない旧型電機でもある。
1号機(準鉄道記念物)は1936年の新製、1964年の廃車から1986年に車籍復帰し、「奇跡の復活」といわれた。民営化前後を中心にイベント列車牽引機として活躍したが、最近は稼動実績も少なく、とくに2007年の故障以来高崎車両センター高崎支所で眠る日々が続いた。けっきょく部品調達や整備の難から一線を退くことになり、12月~1月の土休日(18日まで)に住み慣れた上越・信越線でのさよなら運転が行われている。
大宮総合車両センターで整備を受けた同機はぶどう色2号の輝きを取り戻し、快走する姿を見ていると製造後70年も経過し引退の迫る車両とはとても思えなかった。

同機の特徴は、なんといっても前後非対称・流線形の車体だ。前頭の曲面と、そこにほどこされた優雅な銀の飾り帯も目に止まる。
そのスタイルのために進行方向が固定され、転車台でも架線を張る必要があるなど使い勝手が悪かった。また当時の速度では流線形の効果も薄いことから、製造はわずか3両で中止、1960年代に姿を消した。
登場時はカバとかドタ靴といったあだ名を頂戴したそうだが、復活以降の同機はその前後にTVアニメで放映され親しまれた「ムーミン」と呼ばれた。しかし茶色の車体は原作のムーミントロールからは遠い(むしろスニフ?)。そうか、淡緑5号・通称「青大将」に塗……

画像

EF55 1

  • 上越線 後閑←沼田 2008-12
  • D700, AF-S Nikkor ED 80-200mm F2.8D
  • ISO320, 1/125, f5.6

閑話休題。電気機関車の新型・旧型はどこで異なるのか。
電車のようにモーターの懸架――つりかけ/クイル・リンク式で分類するのはちょっと違う。なぜなら現役電機のほとんどが、最新のEF210, EF510も含めつりかけ駆動だからだ。EF210が発車するのを見ていると、インバータが鳴らす高音に大型の歯車が唸る低音が加わり、独特の雰囲気を放っている。

旧型電機の台車枠はとても頑丈だ。連結器とその上にデッキを備える先台車は主台車枠につながり、その主台車もリンクで連結され、牽引力は下回りのみで伝えられる。車体および電気機器はその上に乗っかった格好だ。EF55・58は車両全長に及ぶ車体を持つけれど、この車体と先台車は直接つながってはいない。
いっぽう新型電機では、牽引力は台車から心皿または引張棒で車体台枠へ伝わり、車体に固定した連結器が最終的に担う。
かなりおおざっぱに言うと、旧型電機は足(台車)が引っ張り、新型電機は身体(車体)が引っ張ると見ることができる。
もちろん例外はあって、旧型に分類されるEH10は先台車のない箱型車体(2車体連結)であり、逆に新型のEF30は台車と連結器をリンクで一直線につないだ、独自の駆動方式だった。

物語のムーミン一家は雪が降るころ冬眠に入る。同機も車籍抹消はしない方針とのこと、再びの長い冬眠であることを信じたい。
EF55が(ひとまず)本線から去った後は、高崎支社の虎の子D51 498にますます重責がかかる……が、同機は「復活20周年号」を華々しく牽いた直後にボイラー空焚きという重傷を負ってしまった。首都圏で運転できる貴重なSLでもあり、修理するということだが、少なくとも今年いっぱいの復帰は期待できない。
これによるEF55の引退先送りという話も今のところなさそうで、ことしの上州路はいつもよりちょっと寂しくなる。

この記事へのコメント

小さな鉄道博物館
2009年01月12日 06:22
おはようございます。
今年の十勝は暖かい冬で雪も少なかったのですが先日道東方面も雪となり釧路も20センチのドカ雪との事で「SL冬の湿原号」は期待出来そうです。
EF55ー1これが国鉄時代に復活した時の記事を見た時の驚きは今でも忘れません。当時何度もRF誌を読んでしまいました。(笑)本当に素晴らしい流線形ですね。またの復活を期待しています。宮本様の刺激を受けぜひ今年は横狙いにも挑戦してみたいです。
2009年01月12日 07:18
おはようございます。

EF55、走ってますね。
前からしか見てなかったのですが、横から見ても可愛い流線形ですね。
こういう個性のある機関車がなくなるのは寂しいので、本当に長い冬眠に入るのだといいと思います。
私もいつか走っているところを見てみたいです。
さくらねこ@携帯
2009年01月12日 18:11
あ♪EF55♪
私もこの連休、撮り&乗りに行ってきました(ますます鉄にどっぷりになってますね)
後閑~沼田間の上越線(普通電車ですが)にも乗ったので、「宮本さんはこのあたりで撮られたのか~」と車窓を見てました

EF55のサイドビュー、先頭の丸みがきれいな曲線ですね
そばで見て、とても70年もたっているとは思えないほどぴかぴかで、陽の光りがあたると金色に輝いてました!
乗り心地もよく、力強い牽引でした
廃車になってから20年以上してから車籍復活とは驚きです!
よくスクラップにされずにいてくれたものですね
車籍は残すということなので、今度も長い冬眠から醒めてくれるのをきたいしたいです

う~ん、機関車の新旧の違い、むずかしくてよくわかりません(> <)
まだまだ修行が足りません。。。

さくらねこ@携帯
http://blogs.dion.ne.jp/sakuraneko_photoart/
2009年01月12日 23:17
小さな鉄道博物館さん こんばんは。

私も図鑑でしか見られないと思った同機の復活は、まさかまさかの驚きでしたね。私はRJ誌に食い入ってました(笑)
それから20年間、行く機会はあったはずなのにまったく縁がなく、ようやくのこれが最初で最後になりそうなのが残念ではあります。

拙作に刺激を受けられてしまいましたか? それは有り難き幸せです。では雪の期待も大きくなった〔冬の湿原号〕、初日重連はサイドから、なんていかがでしょうか(ムチャ振り)
2009年01月12日 23:20
静さん こんばんは。

EF55のスタイルは流線形といっても、EF66や当代新幹線と違って柔和な表情ですね。なんだか新幹線0系と似た横顔にも見えます。
私も、実車を見たのはこれが最初だったのです。再塗装されたその輝きに息をのみました。
間に合って良かったと思う反面、それが引退興行というのが残念でなりません。いつかの再復活を夢見たいですね。
2009年01月12日 23:21
さくらねこさん こんばんは。

横川まで来られているとは聞きましたが、〔EF55碓氷〕を撮るだけでなく乗車もされたんですか? それはすごい。よく指定席券が買えましたねー。上越線にも足を伸ばされたとのこと、そうです! このあたりで撮ってたんですよ(笑)

この機関車は鉄道学校の教材として保存、その後準鉄道記念物となったので解体をまぬがれ、高崎の工場で有志によって修繕されたのが「奇跡の復活」につながったそうです。
撮影のあと水上に行き近くで眺めましたが、修繕塗装された車体はホントに輝いてました。ごらんの通り隣の補機(EF64)が褪せちゃって……(笑)

メカの話はちょっと難しいですね。私もまだまだ習得中なのです(苦笑)
2009年01月14日 00:38
こんばんはnobuです。
メッセージ有難うござました。
EF55の写真にブログに貼りました。
この場所は初めてでまさか同じとはびっくり致しました。
私の腕ではこれが精一杯で宮本さんの足元にも及びませんが
いい思い出なりました。
「富士はやぶさ」の件は非常に残念です。もう一度ぜひとも
チャレンジしたいです。
一度ご一緒させて下さい。
2009年01月14日 22:51
nobuさん こんばんは。
ご覧いただきありがとうございます。またメッセージに加えコメントもお寄せいただき、ありがとうございました。
そちらのブログも拝見させていただきますので、よろしくお願いします。
2009年01月15日 00:11
こんばんは。
気持玉押しておきました。それにしても、同じ茶色でも、ロクヨンと随分、違いますね。

ところで、ロクヨンセン、車体側面が非対称なだけに、サイドビューアー(^^;)としては、やはり注目(^^?でしょうか。この夏、「北陸」が最後の夏に?いかがなものでしょう。
2009年01月15日 22:41
teruさん こんばんは。どうもです。

ほんと、片方は塗りたてということを引いても色が違いすぎますね。1001は単体ならスター機ですが、今回は引き立て役としてもちと不憫に思えなくもない(笑)

でそのEF64 1000、サイドも当然ですがもちろん注目に値しますね。私の好きな機関車のひとつですので。
2009年01月18日 21:31
こんばんは~
って、スイマセン…またもや出遅れてしまいました。

EF55もとうとうラストランを終えてしまいましたね。
私も国鉄末期の頃に復活したことを知ったときは驚いたものです。
そしてEF55に限らず、こういう奇跡の復活を遂げた車両って数々の偶然が重なりあっていたりするんですよね。
まずは車籍抹消ではないそうでちょっと安心しました。
保守の面で難しいところはありますが、また本線で走る姿が見られたら嬉しいですね~。
2009年01月18日 23:09
加藤さん こんばんは。

私も本当に復活してきたときには驚きました。
蒸機復活があったとはいえ、古い電気機器を持ち、一度廃車された機関車の現役復帰は前代未聞でしたから、まさに幸運と奇跡が重なっていたということですね。

無事に最後まで走りきったEF55、準鉄道記念物ということで末永く保存されることは確定ですが、できれば本線で走る姿をもう一度見たいですよね。
2009年01月19日 19:04
こんばんは。
風邪をひいて、思いっきり出遅れてしまいました。
この電気機関車を初めて見たときは、もうすっかり動かないものだと思っていました。
補機が付いているけど、走っているんですね。今日となっては「走った」ですね。
サイドビューだと、本当にこの機関車の特徴がよく分かります。
この特徴ゆえ、わずか3両しか製造されなかったんですね。
ムーミン谷のムーミンたちは、冬眠からいずれ目覚めますが、EF55も再び目覚めて欲しいと、多くの方が望んでいると思います。
まずは鉄博で休眠ですね。いつか行くのが夢ですが、EF55のお陰で楽しみが更に大きくなりました。

話は変わりますが、SL湿原号の撮影、実現するかもしれません!ただ今、夫に強力な呪文をかけております(笑)。吉と出るか、凶と出るか…。
2009年01月19日 23:30
水無月さん こんばんは。
風邪ですか? お大事になさって下さい。

さてEF55、無事に最後の運転を終えて休んでいることと思います。
最大の特徴である、この非対称形ゆえに3両で打ち止めとなってしまいましたが、これがもし対称形で量産されていたら、EF58 61の登場もあるいは無かったのかな、とも……。
今後は鉄道博物館での保存となりますが、いつの日かまた眠りから覚めて本線を力走してほしいと思います。

ちなみに、となりの機関車EF64は一見補機に見えますが、パンタを1個降ろして客車と一緒にぶら下がっている状態だったんですよ(復路高崎~上野間は同機単独で牽引)。運転士さんもハンドルに手を掛けてもいませんでした。

SL湿原号の撮影に行けるかもしれないんですね。こちらからも念波を送っておきましょうか?(笑)

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    Excerpt: もうすぐ引退となる日本最初の電気機関車「EF55」・・・ この3連休、そのさよなら運転に行ってきました 信越本線の高崎駅~横川駅間を走ります 両駅はもちろん、途中駅や沿線には名残を惜しむファンがたくさ.. Weblog: さくらねこのPHOTO散歩 racked: 2009-01-15 02:21